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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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命令入れりゃあとは自由

負の魔力の方が強そうな満月の春の夜。
昼間はゴタゴタして片付けられなかった仕事を片付けているアルガティアの横で、時雨は聖リフィルの歴史書を読みふけていた。
イファルシアは夜しか収穫できない作物の収穫のために部屋にはおらず、フィルスはすでに寝ている。

「これでいいわ」

ようやく片付けられなかった仕事を終えたアルガティアは、横に書類を置いて筆に墨汁、そしてムサヅキの方から送ってもらった書道用の紙を出す。
アルガティアが何をしようとしているのかと言うと、時雨に自立行動の命令を出すための印を書こうとしていたのだ。
普通、管狐は使役主の言葉による命令で動く。
だがこのようにある印を書道によって書くことで、まるでキョンシーに貼り付ける札のような効果を持つ。
ただし、管狐の場合は貼るのではなくその印を書いた書道紙を燃やした灰を管狐に撒くか、直接食べさせて命令としての印を入れる2つの方法がある。
他にもこの印を入れる方法はあるらしいが、アルガティアが知っているのはこの2つだけなのでどちらかを使わざるを得ない。
ちなみに言葉による命令と、印による命令の違いは、それが容易に変更できるか否かの違いである。
言葉による命令は容易に変更することが出来るが、印による命令は一度それでしてしまうと変更するのが難しい。
つまり、時と場合によって使い分けなければならないのだ。

「うん?何を書いておられるので?」

するりと筒から抜け出し、アルガティアの首に乗っかかった時雨は書道用の紙を興味深そうに見ながら聞く。
それに対してアルガティアは、見ればわかると答えるや筆を手に取り、その手の知識がないと何を意味しているのか分からない印を描いた。
アルガティアが書いた印は、筒から一定上離れても大丈夫な完全自立行動をしろと言う命令の意を持つ印であるが、そこにはまた3つの条件などが定義されていた。
それは、次のようなものである。
1つ目は主、すなわちアルガティアの危機を感じたらすぐに駆けつける。
2つ目は腹が減ったら自分の意思で考えて飯を食え。
最後の3つ目は、主の意思でこの命令は簡単に解除できるものとする。

「最後は蛇足じゃないかい?」

「あなたが必要以上に自分勝手されると困るから必要」

定義されていた条件の3つ目を見た時雨に蛇足ではないかと言われ、アルガティアはそれに必要以上に自分勝手されると困るとぴしゃりと言う。
そう言われた時雨はこりゃ一本取られたという顔をした。

「ところで腹が減ったのだが」

腹が減ったという時雨に、アルガティアはそれを無視して書道紙を丸め、手の中で一瞬で灰にする。
聞いておるのかと言われてもなおも無視したまま、アルガティアは何処からか味噌球を取り出してそれに先ほどの灰をまぶす。

「味噌か、漬物がよかったが漬物に灰を掛けられると余計に…か」

灰をまぶされた味噌球を渡された時雨は、漬物がよかったと言うが漬物だと余計にどうしようもない物になると考えてしぶしぶ受け取って食べる。
慌てて食べたせいか、まぶされていた灰が変なところに入り込んで時雨は激しくむせかえった。
そのむせ返りの声がとても大きかったのか、気付くとフィルスが人が寝てたのにうるさいなと言う顔で見ていたので時雨は苦笑いでごまかす。

「全くもう」

時雨が悪びれる様子を見せなかったので、フィルスはムスッとした顔で睨みつけてまた横になった。
そしてアルガティアは命令がしっかり入ったかの確認もせず、時雨にお休みと言って先に寝てしまう。
残された時雨は、管に戻る様子もなく、ふわふわと部屋から出て夜の庭園を散歩し始めた。

「夜にしか収穫できない物なんて植えるんじゃなったわ」

「収穫ゴーレムでも設置しておけばよかったね」

一方こちらは、ようやく収穫を終えたイファルシアとエゼラルド。
2人とも夜中に重労働をやったせいか、ずいぶんと眠そうなうえにイファルシアに至ってはとても機嫌が悪そうだ。

「じゃあ、僕がこれは仕舞っておくから今日はもういいよ。眠いだろうしね。お休み」

「ええ、お休み」

ふらふらしながら部屋の方へ戻るイファルシアを見送り、エゼラルドは収穫物を倉庫に入れに行く。
その途中、エゼラルドは何か光るものが飛んでいるのを見つけた。

「?、おかしいな。時雨は自由に移動できないはずだけど」

それがすぐに時雨だと分かったエゼラルドは、おかしいなと思いながらも収穫物を倉庫へ持っていく。
ある程度持って行ったところで、時雨がこちら側へ来たのでエゼラルドは

「アルガティアの命令以前に、筒から一定距離は離れられないんじゃなかった?」

と時雨に聞いてみた。
時雨はその問いにケタケタ笑いながら

「実はアルガティアが一定距離以上離れても大丈夫なような命令の印を入れてくれたんで、今まで以上に自由に動き回れるよ」

アルガティアがその制限を解除したというのを話す。
エゼラルドはそうかいとだけ言うと、自分はもう寝るからと言って寝床の方へ向かう。
それに時雨はついて来る様子はなく、じゃあなと言われたのでお休みとだけ返した。

「さーて、次はどうしようかな」

その後明け方まで時雨は庭園どころか城の外へも出て散歩していたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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