FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

再開-セレノアと

その日、ゴルダはセイグリッドの城下町を1人で散歩していた。
そしてアルカトラスが直に国の予算から運営費を捻出している孤児院の前に来たとき、それまで無表情だったゴルダの目が少し変化した。
さっきまでは何を考えているか読み取りにくい目付きだったのにも関わらず、今の目つきはどこかしら興味を持ったような感じである。
5分くらいだろうか、黙って孤児院の方を見ていると

「あら、あんたそんなところで何してんのよ?」

あからさまに見覚えのある竜がエプロン姿でこちらを見ていた。
その竜の姿を見たゴルダは、ああという顔をして

「そこで働いてたのか、どこ行っていたと思ったぞ。セレノア」

その竜の名を言い放った。
このゴルダの目の前にいる白い羽毛の竜こそが、つい最近までゴルダと暮らしていたセレノアである。
だが、数か月前に消えるようにして出て行ったきり、何の連絡もないまま今日を迎えた。

「ふう、今は仕事中だから後でまたここに来なさい。今まで何やってたのか話すわ」

遊ぼうとエプロンをぐいと引っ張る子供を見た直後のセレノアにそう言われ、ゴルダは頷いてその場を去る。
ほんの少し前に、アルカトラスからセレノアがここで働いているようなことをほのめかされたばかりだが、ゴルダはまさか本当だとは思っていなかった。
だが、こうして居場所が偶然にも分かっただけでも収穫は相当なものである。

「子供の世話か、依頼としてでもあまり好きじゃないな」

孤児院からある程度離れたところで、煙草のようなものに火を付けて吸いながらゴルダは呟く。
子供の世話は好きではないだけで、嫌いでも苦手でもない。
ではなぜゴルダが好きではないのかと言うと、やはりはるか昔の記憶が蘇るからだろうか。
立場的にも、今ではロドルフォ側でありつらいものがあるのだろう。

「そういえばサフィもセレノアとの仲は改善した言ってたな」

ここで、考え事を一新させようとゴルダはサフィからこれまた聞いていたセレノアとの最近の仲の話を思い出した。
初対面時から犬猿の仲一直線だったサフィとセレノアだが、去年の暮れ辺りに料理教室の講師として出向いた時にある話題で馬が合ってそれ以来だという。
今ではセレノアの方がたまに料理のレシピを聞きに来たり、気さくに話しているとか。

「生涯独身貴族」

妙な独り言を呟き、城の方で時間をつぶすことに。
それから2時間ほどして、ひょっこりとやって来たセレノアに孤児院まで連れて行かれ、ゴルダはそこの休憩室へ通された。
冷えすぎて逆に飲みにくいコーヒーを出され、それをちまちまと飲みながら一方的にセレノアから今まで何をしていたのかを聞かされた。

話によれば、事の発端はアルカトラスからの手紙が始まりだったという。
手紙には孤児院の人出がどうにもこうにも足りないので、手伝ってくれと書いてあり、セレノアはすぐに了承。
それ以来ここで孤児たちの世話をしているのだという。
ここに居る孤児は、両親の死去で引き取り手が居ない、あるいは虐待などで保護されて来たりしたのがほとんどだが最近はそうでもないという。
なぜならば、異界から意図的に捨てられたりする孤児まで現れ始めたので、アルカトラスも手を焼いているうえにセレノアもどういう神経しているのかと思っているとのこと。

「なんでそんなことが出来るのか、お前の言う通りどういう神経をしているのかも、その思考すらも分からんな」

「おかげで今の規模では手狭、頭痛いわ」

互いにため息交じりの会話をしながらの会話を続けていると、セレノアが突如こんな話を持ち出してきた。

「あんた、里親する気はない?」

「なんでまた。お前も分かってるだろうが俺はいつ仕事で家を飛び出すか分からん男だぞ、そんな奴に里親が務まるわけなかろう。それに…」

急に里親をする気はないかとセレノアに聞かれ、ゴルダは俺に務まるわけがなかろうと即答。
だが、無意識のうちにそれに…と何かを言いかけたのを聞き逃さなかったセレノアは

「それに何なのよ」

射られた矢のような速さでゴルダが言いかけたことを追求する。
それにゴルダは程よく飲みやすい温度になったコーヒーを一気飲みして

「…立場が逆になったにせよ、蘇る記憶がある。まだ小さいこいつよりも先立つんじゃないかとな」

淡々と追及されたことに対して答えた。
セレノアはそれに対してはふうんと半分興味がなさそうな表情をして

「そういえば竜滅病なのよね、あんた。そして何より蘇る記憶ってのはこれ以上聞かないけどあったわね」

慰めているのか何なのかが全く分からないことをゴルダに言う。
その後10分ほど沈黙が続き

「お前がここに居ると分かったならもういい、安心した。無理に帰って来るなとも言わん。今日はこれで失礼する」

今日はもう帰ると単刀直入に言ったゴルダは、セレノアにコーヒーの入っていたグラスを押し付け、背を向けて孤児院から出た。
休憩室を抜けて個人を出るまでの間、やたらと孤児たちからの視線が向けられていたが、それを気にすることはなかった。
そして孤児院の敷地から出た時、後ろからセレノアに

「あんた、ここにまた来なさい。何かが変わるはずよ」

「気が向いたらな」

また来いとやや命令口調で言われたが、気が向いたらと遠まわしにもう来ないと返したゴルダにセレノアは

「気が向いたらじゃダメ」

遠まわしに言っていたことを見透かしたように気が向いたらではダメと返して見送った。
そう言われたゴルダは、帰り際ずっとめんどくせえなと思っていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |