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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

姿消して近づくはエルフィサリド

春にもかかわらず針で刺すような寒さの中、エゼラルドとアルガティアにフィルスとイファルシアはリフィルを離れてスリュムヴォルドへ来ていた。
目的はエルフィサリドに会うという訳でもなく、ただなんとなく来たようにしか見えない。
アルガティア達が居るのは、スリュムヴォルドのずっと西方の方、ドランザニアとの国境付近の田舎の山の中。
エゼラルドが足元がごつごつしていて危ないから背に乗ってと言っているにもかかわらず、アルガティアは自分の足で黙々と山の中を歩いている。

「本当にこんな場所に珍しい苔なんてあるの?」

エゼラルドの背で、魔法書ではなく魔法薬の本を読みながらフィルスがふと呟く。
そう、アルガティア達がここに来た理由とは、フィルスが言う普通にある苔とは違うある苔を探すためである。
そのためだけにこんな山奥にまで入って来ているのはどうかと思われがちだが、それだけの価値はその苔にはあるようだ。

「これじゃない?」

朽ちて地面に横たわる木にびっしりと付いた苔を指して、イファルシアがアルガティアに聞く。
アルガティアはその苔を見ると、どこからか取り出したナイフで少し削り取ってそれを調べた。
その苔は、よくよく見ると普通の苔よりも緑っ気が強くほのかに発光している。
この苔こそが、アルガティアとイファルシアが探していた苔であった。
アルガティアはその苔を両手に乗るくらいの量採取してどこかへそれをしまう。

「もういいのか?」

やっと帰れるのかと、寒さで身震いしながらフィルスはアルガティアに聞く。
アルガティアはそれに軽く頷き、一行は来た道を引き返し、1時間ほど時間をかけて城下町まで下りてきた。
城下町は、海から吹いてくる風のせいか余計に寒く、しかも小雨まで降っている始末。

「おお寒い寒い」

丸まって震えながら、フィルスは遠まわしに早く帰ろうと言うがアルガティアはまだ帰る気配はない。
エゼラルドもフィルス同様に少し寒そうにしてはいたが、なんとか耐えてはいるようである。

「今年はとてつもない冷夏になりそうね」

海から吹いてくる風、降る小雨、そして春とは思えないような刺すような寒さ。
それらから何を感じ取ったのかは分からないが、ぼそりと今年は冷夏になると呟くアルガティア。
それに反応したエゼラルドは、アルガティアを頭で小突いて

「どうしてそう思うのかな?」

と一応聞いてみる。
それに対して、アルガティアは傍から聞いていると何の事だかさっぱりわからない何かをエゼラルドに説明し始めた。
イファルシアは少しは理解出来ているようだが、フィルスはそもそも理解する以前にアルガティアの話を聞かずに魔法で暖を取っている。

「誰?」

エゼラルドが小雨除けにサトイモの葉を差した時だった、フィルスは自分たち以外の何者かの気配を感じて索敵状態に入る。
その気配は、フィルスの背後数十メートルからでそれが誰かを悟った途端にフィルスは索敵気状態を解除。

「山に居た時からついて来てたよね?エルフィサリド」

気配の主に、山に居た時からついて来ていたことを分かっていると言ったフィルス。
すると、気配がスッと自分にすぐ後ろに来たかと思えば

「暇だもの、少しくらい行動観察してても構わないでしょうに」

気配の主であるエルフィサリドがフィルスの耳元でそんなことを言う。
それにフィルスは少しも驚く様子を見せずに向き直ると

「その能力使ってニンジャでも目指したら?」

ニンジャにでもなったらと冗談を飛ばす。
それを聞いたエルフィサリドは、表情一つ変えずに水球を一つ作りだしたかと思えば

「そんな気はまんざらないわ」

と言って水球をフィルス飛ばす。
その水球は、そっと接近して来てフィルスを取り込んだかと思えばすぐに破裂した。

「何するんだよ」

一瞬ではあったが、水球に閉じ込められたがために咳き込むフィルス。
それを見たエルフィサリドは、クスクスと笑ってずっとエゼラルドと話をしているアルガティアを見てそっと尻尾を近づけてその肩を叩く。
だが、アルガティアは全くこちら側に気付かない。
エルフィサリドはやれやれねという顔をしつつ、今度は突然の突風を吹かした。
この突風で、アルガティアはすっ転び、イファルシアは数メートル飛ばされてやっとアルガティアはエルフィサリドに気付く。

「やり過ぎ」

転んだ際に汚れたローブを気にしながら、アルガティアはエルフィサリドの鼻の辺りを指でぐいと押す。
それに対してエルフィサリドは肩叩いても気付かなかったでしょうにと返した。
一方蚊帳の外にされていたイファルシアは、泥で体が汚れて嫌な顔をしている。
それを見かねたフィルスは、イファルシアの体の汚れを魔法で落してやった。

「ま、いいわ。じゃあ私はこの辺で」

ここでやることを思い出したのか、エルフィサリドはこの辺でと言うや煙のようにその場で姿を消して去った。
アルガティア達もそれに続いて帰ったものの、イファルシアはしばらくエルフィサリドに対して何かしら言っていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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