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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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ムサヅキの寝床掃除

春一番の吹き荒れる初春の朝、強風に揺れる窓の外を見ながらゴルダは朝食を取っていた。
付けているテレビからは、今日が春一番だというニュースが流れ、例年より少し早い程度だと言っている。
ベーコンをトーストしたパンの上に乗せ、竜乳入りのコーヒーと共に咀嚼していると窓に何かがぶつかった。
それを見てなんだと思ったゴルダは、吹き込んでくる強風に注意しながらその何かを調べる。

「管狐?しかもなぜか尾の数が多い…」

それは管狐だった。
しかし、管狐を使役しているのはゴルダの知っている範囲ではアルガティアの時雨しかいない。
では誰だろうかと考えていると、管狐はゴルダの手に噛みつく。

「いてて、何だ?」

管狐は、ようやく話しかけたかと言わんばかりに何処からか巻物を取り出すと

「シャッ」

と謎の鳴き声を出してどこかへ行ってしまう。
ゴルダは管狐が居なくなったことを確認し、窓を閉めて巻物を広げる。
巻物に書いてあった文面は、筆で書かれた達筆な文字の羅列。
そして、最後にはあからさまなムサヅキの前足の印が押されていた。

「これから察するに、ムサヅキと繋がりがあるとすれば紫月家、そしてその神社は…紫月神社」

とりあえず何が書いてあるんだと、その達筆な字をゴルダは読み解いていく。
ある程度読み解いたところで、書いてある内容はこのようなものであった。

「ムサヅキが自分で寝床の掃除をしようとしないので、私達でやりに行こうとしたがとてもじゃないが行けそうにないのでお願いしたい」

全く話の脈絡が掴めないが、とりあえずムサヅキの寝床とやらの掃除をしてほしいとのことだったのでとりあえずは行くことにした。
しかし、ゴルダ自身ムサヅキの方へ行くのは初めてであり、紫月神社の場所すら分からないという状態。

「参った、しかしこういう時のこいつだ」

だがゴルダもここで当てずっぽうに行くようなことはせず、ネットという文明の利器で紫月神社の場所と座標を調べるという準備を済ませて

「あの三姉妹とは会うのはいつぶりだろうか?」

ふと紫月三姉妹と最後に会ったことを思い出しながら家を出た。
ちなみに、ゴルダが紫月三姉妹と最後に会ったのは両親の葬儀の時一度きりで、どちら側の親戚なのかも不明である。
だが、そんなことを考えていても仕方がないのでゴルダはさっさとムサヅキの紫月神社へ向かう。

「ほーう、割と普通な神社なんだな」

座標指定テレポートで飛んだ先には、昔写真で見たような日本の神社と似た作りの神社がたたずんでおり、そう遠くはない位置に山が見えた。
ゴルダが数歩歩いたところにあった鳥居のすぐ横に埋められていた石には

「大狼神山 紫月神社」

という文字が掘られていた。
それ以上は何も考えずに淡々と神社の敷地の中へ入ると、1人の灰色がかった毛の妖狐が履き掃除をしていたので

「ちょっとよろしいか?ここが紫月神社で当たっているか?」

と聞くと、その妖狐はこんにちはと言った後に

「ええそうよ、ここは紫月神社ですよ」

と掃き掃除の手を止めて答えた。
ゴルダはそうかと頷き、その妖狐に軽く会釈して奥の方へと進む。
敷地にはまばらながら参拝者が居て、その中に若干ながら犬や狐が紛れていたが特に気にすることもなく

「神主に御用の方はこちらへ」

と書かれた看板を見つけてその方へと歩く。
そしてその看板から3分ほど歩くと、紫月家の本家であろう建物が目の前に現れた。
ムサヅキの話では、三姉妹と巫女見習いが数人住んでいるだけらしいが、とにかく無駄に大きい。

「玄関はここか」

横の方へ回り、玄関を見つけたゴルダはそこから中に声を掛ける。
すると、管狐がスッと3匹ほどやって来て上がれと仕草で言ってきたのでゴルダはではお邪魔すると言って家へ上がった。
やはり内部も写真で見たような古い日本家屋めいた作りになっており、床は歩くたびに独特の音を立てる。

「ここで待て?」

管狐はゴルダを客間と思わしき部屋に案内し、ここに座れと言わんばかりに座布団を出す。
この部屋は障子戸で区切られており、壁には狐の9本の尻尾と三日月が描かれた掛け軸が下がっている。
どうやら、この紫月神社の神紋らしい。
ゴルダはそこに座り、どこからか団子程度の大きさに丸められた味噌を3匹の管狐へあげた。
管狐は上機嫌になって味噌をもらうと、どこかへ引っ込む。

「お待たせしました、久しいですね。あの日以来ですから200年くらいは経っているでしょうか?」

茶は出してくれないのかと、ゴルダが煙草のようなものを吸おうとした瞬間、銀毛の妖狐がどこからか音もなくスッと正座状態で現れた。
そして、両手を膝の前で合わせて頭を下げてきたので、ゴルダも慌てて同じように正座して両手を肘において頭を下げる。

「っと、藍だったっか?」

「ええそうです、覚えておられて何よりです」

ゴルダが名前を藍だったかと確認すると、銀毛の妖狐もとい藍はほんのりとした笑みを浮かべながらそうだと答えた。
そして、藍が何かを言ったかと思うと、突然管狐がお茶と羊羹を持って出てきた。
俺も1匹欲しいなと思いながら、ゴルダは管狐にどうもと言って藍に巻物を見せて

「確認はした、ムサヅキの寝床をか…ちなみにどこにあるんだ?」

単刀直入にやると言った上でどこにあるんだと聞く。
藍は少し考えるように黙った後、急に

「未帆、未帆」

と誰かの名前を呼ぶ。
すると、トットットッという駆け足がしたかと思えば、今度は白い毛の妖狐がゴルダにお辞儀をして

「お久しぶりでございます」

と言った。
ゴルダは記憶が釈然としないが、お久しぶりですと言われたからにはと

「こ、こちらこそ。未帆で当たっているか?」

こちらこそと返した上で名前を確認するゴルダ。
すると、白い毛の妖狐はそうですと頷いて

「ムサヅキ様の寝床の近くまでは案内できます、こちらへ」

ムサヅキの寝床の近くまでは案内できると言ってゴルダについて来るよう促す。
ゴルダは分かったと言って、未帆について行くことに。

「ムサヅキ様とはどんな関係で?」

山へ入り、妖術を使って淡々と移動する未帆にそう聞かれてゴルダは

「これと言っては別にだ、ただの知り合いだ」

ただの知り合いと答えて未帆の後に続く。
裏手の山は、岩と木と土が絶妙なバランスで地形を形作っており、少し油断すると岩で怪我をしかねない。
それでも、時折見かける野生の鹿などがまだここには手が一切付けられていない自然が残っていることを物語っている。

「この山は3つの山から連なる山で、すべてムサヅキ様の物であると同時に私達紫月家の私有地です」

ふと突然、未帆がこの山についての説明を始めたのでゴルダはただ耳を傾ける。
確かにムサヅキも言っていたが、この山は紫月の私有地であると同時に、ムサヅキの支配下にあるという。
だが、支配しているというのは客観的に見てであり、ムサヅキが主観的に見た場合はそうでもないらしい。

「では私はこの辺で失礼します、あとはそのまま登って行けば洞窟が見えるのでそこがムサヅキ様の寝床です」

1時間半ほど山を登った辺りで、未帆は自分はここまでだと言ってそのまま山を下りて行った。
山を下りていく際に、未帆は鷹に変身していたがゴルダはそれを気にすることもなくムサヅキの寝床を目指す。

「ここか、ずいぶん獣臭いな」

それから5分もしないうちに、ゴルダはムサヅキの寝床へとたどり着く。
入口からしてものすごい獣の臭いがしたが、何の迷いもなく突入するゴルダ。
どうやらムサヅキは留守なようで、もぬけの殻であった。
獣臭いのはこの際どうしようもないので、地面に散らばった骨や抜けた毛などを掃除することに。

「一体どれくらいため込んでたんだあいつ?」

骨を一か所に集めながら、その多さに唖然とするゴルダ。
だが一度引き受けた仕事はやり通さなければと、集めた骨を風化させて風に飛ばして今度は抜け落ちた毛を集める。
その量も半端ではなく、すべて集めきった時にはこんもりと山が出来上がったくらいだ。

「後はこれをどうするかだが」

こんもりと山になった抜け毛を見ながら、どうしようかを考えていると背後に気配を感じたのでゴルダは振り向く。
そこには、ムサヅキが掃除してくれたのかという表情で立っていたので

「仮にも神なんだから掃除しやがれ」

と一言言って横を通り過ぎる。
ムサヅキは何も言わずに寝床へ戻り、またなと言っていたがゴルダは何も返さずに下山。
藍に一応掃除が終わったことを報告し、報酬と称して米を10キロほどもらい、ゴルダはそのまま帰宅した。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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