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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

ゴルダとニフェルム

その日は雨が降っており、湿度も高く気温も低い日だった。
ゴルダは依頼が来ないために、自室のパソコンでだらだらと菓子を片手に動画を見ていた。
そしてとある怪談ネットラジオのアーカイブを聞いていた時である、玄関を誰かがノックする音が聞こえてきたのだ。
こんな雨の日に誰だよとゴルダが出ると、そこには

「こんな雨の日は空を泳いで移動できそうね?」

傘も差さずにずぶ濡れのニフェルムがニコッとしてたたずんでいた。
そのニフェルムを見た瞬間、ゴルダはどこからかバスタオルを持ってきてニフェルムに渡して

「とりあえず拭け」

とだけ言って、居間の方へ行く。
ニフェルムは渡されたバスタオルで全身を拭き、そのまま家の中へ入る。
ちなみに、ゴルダは何をしに来たのかをまだ聞いていないが、ニフェルムはエルフィサリドからの書簡を持ってきただけである。
スリュムヴォルドには飛竜便という郵便配達の方法は存在せず、配達員の足で運ばれるか魔法で運ばれるかのどちらか。
なぜニフェルムがこうしてまで持ってきたのかというのは、まったくもって謎だが、おそらくゴルダの家が気になったのであろう。

「陛下から書簡」

なんやかんやで熱々のコーヒーを淹れて台所から戻って来たゴルダに、ニフェルムはエルフィサリドから書簡だと言って羊皮紙を渡す。
ゴルダはそれを見て、少々嫌な予感を感じながらもその羊皮紙を広げて内容を読む。

「ふぅむ、今年度の健康診断をしろってことか」

内容は、一応の専属医であるゴルダに今年の健康診断をしろというものだった。
特に厄介な内容でもなかったので、ゴルダは一番下の空白にこう書く。

「承知した、日付を決めてまた書簡を回して欲しい」

返事を書いたゴルダはその羊皮紙をまた丸め、ニフェルムに返す。
ニフェルムは受け取った羊皮紙を、どこかへしまってコーヒーの入ったカップを取って一口飲む。

「苦めの豆?」

「時間がたつと苦味が増す豆だな、あと酸味も強めだ」

苦めの豆で淹れたのかと聞かれて、ゴルダは時間がたつと苦味が増す豆だと答える。
ニフェルムはそれにそうと言ってミルクを要求してきた。

「ミルク?まあ、普通の竜乳だったらあるがそれでいいか?」

「大丈夫」

竜乳なら大丈夫かと聞くと、ニフェルムが大丈夫と答えたのでゴルダは冷蔵庫からパックを出してニフェルムに渡す。
ニフェルムは、もうそんなにコーヒーが残っていないカップに竜乳を残っている分を全部入れた。

「やっぱりこうでないと」

竜乳たっぷりになったコーヒーに口をつけながら、ニフェルムはそう呟く。
ゴルダはそれにそうかと言いながら携帯をいじり始めた。

それから1時間後。
新たに淹れたコーヒーを飲みながら、2人は無言のままの時間を過ごす。
ゴルダは特にニフェルムが話しかけてこないので学会誌を読み始め、ニフェルムはなぜか洗濯物や食器を洗ったりしていた。
特にゴルダがやれと言ったわけでもなく、ニフェルム本人が目に留まったからやっているだけである。
ゴルダはこれを一見するが、ありがとなの一言だけを言ってニフェルムのやりたいようにやらせていた。

「よくこんなに汚れ物溜められるのね」

「溜めてまとめて片付けるのが俺のやり方だ」

こんなによく汚れ物を溜めれるわねとニフェルムに言われ、ゴルダは学会誌から目を離してまとめてやるのが俺のやり方だと答えた。
それに対してニフェルムは、飽きれたとでも言いたげな顔をしながらせっせと汚れ物を片付けていく。
そして30分後。

「終わったわ」

手をタオルで拭きながらニフェルムが戻って来た。
ゴルダはご苦労さんと言って、今度はコーヒーではなく緑茶を淹れる。
緑茶を一口飲んだ途端にニフェルムが言った一言は

「渋い」

というものだった。
ゴルダはそれに対してそんなに渋いかと思いながら飲むが

「こりゃ淹れ方失敗したな、確かに渋い」

ニフェルムの言う通り、確かに渋かった。
だが一度淹れたからには飲まねばと、二人は渋い渋い言いながらも後から口直しにとゴルダが出した饅頭を食みながらとりあえずは淹れた分を飲み切る。

「もうこんな時間、城へ戻らないと」

「帰るのか、ちゃんと書簡の返事渡せよ」

飲み切ったところで、ニフェルムが時間に気付いてもう帰ると言い出したのでゴルダは玄関まで見送る。
玄関を出ると、ニフェルムはゴルダに一礼したかと思えば何らかの魔法を使って霧のように消えて帰って行った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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