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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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日常から非日常、非日常から日常へ

幻想獣医と竜医は何も、幻想生物を診ることだけを仕事としているわけではない。
時に上から一部の者へ声が掛かることもある。
それは学会への論文提出要請だったり、参加要請だったりと様々だが、ただ一つだけ本当に一握りの者にしか来ない要請がある。
それは何かというと、幻想生物保護条約という幻想生物への不当な扱いをしてはならないと言う条約に違反した者たちを取り締まるための要請だ。
これは異界文明犯罪対策機構とも結託して行われることも多く、普通に幻想生物を診るよりも危険な仕事である。
今日は、そんな仕事の要請をされたゴルダの行動を追ってみることにする。

「はいこちらゴルダ…あ?またかよ、仕方ねえな。どこ行けばいい?…分かった」

依頼もなければ、やることもない。
そんな状態で居間のテレビでソファに深く座って映画を見ていたゴルダに1本の電話が入る。
それは上、つまり幻想獣医学会からの電話で、異界に幼竜をよからぬ目的で売り飛ばそうとしている輩が居るという情報が入ったという。
その調査かつ検挙の要請のために、ゴルダに電話がかかって来たのだ。

「呼ばれちゃ仕方ないか」

ゴルダはめんどくさそうにしながらもソファから飛び起き、すぐに準備をする。
無論、そう言った相手が居る場所へ乗り込むのだから生半可な装備は許されない。
とはいえ、半分は竜の血が入っていて普通の人よりは頑丈なためそこまでガチガチにする必要はないのだ。

「さっさと終わればいいが」

そう言って、ゴルダは電話で指定された場所へ向かう。

「よりによってこことはな、あいつからとばっちりを食らわなけりゃいいが」

そのゴルダが向かった場所とは、風水竜王国スリュムヴォルドの港。
ここはドランザニアの港同様に異界からの船が来る場所で、時たまよからぬものを輸入出しようとする輩が湧いてくる場所でもある。
その度に、スリュムヴォルドの女王であるエルフィサリドがぶち切れる寸前まで行くので、その度に一応の専属医かつ側近にされたゴルダがなだめに来るのだ。
今回もそうだろうなと思いながら、ゴルダは現地に居た他のメンバーと合流した。

「あら」

「うん?ああ、お前かイルフェス。またアメリカから呼び出されたのか」

「そうよ、積み荷の行き先がアメリカだったらしいからなぜか知らないけど呼び出されたのよ」

ゴルダはその場にいた1人の犬獣人を知っていた。
名はイルフェス、竜医学科の同期生かつ同期卒で卒業後はしばらく音信不通になっていたが、ある日地球のアメリカでFBIに身を置いていることが分かった。
さらに、異界文明犯罪対策機構なるところのメンバーであるとも最近分かり、時たまこうして仕事で一緒になることがある。

「さて、さっさと終わらせちゃいましょうよ」

「それもそうだな、またエルフィサリドのご機嫌取りは勘弁だ」

2人はそう言って他のメンバーを動員し、売り飛ばされようとしていた幼竜を保護し、商人も逮捕した。
逮捕した後は異界文明犯罪対策機構の管轄なので、ゴルダはここで解放される。
つまり、またいつものような日常に戻されたのだ。

「相変わらずめんどくせえもんだ」

そんないつもの日常へされたゴルダは、煙草のようなものを吸いながらスリュムヴォルドの町の中を歩く。
沿岸部に建つ家々は塩害を防ぐために特殊な素材の壁で作られており、壁の色は全て同じだ。
家の高さも最高で2階建てと、3階建ての建物は見当たらない。

「港町ってのはやっぱりいいもんだな」

行く人々を気にも留めず、のんびりと歩いているといつの間にか城の前へとやって来た。
スリュムヴォルドの城も他の国の城に引けを取らず、外見は小さいが地下はそれなりに国中へ縦横無尽に穴が掘られていたりする。
しかも、城内部へ入るためには水没している地下出入り口を通るか、飛んで入るしかない。
ゴルダは一応専属医で無理やり任命された側近なので、そのようなルートでなくとも入れはする。
だが、特に呼び出されてもいないのでその場を立ち去る。

「帰るか」

そう呟いた途端、背後からつんつんと誰かに突かれる感触がしたので振り返るが誰も居ない。
だが、ゴルダにはそれが誰なのかは分かっていた。
空気中の水分や気体と完全に一体化し、姿を消せる能力。
それを持つのは、この国ではただ2人。

「何で普通にやってこないんだ?なあエルフィサリド?」

「あらあら」

ゴルダとは別の声と共に現れたのは、つるっとした緑の体に青い目、そして特徴的な長い尻尾の竜。
この竜こそがスリュムヴォルド女王のエルフィサリド当人である。

「珍しいじゃないの?私が呼ばずとも来るなんて、何かあったの?」

「いや?単なる気まぐれだ」

エルフィサリドにどうして来たのかと聞かれ、ゴルダは気まぐれで来たと嘘をつく。
もしあの件で来たと言ってしまえば、また長ったらしい話を聞かされることは確定しているからだ。

「そう、最近来ないからどうしたのかと思ってたわ」

「健康チェックはニフェルムがやっているんだろうに、俺が出る幕はほとんどない」

ゴルダの言う通り、スリュムヴォルドの城に居る従者とエルフィサリドの健康チェック及び管理は、混血クラゲの突然変異種のニフェルムが行っている。
そしてときたまニフェルムからすぐ来てくれと手紙が来ることもあるが、電波な文面で綴られているので解読するのはとても難しい。
大抵ニフェルムから手紙が来た場合、ゴルダはすぐにスリュムヴォルドへ向かうことにしてはいるのだが。

「それでもあなたは私の側近でしょうよ、寂しいわ」

「中々来るタイミングが掴めないんだよ」

エルフィサリドの尻尾が奇妙に揺れているのを見て、今日は簡単には帰してくれなさそうだと思ったゴルダはエルフィサリドに

「あーもう分かった、何なら茶でも付き合おうじゃねえか」

自分から茶でもどうかと提案したところ、エルフィサリドは機嫌を良くしたのか

「えええ、もちろん」

あっさり了承してゴルダを城の中へ連れ込む。

「ほう、そうなのか」

「そんな感じなのよ」

何だかんだで茶を飲みながら話をするエルフィサリドとゴルダ。
この間に、ポットが3回は交換されている。

「さて、もうそろそろ俺は帰るぞ」

3回目に交換されたポットが空になったのを見計らい、帰ると言い出したゴルダにエルフィサリドは尻尾を絡ませて引き留めた。
何だよとゴルダに渋い顔をされ、エルフィサリドはこう言う。

「せっかくだから夕食時まで付き合いなさい?ね?」

飯まで付き合えと言われ、ゴルダはエルフィサリドに聞こえない程度に舌打ちして

「分かった分かった」

めんどくさそうにしながらも仕方ないと割り切って了承した。
そして、夜は夜で酒を薦められてエルフィサリドと飲むだけ飲み、結局帰るに帰れなくなって泊まったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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