FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

代わりを務めるための泊まり

突如ゴルダにかかって来た電話、それは依頼ではなくサフィからの頼みの電話であった。
話を聞くと、明日1日已むおえない用事で仕事を休まざるを得ず、シアとアルカトラスの健康チェックができないと言うのだ。
ちなみに、従者関係の仕事は副メイド長に押し付けているので問題ないとのことである。

「…あ?、ああ分かった。明日1日だけだな?」

「ええ、悪いわね。じゃあよろしく」

「じゃあな」

電話を切る前に、明日1日だけやればいいと言うのを確認してゴルダは電話を切った。
1日だけ引き受けたはいいが、明日の夜明け前に行くとなんだか間に合わなさそうな気がして仕方なかったので城に泊まることに。
泊まるついでに、サフィが全くやっていないであろうカルテ整理とも考えてはいたが、それは行ってみなければ分からない。

「あいつのことだ、整理はしていないわけではないだろうが」

などとゴルダは呟きつつも、颯爽と準備してセイグリッドへ向かう。
前日から来たゴルダを見てサフィは、こう言った。

「おあいにく様、カルテ整理はほどほどにやってるわ」

それに対してゴルダはこう返す。

「そのほどほどの定義が分からん以上は、見てみないと分からんだろうが」

それを聞いたサフィは、それもそうでしょうけどと言うとそれ以上は何も言わなくなった。
その後、アルカトラスにまともに挨拶もせずにカルテが保管してある部屋へ。
カルテ自体が保管されている部屋は、サフィの自室とは別の場所にあり、厳重に鍵が掛けられている。
それはなぜかと言うと、アルカトラスやシアの健康状態というのは機密情報に部類されるからだ。
もしよからぬ者の手に渡れば、大変なことになりかねない。

「従者のカルテまで事細かに記録して保管してんのかあいつ」

サフィが人間の医者の資格をも有していることはゴルダ自身も把握していたが、ここまで事細やかに記録されたカルテは名医でもそうそうない。
従者たちのカルテの棚を無視し、ゴルダはアルカトラスとシアのカルテが保管されている棚の前へ来た。

「見てないのは確か…1か月前からか」

年度別の中の月別部類の中から、ゴルダは今年度の先月分のカルテと今月分のカルテをひとまず引っ張り出す。
やはり、カルテに記されているのはその手の道の者でなければ何と書いてあるかが全く理解できない内容だ。
ゴルダはそれを1日ずつ慎重に確認し、変わったところがないかを確かめる。

「先月は爺さんはややストレス蓄積値が高め、シアは…何だこりゃ、魔力の値が異様に低い日が1週間余り続いている時期があったのか」

こうやってアルカトラスとシアの健康状態をゴルダが把握するのは、一応の親類に当たるからだろう。
それ以前に、両者の体調は世界の安定と直結しているので把握せざるを得ないと言うのもあるだろうが。

「来ていたのか、来ているなら来たと挨拶ぐらいせぬか」

「悪い悪い」

カルテを確認していると、アルカトラスがぬっと顔を覗かせてきて挨拶くらいしないかと言ってきたので、ゴルダはここでアルカトラスに挨拶する。
アルカトラスはその後うむうむと頷きながらどこかへ行ってしまった。

そして1時間後。

「思いの外カルテは整理してるじゃないか」

昨日までのカルテのチェックが終わったので、カルテの整理を始めたゴルダ。
だが、思いの外サフィが整理していたのでそこまでする必要がなかった。

「食事の時間」

「おうよ」

だが、それでも整理していないのはあったので、それを整理しているとサフィが入って来て夕食であることを告げる。
ゴルダはそこで整理の手を止めて大広間の方へ。

「あら、来てたの?ふふふ」

「その笑みはやめろ」

大広間では、従者を含めシアとアルカトラスも座って待っていた。
ゴルダは適当に従者の間に割り込むようにして座り、食事を取る。
食事中はほとんど会話がないわけではないが、従者は従者たちで会話をしているので、ゴルダは黙々と食べる他ない。

「ごちそうさん」

早めに食べ終わったゴルダは先に席を外し、煙草のようなものを吸いに行く。
城の中はほとんど禁煙で、吸える場所と言えば狭っ苦しくこしらえられた喫煙室だけだ。

「ふう」

喫煙室で煙草のようなものに火を付け、それを吸いながらゴルダはあれこれ考える。
神もとい聖竜の血が完全な覚醒を迎えた今、若干ながら昔のような生活を送ることは不可。

「さてと」

煙草のようなものを消し、ゴルダは風呂に入りに向かった。
風呂にはすでに誰かが入っていたようだが、ゴルダは気にせずに入る。

「風呂はいい、余計なことを忘れさせてくれる」

「ええそうね」

独り言を呟いたつもりが、既に入っていた誰かもといシアの耳に入ったようで返答された。
ゴルダはそれに反応せずに体を洗い、湯に浸かる。
だが、そのすぐ後ろにシアが居たようで

「う、し、ろ」

頭にポンと湯で濡れそぼった前足を置かれ、その前足をどかすゴルダ。
だがまたすぐにポンと置かれたのでまたどかす。
それを数回繰り返したのち、濡れた状態の体でシアに抱きつかれそうになったのでゴルダはさっさと湯から上がる。
抱きつきが失敗したシアは何よと言う顔でゴルダを見ていたが、本人はそれに気づかずに上がってアルカトラスの所へ。

「どうした?まだ我は寝ないが」

「いい、話してるうちに寝る時間になるさ」

この後、何だかんだと話をして寝る時間になったのでさあ寝ようとしていると、ゴルダは突然転送魔法により姿を消す。
転送された先は、言うまでもなくシアの所であった。

「うふふ」

「一緒に寝たいなら普通に呼べ」

「嫌」

「ぐぬぬ」

一緒に寝たいなら普通に呼べと言うゴルダに対して、シアはやんわり嫌と返す。
シアの子供っぽいやり方に、ゴルダは若干唸りながらも、シアとアルカトラスの体毛で織られたカーペットの上に座る。

「相変わらず子供だな」

「何よ」

ゴルダに子供だなと言われ、むすっとした顔になるシア。
それでもゴルダは顔色一つ変えずにこう言った。

「別に子供でも悪くはないが、少しは考えた方がいいかも知らんぞ」

「むう、もふっ」

ゴルダの一言にまた機嫌を悪くしたシアだが、それも一瞬でスイッチを切り替えて抱きつく。
抱きつかれたゴルダはしばらくもふもふされていたが、いつの間にかうとうとして気づけば寝ていた。

「あら、寝ちゃったのねえ」

そう言って、シアはそのまま横になってゴルダをうまい具合に尻尾で毛の中にある程度押し込んで

「おやすみ?」

と言って就寝した。
翌朝、シアにがっしりと抱かれていたので、ゴルダは起きてもシアが起きるまでは完全に起きれなかったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |