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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

血を飲むのは計画的に

吸血鬼とて、一口に言っても伝説にあるような者だったり、それとは似ても似つかないようなイレギュラーな者もいる。
光竜王国セイグリッドの城で従者を束ねる存在かつ、国王もとい主神のアルカトラスの専属医であるサフィもまたイレギュラーな吸血鬼。
だが、サフィの場合は父方の吸血竜の血の影響もある。
そして、なぜサフィがイレギュラーな吸血鬼なのかというと、理由は三つある。
一つ目の理由は、吸血鬼が伝説上で一般的に苦手とされているものをほぼ全て平気であると言う点。
聖水や十字架はもちろん、退魔の力があるとされる銀も平気な上、一応泳ぐことも可能。
ただし、日光に関しては完全に平気という訳ではなく、人一倍日光には弱いので冬であろうと紫外線対策を欠かすことはできない。

二つ目の理由として、そこまで血を欲すことがない上に飲む血にこだわらないと言う点。
普通なら毎日のように欲するだろうが、サフィはよっぽどのことがなければ半年から数年のサイクルで摂取すれば問題ない
さらに、サフィはいつもはアルカトラスのを飲むのだが、これは変わっても何ら影響はない。

三つ目の理由として、呪いという意味合いながらそれなりの不死能力を持っていると言う点。
無論、持っている理由は不明で両親共々そんな能力はなかった事は確か。
だがしかし、サフィが一度もこの能力を使ったことはない。
それもそのはず、さして命の危険に晒されるような仕事でもないからだ。

今日は、そんな二つ目の理由のそこまで血を欲さないサフィがよっぽどのことがあった場合にどうするかを見てみよう。

「そういえば今日は血液検査の日だったわ」

朝のシアとアルカトラスの健康チェックの準備をしながら、サフィはふとスケジュール帳を見て思い出す。
月に一度の割合で行っており、これで血中魔力の濃度などを調べて異常がないかを調べているのだ。
毎日ではないものの、定期的にやっているのでサフィは手際よく採血用の竜用注射器などを用意し、アルカトラスの所へ。

「おはよう」

「うむ、おはよう。今日は血液検査の日だったか」

「そうよ」

自室で今日の予定を確認しているアルカトラスと朝の挨拶を交わし、健康チェックと採血の用意をするサフィ。
カルテを広げて今日の日付を記し、血液検査用の採血の前に血圧などをチェックする。
無論、竜と人間では各種値の正常値が雲泥の差なので、人間の基準で血圧などの基準を取ると高血圧どころの話ではなくなる。
そしてこれは血液検査も同様で、人間基準で血糖値などを検査するとこれまた糖尿病もへったくれもない値になってしまう。
その点を注意して、竜医は竜の血圧などの値をしっかり把握した上で診察をしなければならない。
少しでも人間基準で診察をしてしまえば、大変なことになる。

「いつもと変わらないわね、脈も血圧も問題ないし。特に体調崩している様子もなし」

「健康第一だからな」

カルテに記録しながら、サフィとアルカトラスはいつもの会話を交わす。
従者と雇い主の関係にもかかわらず、ここまでブランクな会話が可能なのはサフィが実質的にアルカトラスの健康を握っているせいなのだ。
次にサフィは血液検査用の採血をするために注射器を用意する。
基本的に竜も人間も注射の仕方は変わらないのだが、アルカトラスのような大きさになるとまた話も変わってくる。

「…やれやれ」

「小さくなるか?」

「ええそうね」

針を刺す血管を探すも、大きさが大きさなためなのかは分からないが、探せないサフィにアルカトラスが小さくなるかと聞く。
これは血液検査の際に採血するときによく見る光景である。
普通ならば、大きい方が血管を探しやすいと思うが、竜の場合はそうでもないようだ。

「これでよし」

サフィより少し大きいくらいに小さくなったアルカトラスから採血を終えたサフィは、その血をどこかへしまって部屋を出る。

「はあ、何か調子すぐれないわ」

シアの所へ向かいながら、サフィは首を鳴らす。
ほんの1週間ほど前に血を飲んだばかりなのだが、どうにも本調子が出ないでいる。
最初こそはストレスだろうと気にしなかったのだが、それがかなり厄介なほどに溜まっているとここ数日の間につくづく感じてはいた。
あと1回血を飲めば何とかなるかもしれないが、摂取のサイクルを崩すわけにもいかないのでこうしてどうにかやっている。
だがそれも、いつまで続くかもわからない。

「困ったわ」

そうこうしている間にも、無意識のうちにテレポートをしてシアの所までサフィはやって来ていた。
後ろ足で頭を掻きながら待っていたシアに、サフィはおはようと挨拶もせずにカルテを広げてもう1本注射器を用意する。

「あら、今日は機嫌悪いの?」

シアに聞かれ、サフィは一応はと答えて朝の日課である健康チェックをこなす。
そして、血液検査用に採血するという時になってサフィがシアに注射の針を刺そうとした瞬間

「ダメよ、そんな機嫌で」

シアに制止され、注射器を取り上げられてしまった。
忙しいのに何よと言いたげな顔で見ていると、シアにコツンと額を触られて

「ストレス溜めすぎ」

今しかた自分が気にしていたことを言われたのだ。
サフィはそれに対して、だから?と返した後に今日は血液検査するからと言ってアルカトラスの時とは違い、小さくなってもらわずに採血してその場を立ち去る。

「気分最悪だわもう」

牙を歯ぎしりさせながら、サフィは厨房ではなく自室へ戻って採取したアルカトラスとシアの血を、魔動式の検査機に入れてカルテを確認する。
ああは言われたものの、シアも若干ストレスの蓄積量が多めに出ていた。
しかもそれが標準値内であれば問題はないが、今日は標準値を若干上回っていたので高めである旨を書き記す。

「シアは先月と大した変化はなし、アルカトラスは…また血糖値高めだわ」

数分もしないうちに検査結果が吐き出されたので、先月と見比べてどうなっているかを比較するサフィ。
シアはさして問題はなかったが、アルカトラスは先月同様また血糖値が標準値内ながら高めだった。

「食事はそんなに問題ないんだけど」

などと呟きながらサフィは「医療廃棄物」と書かれた箱に使った注射器を入れる。
残るは、注射器から別の容器に移したアルカトラスとシアの血だ。
検査に使うのはほんの数滴でいいので、大抵は余分量として扱われてしまう。
無論、この採血された血も所定のマニュアルに従って適切に処分する必要があるのだが。

「誰も見てないし、どうせ処分されるならいいでしょ」

誰も見ていないことをいいことに、サフィはその余った血を飲んだ。
普通ならば、吸血鬼であろうが絶対にやってはいけないハイリスクハイリターンな行為だがこの際気にしなかった。

「ま、これで大丈夫でしょ」

残った容器を注射器と同じように医療廃棄物の箱へ捨て、サフィは自室を出て朝食の準備ができているかを確認するために厨房へ向かった。

それから大体3時間後。
昼食の献立を確認し終え、つかの間の休息中のサフィ。

「?」

片目の視界が異様に赤くなって見えづらくなったので、何事かと思ったがそれはすぐに治った。
そして時間を見るや、こうしてはいられないと慌てて朝食準備へ。
その後は視界が赤くなるなどということはなかったが、妙に吸血竜と吸血鬼の両方の血が煮たぎるような感覚に付き纏わられた。

夜、一通りの仕事を終えて風呂に居るサフィ。
なぜか今日は隣にシアも居たが、何をしてくるわけでもないので黙って湯に浸かっていた。
だがそれも、浸かってから30分ほどで破られる。

「吸血鬼の匂いが強まってるけどどうしたの?」

シアのその一言で、サフィはどういう意味よと言う顔をする。
そのサフィの顔を見て、シアはこう言った。

「こっそり余分に血飲んだんじゃないの?あなたは血の摂取量間違えると吸血鬼の力が暴走するから注意しなさいって言ったでしょ?」

サフィにとって、シアのこの一言は全くもって図星である。
なぜならば、サフィ吸血鬼の中でもごく稀に見られる体質の持ち主なのだ。
それはどんな体質かというと、一定量以上の血を飲むと吸血鬼そのものの力が暴走すると言うもの。
なので、サフィは血を飲むときはその量を守らなければならないのだ。
とはいえ、その体質のおかげで血を飲む周期が長めに設定できるのだが。

「バレちゃ仕方ないわね、気を付けるわ」

先に上がったしあに、サフィはそう言った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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