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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

もふっとしたら何かが覚醒

何の変哲もない日曜日、何もしていない者にとってみれば日曜日も何ら平日と変わりはしない。
無論、最近はほとんど仕事が来ず、自堕落気味になっているゴルダとて同じであった。
日の出とともに起きて、朝の日課をこなし、朝食を食らった後は何もすることがない。
することがあると言えば、最近全くやっていない家の掃除か洗濯程度。
だがそれも、すぐに終わってしまった。

「暇だな」

たまたまテレビをつけると映画がやっていたので、煙草のようなものを吸いながらソファに腰かけてゆっくり見ようかと思っていた矢先、突如携帯のメール受信音が鳴る。
受信音からして、サフィだろうとメールを開くと、今日はアルカトラスがセイグリッドに戻ってきていることとまたフィーナが遊びに来ていると言う旨が書かれていた。

「ほう、爺さんがねえ」

アルカトラスが久しく戻って来ているとなればと、ゴルダはテレビを消してそそくさと準備をしてセイグリッドへ。
シアの事は一言も書かれてはいなかったが、ゴルダにはどうせまたという気がどこかしらに存在していた。
そして出かける直前になって、ゴルダは頭に何かしらの違和感を覚えた。

「また封じられた記憶が覚醒しようとしているんか?」

実はゴルダは、大学卒業後から十年ほど前までの記憶が全て失われており、その空白の記憶には何者かがプロテクトをかけて普通のやり方では思い出せないようにしてある。
だが、時折このようにして頭に違和感を覚えると、突如としてプロテクトがかけられた記憶の一部が覚醒すことがあるのだ。
もちろん、良い記憶もあれば新たなトラウマを引き起こしかねないような悪い記憶まで、種類は様々。

「今日はどうにも嫌な予感が取り払えんな」

とはいえ、アルカトラスが久々に戻って来ているのでは行かざるをえない。
今日を逃せば、またアルカトラスは異界へ行ったまま当分は帰って来ないだろう。

「むう」

うだうだと家に留まっていても仕方ないので、ゴルダはセイグリッドへ向かう。
セイグリッドへ行くと、相変わらずアルカトラスの代わりに国務をせっせとこなすシアの姿が見受けられたがアルカトラスの姿見当たらない。
と思われたが、アルカトラスはたまたま遊びに来ていたフィーナと応接間で話をしているだけだった。

「久しいな、何分行く先行く先で仕事が増えてな。戻ろうにも戻ってこれんかったのだ」

「気にはしてないさ爺さん」

ゴルダはフィーナに会釈で挨拶をし、アルカトラスの横に腰掛ける。
すぐに抱きついたりして来るようになったシアと違い、アルカトラスは横に腰かけたゴルダの頭を少し尻尾で撫でる程度に留めた。

「ところで、何の話を?」

メイドに追加で出された紅茶に角砂糖を二つ入れてかき混ぜながら、ゴルダはアルカトラスとフィーナに聞く。

「フィーナの事はシアから聞いていたが、少しどんな者かという話を聞いていただけだ」

「うん、そうだよ」

「だったらいいだが」

アルカトラスは、シアから聞かされていた事を踏まえてさらにフィーナがどんな者かというのを聞いていたと言う。
それにフィーナも同意する様に頷いた。
砂糖が溶けきった紅茶を一口飲み、同様に出されていたケーキを口に運びながらゴルダもまた納得したように頷く。
それから少しの間、城の中に沈黙の時間が流れる。
フィーナはニコニコしながら紅茶を飲み、アルカトラスは明日からの予定の確認のためにスケジュール帳を眺め、ゴルダはシアは来ないよなと少し警戒しながら紅茶を嗜んでいた。

「やっと終わったわ」

「ご苦労」

どうやらシアが来たようだが、ゴルダは何の反応も示さず。また新たに紅茶を注いで今度は砂糖を入れずに飲み始めた。
そこへシアはいつものようにもふっと後ろから不意打ちで抱きつく。
しかし、今日は違った。
今さっきまでそこで紅茶を飲んでいたゴルダの姿は見当たらない。
あら?とシアが辺りを探してると、天井から人影が片手剣を振り下ろしながら落ちてきた。

「どうしたゴルダ?」

アルカトラスの問いに、ゴルダは答えず片手剣を構え直したかと思えばまた斬りかかって来た。
どうやらアルカトラスとシアを何らかの原因で敵と認識しているらしい。

「また封じられし記憶の一部が覚醒したのか、あるいは別の原因か」

アルカトラスはそう呟いて、少々警戒するように身構える。
敵と認識されていようが孫は孫、どうにかしなければならない。
だが、あっさりとそれは片付くこととなる。

「落ち着きなさい、全くもう」

「やるではないか」

そこには、シアに尻尾で取り押さえられているゴルダが居た。
抵抗する様子はなく、どことなくげんなりとした様子だ。

「な、何があったの?」

「恐らく封印されていた記憶の一部が戻ったもとい覚醒したのだろう」

「大丈夫よ、しばらくこうしてれば元に戻るわ。その時の記憶はないとは思うけど」

フィーナに何があったのと聞かれて、アルカトラスとシアはゴルダの封印されてた記憶の一部が戻ったがために起きたのだろうと説明。
シアがしばらく尻尾で取り押さえておけば元に戻ると言ったので、フィーナはほっとする。

「おっと、明日からのスケジュールについて話をしなければならない。シア、フィーナ。後は頼んだぞ」

「ええ」

「分かりました」

ここでアルカトラスは、また明日からのスケジュールについて話をしなければならないと言って後のことをシアとフィーナに任せた。
シアとフィーナはそれに了承するように頷いた。

「とりあえず私の部屋まで行きましょうか?」

「うん」

フィーナとシアは、ゴルダを連れて塔の方へと向かう。
その途中、ゴルダは一言も話さず無表情を保っていた。
塔へ着くと、シアはゴルダを解放して後をフィーナに任せると自分は本を調べ出す。
その間、フィーナはうんともすんとも言わずに黙ったままのゴルダを抱擁し続けた。

「ぐぬぅ」

それからどれくらい時間が経過しただろうか、いつの間にか寝ていたゴルダは目を覚まし、自分が置かれている状況を把握すると

「一体何があったんだ?まあいい、とりあえず引き下がるとしよう」

自分がフィーナの上で寝ていることに気付き、静かに抜けようとするゴルダだが

「んー、行っちゃだめだよ」

と寝言を言ったフィーナにむぎゅっと抱きしめられて、抜けようにも抜け出せなくなってしまう。
一方のシアは、自室でずっと本を調べていてこちらに全く気付いていない。
これは困ったとゴルダは何かいい方法はないかと考えるが、いい方法思いつかなかった。

「うぐぐ」

この状態がどうしても落ち着かないゴルダは、次第に自分自身に腹が立ってきた。
かと言ってどうすることもできない、完全なジレンマである。
と、ここでなぜかサフィが座標指定テレポートで現れた。

「あら、お楽しみ中かしら?」

「全くもって違う」

サフィが少々からかうように言うと、ゴルダは即座に違うと反論。
それに対し、サフィはでしょうねと言ってシアのところへ行き、何かを伝えると

「じゃあごゆっくり」

「やかましい」

また座標指定テレポートで城の方へと戻って行った。
その数分後にシアがやって来て

「悪いけどまた仕事しなきゃいけないから城の方戻るわね」

「おい待て」

「じゃあね」

ゴルダの制止も聞かず、シアはそのまま仕事をすると言って城の方へ戻って行った。
こうして、塔に残されたのはゴルダとフィーナだけである。

「どうすりゃいいやら」

フィーナに抱擁されたままゴルダは考えるが、この状況ではどうしようもない。
それ以前に、自分がなぜこんな場所に居るのかすら分からない状態である。

「本当にどうしたもんか」

考えても時間の無駄かと、ボフッとフィーナに毛の中へ埋もれるゴルダ。
今度はさっきまでのどうにかしようと言う考えは起きず、ただ純粋にその毛の中へ埋もれたいという気だけしか起きなかった。

「もふぅ」

「うふふ、もふもふ」

少し前にシアとフィーナにもふサンドにされた時のような気分を味わいながら、ゴルダはまた眠りへ落ちていく。
誰しも、もふもふの誘惑には勝てないものである。

さらにどれくらい時間が経過したのかは不明だが、再びゴルダは眼を覚ます。
だが、今ゴルダを抱擁しているのフィーナではなくシアであった。
フィーナは起きており、シアと何やら話をしているがシアの毛の中に埋められていてよく聞こえない。

「ぐぎぎ」

上手い具合にシアに尻尾で抑え込まれているようで、毛の中から出られないゴルダは手ごろな毛をぐいと引っ張ってみる。
するとシアが尻尾で引きずり出し、自分の顔の下へと持ってきてくれた。

「おはよう?」

「おかげでぐっすりだ」

「そう、それは良かったわ」

よく眠れたかとシアに遠まわしに聞かれ、ゴルダはぐっすりとと答えた。
すると今度はフィーナに

「良かった、大丈夫?」

と聞かれた。
ずいぶんと心配してくれているようだと実感するも、ゴルダは

「まあな」

の一言をフィーナに返す。
その日はそれ以降、ずっともふもふされていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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