氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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ヘルハウンディアとゴルダ

「あらあら、おかしいと思いません?普通サイコパスは自分から自称するはずはないんですけれど」

「あえて自称する真性も居るという。俺はそういう真性に会ったことがないが、サイコパスに共通しているのは厄介極まりないという点だ」

ある日、ゴルダの家に唐突にやって来た瑠璃夢の知り合いと称する黒犬、ヘルハウンディア。
その物腰の柔らかさにフウやユウが懐くのは容易かったのだが、
ゴルダだけはどうにもヘルハウンディアのある一側面が気になって仕方なかった。
それは----

『誰かを殺すことを一切躊躇しない、サイコパスもしくは狂者特有の罪悪感のなさ』

読めない瑠璃夢、人を利用することをいとわないセフィール、暗殺者の顔を持つコロン。
癖のある者たちと関わってきた中でも、ヘルハウンディアのこのサイコパスあるいは狂者特有の罪悪感のなさという顔にゴルダは興味を持った。
だが、ヘルハウンディアも馬鹿ではない故にそれについて触れられてもはぐらかしたりして表に出そうとしない。

「この紅茶、おいしいですね。瑠璃夢が褒めるだけのことはあります」

「あらありがとう。でも私の淹れ方って癖が出るのよね」

ミリシェンスを褒めているところを見るに、サイコパスもとい狂者の一側面をひた隠すために社交性だけは磨きをかけている様子。
ゴルダはそんなヘルハウンディアに探りをかけようとしたが、クェムリーヴェスから

「やめたほうがいいよ。この亜人、精神属性への適性も只者じゃない。ましてや狂者だから『呑まれる』よ?」

などと言われたためやめることにした。

やがてティータイムを終えて、フウとユウに混じってゲームをしだしたヘルハウンディア。
難なくコントローラーを握って遊んでいる辺り、現代文明に疎いというわけでもないらしい。

「あなたはやらないんですか?」

ヘルハウンディアに一緒にマリオパーティをしないのかと聞かれ、ゴルダは首を横に降って

「こいつらが起きているとできないゲームがしたくてな。お前は知っているかは分からんがアウトラスト2とかそういうのだ」

「その無表情な顔で、そんなホラーゲームをするのなら是非とも見てみたいものですね。今夜泊まっても?」

アウトラスト2などをやりたいから今はいいと返したゴルダに、
ヘルハウンディアはにっこり笑ってプレイしているのを見てみたいので泊まっていいかと聞いてきた。

「知り合ったばかりの奴をやれそれ泊めるほど、俺は警戒心が薄いわけではない。
 第一お前が瑠璃夢の知り合いだというのも、半信半疑だ。もう一度言うが、お前には狂者の一面が垣間見える。
 瑠璃夢は読めないだけだったからいい、お前はそういう問題じゃない。だからああいいぞとは答えられん」

完全に信用しているわけではないし、いきなり深く信用するわけにもいかんと言い切ったゴルダに対し、
ヘルハウンディアは顎のあたりに片手を当てながら上目遣いでゴルダをじっと見る。

「色気使いしても俺の意思が変わらんことくらい、お前も片鱗ながら理解しているはずだ。ヘルハウンディア」

「それもそうですよねぇ、ゴルダさんって女の色気とは程遠い世界で生きてきたとしか思えませんし、
 ましてやそういう方向な方でもない。三大欲求の一つがすっぽり抜けた状態でどう生きてきたんでしょうか?」

「俺の性欲は知識を探求する欲ヘと全て消えた。そして言ってしまうと、俺の男にあるべきものは持病の薬の副作用で
 壊死して手術で切除済みだ」

「まぁ」

少々自身の胸を持ち上げるような感じで腕を組みながら話を聞いていたヘルハウンディア。
可もなく不可もなしなどころかやや豊満なそ胸を、ゴルダはまるで診察する医者のような目線で見やる。

「触ろうともしなければ、性的な目でも見てこない。本当に不思議なお方。
 でも、もしそんな目で見てきたら、首をへし折って殺してたところですけどね。ふふ、ふふふ……」

「何が言いたい?その答えを聞くつもりはないから答えんでいいが。
 それと用あって俺は少し出かけるが、あまりフウやユウに変なことするなよ」

「ご心配におよびませんよ、行ってらっしゃい」

これ以上ヘルハウンディアと話していると疲れると判断したゴルダは、
ヘルハウンディアとのティータイム中にミリシェンスから言われた夕食の食材を買いに出る。

「あなたの服、ほつれてない?胸のあたりが」

「直してもすぐほつれるんですよね」

またゲームに没頭していると、ふと隣へやって来たミリシェンスに服がほつれてないかと聞かれたヘルハウンディア。
都度都度自分で縫い直してはいるのだが、それでも自分が気が付かないうちにほつれてしまう事が多い。

「直せるけど直す?一応替えの服はあるし、1時間位もらえれば」

「それじゃあ、着替えとミシンとか貸してもらえますか?自分で直せるので」

ミリシェンスに直すかどうかと聞かれ、着替えとミシンなどを貸してもらえるかどうかをヘルハウンディアは聞く。
その問いにミリシェンスはヘフィアにゴルダと共用で使っているミシンと裁縫道具といつも一着は置いている
聖竜布の服を差し出す。

「それじゃあ、借りますね」

といって着替えるべく、トイレへ。
なぜトイレなのかというと、目に入った限りで着替えられそうな場所がそこしかなかったからだ。

それからしばしの間を置いてトイレから出てきたヘルハウンディアは、
自身の体毛の色とは反発する白い服装をしていた。
着た直後は不釣り合いなサイズでなんでこんなものをと思っていたのだが、
数秒してからヘルハウンディアのサイズに合わせて突如縮んだのでこれまた何この服はとヘルハウンディアは思うのだった。

「大丈夫だったかしら?その服、この世界の創造神である聖竜の毛から作られた布で出来てるから
 あなたのような地獄の住人には属性的にきついかと思ったけど」

ふと着替えてできたところを、ミシンと裁縫道具を用意し終えたミリシェンスに気づかれてそんなことを聞かれたヘルハウンディア。
ヘルハウンディアはそんなミリシェンスにふふっと笑いながら

「なーんとも、ありませんでしたよ?それにしてもこの服って不思議ね。着るもののサイズに合わせて変化するようですし」

なんともなかったと返し、自分のもともと着ていた服のほつれ直しを始める。
それをみたミリシェンスはまあ大丈夫だろうと家事の続きへと戻った。

一方その頃ゴルダはというと、悪い意でタイミングよく瑠璃夢と出くわして共に買い物をしていた。

「なんじゃ、ヘルハウンディアのやつ来ているのか?」

「お前の知り合いだと言うから家に上げたが、黒い部分の見え隠れがすさまじい」

「あやつはそんなやつじゃ。だが正直私も、ヘルハウンディアの殺しに対して躊躇しないという点はいただけぬが」

買い物をしながらそんな会話を交わすゴルダと瑠璃夢。
何も知らないものからすれば、この2人はなんて会話をしているんだと思われがちであるが一切気にしないのもまたこの2人である。

「して、今日は何を作るつもりなのだ?」

「ミリシェンスが考えているから俺は分からん、食材買ってこい言われて来ただけだ」

「なるほどな」

青果コーナーでセロリ、レタスのようでそうでない野菜、ズッキーニを選定しながら瑠璃夢に献立を聞かれるも、
ミリシェンスが考えているので自分は知らないし、買い物に来ているのは買ってこい言われただけだと話すと、
瑠璃夢は無理やり納得したような返事を返す。

「あと一つお前に聞きたいことがある。ヘルハウンディアから地獄出身であることをほのめかされたことはあるか?」

「はて?あやつがその類いのことを言った記憶は私にはない。期待には添えられんな」

ここでふと、瑠璃夢なら知っているだろうとヘルハウンディアから地獄出身であるとほのめかされたことがあるかどうかを聞くゴルダ。
だが、瑠璃夢の答えは記憶にないの即答。
嘘をついているようにも思えたのだが、ゴルダは深く追求せずに軽く瑠璃夢の方を見て頷くと青果コーナーを抜けて缶詰などが並ぶコーナーへ。

「お主に言おうかどうか迷ったが言うことにした。
 ヘルハウンディアとの関わりは程々にしておくのだ。あのセフィールのように利用されても知らんぞ。
 あやつは温和そうに見えて、人を己が掌の上で踊らすのに長けている」

「忠告どうも」

カーバンクルビーンズ(高い魔力を秘めた食用豆、味は食べる者により異なる。合わないと腐った納豆のような味がする)の水煮の缶詰を
3つほどカートへ入れながら瑠璃夢にヘルハウンディアに関わりすぎるなと忠告され、
軽い返事を返してから今度はエーテルパイン(赤土ではなくエーテルを多く含む土でしか育たないパイン、エーテルは果糖になるため害はない)と、
エルフマンゴー(リフィルでしか育たないマンゴー、エルフが多く住む地でしか育たない。甘いというよりすっぱい)のシロップ漬けの缶詰の他にも
いろんな果物の缶詰をカートへ入れるゴルダ。

「フルーツカクテルとやらか?」

「ミリシェンスが買ってこいと渡したメモに書いてあるものからしてそうだろう。だがあいつのフルーツカクテルは若干酒が入る」

「私は酒は平気だ。こう見えて酒は飲める年だ」

「分かった分かった」

そんなこんなでゴルダと瑠璃夢は買い物を済ませて帰路へつくのだった。

「ふう、直りましたよ」

そしてその一方では、ヘルハウンディアが自身の服のほつれを直し終えて着替えるところ。
だがしかし、ほつれを直したことで逆にほつれていたときよりも胸のあたりがきつく感じた。

「ほつれの直し方間違えましたかね?」

着替え終えた瞬間から感じる胸のあたりの違和感を気にしながら言うヘルハウンディアに、
ヘフィアはなるほどねという顔をしてヘルハウンディアの胸の辺りを指すと何かを呟く。
するとどうだろうか、ほつれを直したことで感じていた胸のあたりの違和感がすっと消えて程よい感覚になったのだ。

「サイズ直しの魔法ってやつよ、バストでもウエストでもどこでも直せるわ」

「便利ねぇ」

そんな話をしていると、どうやらゴルダが帰ってきたらしい。
だがヘルハウンディアはゴルダとは違うもう1人の気配を感じて

「瑠璃夢、久しいわね。いつぶりかしら?」

すかさず瑠璃夢の名を口に出して帰ってきたゴルダの方を見やる。
瑠璃夢は一瞬ヘルハウンディアを渋い顔で見たが、何も言わずにユウとフウのところへ。

「ありがとう、これで夕食は大丈夫よ」

「客人が来ている以上お前では手が足りんだろ、今日は当番じゃないが手伝うぞ」

ミリシェンスに買ってきたものを渡すついでに、
瑠璃夢とヘルハウンディアが来ているので自分も料理をすると言い出したゴルダに

「いいわ、ヘフィアにやらせるから。それよりヘルハウンディアを注視してなさい。どうにも引っかかるの」

ミリシェンスはヘフィアにやらせるからヘルハンディアを見ているように言う。
引っかかるとは言うのだが、ゴルダも同じくヘルハンディアのことで引っかかっており、
聞きたいこともあるので二つ返事で了承してハルハウンディアのところへ。

「さて戻ったわけだが」

「お帰りなさい」

ヘルハウンディアと少々距離を置いて座ったゴルダはひとまず戻ったことを伝える。
それに対してヘルハウンディアは器の小さいものならば、
馬鹿にされたとしか思えないような笑みとともにお帰りなさいと返す。

「瑠璃夢とはどう出会った?」

単刀直入に切り出してきたゴルダに、ヘルハウンディアは一瞬不意をつかれたような顔をして
自分の手を見つめながら意味もなく犬歯を舐めつつゴルダにそれを見せ、こう返す。

「それはあなたが知って何かメリットのあることですか?あるからこそ聞くんでしょうけど。
 残念ながら、私も瑠璃夢との慣れ始めはよく覚えてはいないんですよね。
 互いにいつの間にか知り合いになっていた。ただそれだけのことです」

ヘルハウンディアが本当のことを言っているのか?あるいは嘘をついているのか?
試しに精神属性で探りを入れてみたのだが、その戻り値はまるで適当に材料をミキサーにかけてドロドロにした何かのよう。
瑠璃夢のように嘘をついているのかすらも判別できない。

「記憶にございません、といったところか。それはそれで正直でいい。
 もう一つ聞きたいことがある、こっちが本命と言ってもいいかもしれないな」

頭に乗ってきたマティルーネを無視しつつ、
ゴルダはこれが本題だとヘルハウンディアの方へと向き直り、目を細める。

「ふふふ……そんなに怖い顔しなくても、私は答えられる範囲であれば聞かれたことには答えますよ」

目を細めて自分を見てきたゴルダに、
ヘルハウンディアはかすかに笑いつつそんなに怖い顔をしなくてもと言う。

「地獄の出身かそうではないか、それが知りたい。お前から冥府のものの気配を感じて仕方がない」

地獄の出身か否か。
ゴルダがヘルハウンディアに最も聞きたいのはただそれだけ。
ヘルハウンディアはその問いに対し、また自分の胸を両腕で抱え上げるように腕組みすると静かに一言、

「その問いに対する私の答えは、私でも分からない、よ。自分の生い立ちすらも分からないんですもの」

自分でも生い立ちが分からないので答えかねると返した。
そのイレギュラーな返事にゴルダはどこか納得の行かないような感じでふぅむと呟き、
改めてこんな質問をする。

「親の記憶もないか?親が地獄の出身ならお前から冥府のものの気配を感じてもなんらおかしくはない」

親の記憶があるか否か?
ユウやフウには核地雷級の禁則事項であるがゆえに一度も聞いたことが無いその問いをヘルハウンディアに投げたゴルダ。
親の記憶の有無に対してヘルハウンディアは口癖かのように口元をほころばせ、
ゴルダの胸のあたりに人差し指を当てて

「父方、母方、どちらか定かではないけどどっちかが地獄で生まれ育ったことだけは覚えている。
 でも私は親の記憶が判然としないの、まるでそこだけ記憶を切除されたかのようにね。
 ゴルダさんなら分かるかしら?これが第三者が意図的にしたものなのか、それとも私の本能がそうさせているのか」

両親のどちらかは分からないが地獄で一方が生まれ育ったことを覚えていると話すも、
それ以上の記憶は切り取られたかのように覚えていないのだという。
その原因が分かるかと、ヘルハウンディアは上目遣いで聞いてきたがゴルダは首を横に振って

「俺はどっちかというと内科や外科メインだ、精神や神経科は得意ではない」

遠まわしに力になれそうにないと断言。
ゴルダから告げられた冷たくも力強さを感じる返事に、ヘルハウンディアは突然大声で笑いだしたかと思えば

「やっぱりゴルダさんって瑠璃夢から聞いていた以上に面白い人だと分かりましたよ。
 今のであなたのこと気に入りました。私の好奇心をここまで刺激してくる人なんてそうそういませんからね。
 瑠璃夢もこんなに面白い人と知り合いなら早く押してくれてもいいのに」

面白いので気に入ったとゴルダに断言。
一方のゴルダはお前はは何を言っているんだとまたもや目を細めながら、
未だに自分の胸元に触れていたヘルハウンディアの人差し指にそっと両手を置いて

「それは分かった。だから俺の胸元に触れている手をどけるんだ」

触れている手をどけるよう淡々と言い放つ。
だがヘルハウンディアは触れるのをやめるどころか、今度は両手を腰の後ろへと回してハグの動作を取る。

「自分が何をしているか分かっているのか?」

「ええ、もちろんですよ」

分かってなさそうな返事を返しつつ、ゴルダを強く抱きしめるヘルハウンディア。
全くもってヘルハウンディアが何をたくらんでいるのか読めないため、
不機嫌そうに唸るゴルダは強引にヘルハウンディアを引き離して


「そろそろいい加減にしろ、お前の考えていることが微塵にもわか……」

いい加減にしろと言いかけるも、唐突にヘルハウンディアから頬にキスをされてしまう。

「もう好きにしろ。俺やミリシェンス達の邪魔をしたり、危害を加えなければ泊っても構わん」

これにゴルダは折れたと同時に呆れ果てて、邪魔したり危害を加えなければ泊っても構わないと話す。
ヘルハウンディアは怪しげな笑みを浮かべながら、ゴルダにこんな頼みごとをする。

「あなたを瑠璃夢の言っていたもう1つの姿で、抱っこしたいのですけど。変身してくれます?」

ヘルハウンディアの一見かわいいもの好きそうな頼みに、何か裏があるのではと訝しむゴルダ。
今の状況を一言で言うのならば、信用のかけらもない依頼主を相手に報酬交渉をしているようなもの。
今のゴルダは提示された報酬で依頼を受けるか否かの決断を迫られている。

「今でなくともいいだろう」

ゴルダの決断はまさかの返答保留。
なにやらそれを面白おかしそうな目で見ていた瑠璃夢がクックと笑いながら

「なんじゃ、優柔不断じゃの。即決せんか」

その場で決めろと煽る。
しかし瑠璃夢の煽りなど眼中にもないゴルダはまだ寒い外へと出る。

「セフィール以上に調子狂うぞあいつ」

煙草のようなものを吸いつつ頭を冷やしていると、ヘルハウンディアも外へ出てきて何も言わずに横へ立つ。

「どこまでお前は俺に興味を持っている?」

「どこまでかしら?」

そんな会話を1本吸い終えるまで続けた2人。
家の中へ戻ろうとした瞬間、唐突にまだ残っている雪をヘルハウンディアが丸めて投げつけてきた。
ゴルダはそれをカーバンクルの姿になって回避。

「捕まえましたわ」

回避して地面へ着地した瞬間、ヘルハウンディアに後ろから抱きかかえられて思わずゴルダは

「む……」

と声を出す。
だがヘルハウンディアはお構いなしに胸元あたりでゴルダを抱く。
その際、異様に胸を押し付けられる違和感を感じて

「あまり胸を押し付けてくれるな」

胸を押し付けるなと言ったのだが、ヘルハウンディアはゴルダの耳を甘噛みして

「嫌です、だってかわいいんですもの」

拒否の意を示し、しばらくそのまま立った状態で抱いていた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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