氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

特に題名の無いフォルテの森での出来事

「そんなに美味くもない」

イファルシアから貰ったミントテロにならないミントを食みながら、
カーバンクルの姿をしたゴルダはフォルテの森をのそのそと歩く。
後ろからマティルーネとルァクルが付いてきているがゴルダは一切気に留めない。

「あっ、危なっかしいやつ!」

たまたま通りかかったミスティに安定の危なっかしいやつ呼ばわりされ、
ゴルダは目を細めてミスティを見る。
最初は自信たっぷりにカーバンクルのゴルダを見ていたミスティは、
何かを悟ったかのようにぷいとそっぽを向いて森の奥へ飛んで行ってしまう。

「あいつは相変わらず分からん」

そこまで森の中は暑くないので自己冷却魔法を止めたゴルダの目の前に今度はスノーウィーが現れる。

「あらこんにちは」

スノーウィーは目の前に居るカーバンクルがゴルダだとは気付かずに声をかけてきた。
それを見たマティルーネが空気を読まずに

「このカーバンクルはゴルダ」

などと言ったがためにスノーウィーはハッとし、じっとゴルダを見つめる。
一方ゴルダは額のアメジストを怪しく光らせ、スノーウィーの爪を見て

「手入れしてるか?乙女の嗜みだろう?あまり映えてない気がするが」

淡々と手入れをしているかを聞いた。
スノーウィーはそれに余計なお世話よと言いかけたが

「してくれるかしら?そこまで言うならできるでしょ?」

ゴルダの腕を試すかのようにやってくれないかと頼む。

「バウムのところでな」

それに対してゴルダはバウムのところでやると一言言い放ち、
スノーウィーを置いて奥へ進む。

「今日も今日とて分からん奴だゴルダは」

ルァクルの一言にスノーウィーとマティルーネはそっと頷く。

「スノーウィー以外の冷たき雰囲気を感じる」

その頃バウムは以前シアが持ってきた本を読みながらまったりしていたが、
唐突なスノーウィー以外の冷たい雰囲気を感じて顔を上げる。

「ゴルダのようだがそうではない気もする」

バウムが思慮に更けているとその視界にスノーウィーとマティルーネにルァクルと、
とても濃い紫毛の黄色目のカーバンクルがやって来た。

「そんな姿になれたのか?」

「つい最近からだ」

一言二言の会話を交わし、ゴルダはスノーウィーの前足を持ってその爪をまじまじと見る。
一応綺麗には見えるのだが、診察眼を使って見ているゴルダにはそうは見えてない様子。

「やりますかね。と言いたいところだが一つだけ聞いておく、お前は俺を信用しているか?」

ゴルダの一言にスノーウィーはどう言う意よ?と問いただす。

「最初に爪の話をした時、お前は不快とも何とも思ってないように思えた。単に寛容なのか、あるいは俺を信用しているのかのどっちでしかない」

その問いただしに爪の話をした時のことを言い、
スノーウィーが不快とも気にしてくれて嬉しいのどちらにも属さない感情を抱いているように思えたと話す。

なぜこんなことをゴルダが聞いたのかというと、
クェムリーヴェスが信用されているかも分からないのにそんな話をしない方がいいなどと言ったがためだ。

「そんなのどうだっていいでしょ。さあやって」

スノーウィーがゴルダを信用しているというのが図星だったのかは不明だが、
そんなことはいいから早くしなさいと前足を突き出すスノーウィー。

ゴルダもそれ以上問うことはなく、
どこからか出した爪の手入れセットでスノーウィーの前足の爪を手始めに拭き始めた。

「何をしているのだ?」

横からバウムに聞かれてゴルダは手入れ前の下準備用の薬と思わしき液体で布を湿らせ、
右前足を拭きながら

「爪を手入れしている限りはこの外の世界では普通にやっていることだ。それが竜族であれど」

爪を手入れしていると返す。
バウムはそれを聞いて

「なるほど、乙女の嗜みに必要な行為か」

と今一つ理解してないような顔をしつつ強引に理解したように振舞う。

「本格的に削る必要はなさそうだ」

「削っちゃ嫌」

削ろうと爪用のやすりを取り出したゴルダにスノーウィーは削ることを拒否。
ゴルダも本人が嫌なら削るまいとやすりを置き、
スノーウィーの爪の先を切る。

「あまり切りすぎるのも良くない。これだけだ」

爪の先を切られたスノーウィーは自分の前足をまじまじと見た。
いつもは樹木で爪研ぎをするので、
いざ爪を切られると若干の違和感を感じるようになったが特段気にするものでもないので気にしないことに。

「他の爪も切ろう」

そう言ってゴルダはスノーウィーの前足の爪だけではなく後ろ足の爪も切る。

「整えるために削ってもいいか?」

「やり過ぎないでよ?あと角も手入れして」

さすがに切った後の整えのためにやすりで削っていいかを聞いたところ、
スノーウィーはやり過ぎないことを条件に許可。
その上角の手入れまでしろと言って来た。

「どうせなら体毛の手入れ含め全種やってやる。後出しジャンケンは俺はあまり好きじゃない」

爪をやすりで削って整えながらゴルダはどうせなら全身やってやると言い出す。
スノーウィーが後からここもこっちもと言うのを防ぐためだろう。

「気が効くのね、無表情な割には」

スノーウィーの皮肉交じりの一言にゴルダはさらっとそうかとだけ返し、
爪の整えを続行。

「このような技術を元からゴルダは持っていたのか?」

スノーウィーの身だしなみを整えているゴルダを見、
バウムはマティルーネとルァクルに聞く。

「知らない。ゴルダはいつの間にか技術を身につけていたりするから」

マティルーネはそれに、
いつの間にか身につけていることが多いので知らないと返す。
一方でルァクルは

「アルガティアから教わったとは聞いたことがある」

アルガティアが教えたと言う。
それを聞いたバウムはアルガティアなら教えかねないと思いつつ咳払い。
2人の様子を眺めるのに戻る。

「ストレスを感じている、あるいは疲労が溜まってないないか?体毛がごわついている」

「自覚ないわ」

角よりも先に体毛を有毛竜用の櫛で梳かしている最中に、
違和感に気付いたゴルダがスノーウィーに聞いてみるが自覚はないようだ。
自覚のないストレスと疲労ほど厄介というのは一応診る立場にあるゴルダには考えるまでもない事実。
しかしスノーウィーから返ってきた答えは自覚なし。

「たまには気を休めろ」

自覚がないと言うスノーウィーにゴルダはたまには休めとだけ告げて角を磨く。
スノーウィーの角は溶けたり凍結したりを繰り返して形の変わる代物。
角ゆえそれなりの強度はあるのが、
折れる時は折れるので手入れは慎重にしなければならない。

「日々形を変える角、心も森も等しく日々変わり行く。変わらぬものなどあまりない」

意味深なことを呟きながら角を磨き終えたゴルダは今度はバウムのところへやって来て

「前足出してみろ、少し毛を剃ろう」

バウムに前足を出すように言い、
自分はハサミと剃刀を出す。

「あまり触るでないぞ」

バウムの話を聞いていたのか不明だが、
ゴルダはそれを聞いていたのかは分からないが手始めに前足の爪を無理矢理出して状態を見る。

「良好良好」

そう言うや、口笛を吹きながらバウムの前足の毛をちまちま切っていくゴルダ。
端から見れば、狂人が前足を切り落とすための下準備をしているようにしか見えないが。

「あまり私の肉球を触ってくれるな」

ハサミで肉球と肉球の間からはみ出した毛を切っているゴルダに、
バウムは肉球を触るなと言うがやはりゴルダは口笛を吹きながらハサミで毛を切るだけ。

「あれ絶対楽しんでるわ」

ゴルダに綺麗にされたスノーウィーがそう呟く。
その一方でマティルーネは昼寝中で、ルァクルはなぜか蝶を追いかけている。

「むぅ」

今度はゴルダに前足をマッサージされてバウムは渋い顔をしていた。
決して不快ではないのだが、どうにもくすぐったくて仕方がないのだ。

「揉み甲斐がある」

前足に止まらず、足首までマッサージの手が伸びてきたことにバウムは何かを言いかけたが、
不思議と落ち着くので何も言わないことに。

「その技術は我流か?」

「いや違う、癒しの竜から教えてもらった。揉み方から魔力の流し方まで」

なおも口笛を吹きつつマッサージをするゴルダにバウムは我流かと聞いたが、
癒しの竜からの伝授だと返される。

「技術と知識は受け継ぎ受け継いでこそ真価がある。受け継がれない技術や知識は結局そこまでだったと言うことだ」

トントンとバウムの右前足首を叩きながら言うゴルダにバウムは

「確かに、知識と技術は受け継いだら誰かにまた受け継がせないと廃れてしまうな」

ゴルダの言うことに淡々と納得するのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |
| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。