氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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深淵の炎宿せしものと

「随分露出の高い服装だな」

「そうね、まあそういう文化の世界なんでしょうね」

シアから念写されたロベリアという少女?の写真を渡され、ゴルダはさして興味もないように呟く。
至急案件で身柄を確保してほしい者がいるとシアから言われ、来てみればこれである。
その容姿は非常に露出度が高く、8割方裸といっても過言でもない。
そして何となくではあるが、この少女の目隠しの目をイメージしたような印からゴルダはシアがこの世界に悪影響を
及ぼしかねない存在だと判断したことを察する。

「出身世界がいかんともしがたいのよね。とりあえずこの子の位置のサポートはするからよろしく」

「めんどくせえがやる他なしか」

ゴルダはサングラスをどこからか取り出し、いつの間にかスーツ姿になるとシアの塔を離れた。
さっさと身柄を確保してシアに渡して帰ろう。

そう思い、ロベリアの身柄の確保に向かったのだがゴルダは思った以上に面倒なことになることを未だ知らない。

ロベリアの現在地は、セイグリットの城下町であることはシアから既に通達されており、
ゴルダはスーツとサングラス姿で歩き回る。
なぜこのような服装なのかは不明だが、サングラスをつけているのはある種の自衛のためだとか。

「うーん。あなたの現在地から西北西に100メートルくらいね」

すぐ近くにロベリアがいることを知らされ、ゴルダはスーツの中に手を入れて手裏剣を取り出す。
銃を使おうかとも思ったのだが、どうにも気が乗らなかったので手裏剣にしたのだ。
シアから言われた位置に向かったところ、ゴルダはついにロベリアを視界に捉えた。

相手は周囲を異様に警戒しており、城下町の市民はそんなロベリアには我関せずと避けている。
そしてゴルダは手裏剣を改めて構えなおしロベリアに静かに近寄った。

「…?」

「動くな。ロベリア、お前はこの世界に悪影響を及ぼしかねない懸念がある。ついてはこの世界の創造神であるアルカトラスとシアの名のもとに身柄を確保する」

ようやくゴルダの気配に気付いたのだろう。
ロベリアが振り返ると、そこには5人ほどに分身したスーツとサングラス姿の謎の男が自分を取り囲んでいた。
諸事情あって目隠しをしており、視力もほとんどないロベリアが自分の近くに誰かが接近したことを知るためには
嗅覚と聴覚が重要になってくる。
だが、この男はそのロベリアの研ぎ澄まされた嗅覚と聴覚を潰して接近してきた。

「ただものではなさそう。そう感じた」

自分を取り囲む男に向かってロベリアは警戒心を一切解かない冷ややかな口調で呟く。
実力のわからぬものの相手をするのは自殺行為であると認識しているロベリアは、
下手に迎撃には出ず、まずは相手の出方を伺うことにしたのだが、相手も取り囲むだけで下手な攻撃はしてこない様子。

「それでいい、俺とて実力の分からん相手を攻撃するのは良しとしない」

男がカチャリと何かをしまう音を聞き、ロベリアはひとまずこの男が下手に自分を傷つけるつもりはないということを判断したが警戒を解くつもりは毛頭ない。
それは男のほうも同じなようだ。
やがて気配が5人から1人へ減り、男が自分の目の前に立っていることを感じたロベリアはこてんと首をかしげながら

「何用かしら?」

すっとぼけてはいるが絶対に警戒を解かない口調で男に問う。
男はロベリアの目線のあたりまでしゃがみ、目隠しの向こうの目を見ようとしていた。
そのときロベリアはこの男のから感じる内なる炎に強い興味を抱く。
深淵に染まっているというわけでもないが、完全に神聖でもないというよくわからないその炎は、
今まで深淵あるいは神聖な炎しか見てこなかったロベリアにとっては興味深い以外の何物でもない。

「ついて来てもらおうか」

「仰せの通りに」

男にシンプルに告げられて、ロベリアは男の数メートル後ろを歩き、ついて行く。
互いに下手なことはしないほうがいいと思っているのか、男の方は時折ロベリアがついてきているかを確認し、
ロベリアは男が振り返るたびに見える内なる炎を見て口元に笑みを浮かべる。

「警戒を解く気は一切ないけど、名前を聞いても?」

口元に笑みを浮かべたまま、ロベリアは男に名を聞く。
自ら名乗らずとも、男の方は自分の名を知っていたのであえて名乗らずに男の名を聞いた。
そして男はロベリアに背を向けたまま、こう名を名乗った。

「ゴルダ。今はそれだけを名乗っておこう」

ゴルダという名を聞いて、ロベリアはまた口元に笑みを浮かべてこう返す。

「名に恥じぬ人」

ゴルダはそのロベリアの一言には何も返さず、黙って背中を見せたまま歩くのだった。
その後30分近くゴルダの後をついて行き、ロベリアが連れてこられたのは感覚的にどこかの城の応接室と思わしき場所。

「そこに座れ」

座れと言われ、ロベリアはソファに座り、目の前を見据えた。
何か自分よりもはるかに大きな存在が2つも居る。
しかもその強さはゴルダの強さがかすんで見えるほどのレベルの違い。

ロベリアと対になる神聖なる炎の気配。
感じた姿はシアの方は4本角に赤き目、メルムーアはロベリアと似たような耳に青と赤の目。
そして、2人とも白い毛の竜であることが分かった。

「さて、どこからどう話したものかしらね。ああ、名乗ってなかったわ。私はシア、この世界の神の1人。隣はメルムーア、同じくこの世界の神の1人で私の妹」

自身の世界で敵対する組織、曼珠と同じ神聖な炎の気配に嫌悪感を抱くロベリアだが
相手が神では簡単にのされてしまうだろう。
ましてやゴルダも運が良ければ勝てるレベルの相手だ。
格上の相手に囲まれているロベリアはそれを自覚したうえで一層警戒心を強める。

「まず、あなたの世界のことを単刀直入に言うわね。脅威となりうる可能性がある要素が確認できたわ」

シアの一言に、ロベリアは口元を一の字にしたまま耳を傾ける。
いくら用心深くしているとはいえ、相手の話は聞くべき時は聞くという常識をロベリアは一応持っていた。

「あなたの世界は今おそらく宗教紛争のようなものの真っただ中。聖なる炎の宗派と、深淵の炎の宗派。根底にあるのは価値観の違い。間違っていない?」

優しくシアに問われたが、ロベリアは警戒を一切解かずに軽く頷いて肯定した。
どうやら間違ってはいないようだが、嘘をついている可能性もあるのでこの肯定が十割真というわけではない。
ゴルダもシアもメルムーアも、それは把握していた。

「あなたは深淵の炎側の宗派ね、深淵の炎こそが至高であるという考えを持った」

どうにも見透かされているような感じがして不快でならないロベリアは口元をへの字にしてシアとメルムーアを交互に見た。
それを見てもシアとメルムーアは顔色一つ変えず、次なる話へと移る。
だがここで、ゴルダはメルムーアが渋い顔でシアを見ているところから何かシアがやらかしたのだろうと思っていたのだが

「それを踏まえてあなたは本来であれば元の世界へ有無を言わさず帰すんだけど、姉さんがとんでもないポカやってくれてね。あなたの世界に関する記録を全部抹消した上に世界との繋がりを閉じちゃったのよ」

案の定、シアがロベリアの出身世界に関する記録を帰す前に消去した上に閉じてしまって帰せなくなったのだと言う。
こうなると、ロベリアから情報を計測して出身世界へまた繋げなければならないのだが、
ロベリアの警戒心が強いために計測できず、帰そうにも帰すための術がないという状態である。

「あなたが警戒心弱めてくれれば解決する話だけど、そうもいかないでしょうからね」

「私よりも強い相手には簡単に警戒心を解くことはできない、ということは私をここからつまみ出すのね?」

自分をつまみ出すのかと聞いてきたロベリアに、シアはそんなことはしないと言わんばかりに首を横に振る。
ゴルダはそれを見て、シアに何か策があるのだろうと考えたが

「まず、しばらくあなたにはこの城の敷地内だけで過ごしてもらうわ。その分生活は保障する。そして、あなたの相手はゴルダが務めるわ」

生活を保障する代わりに城の敷地内から出ることを禁じ、ゴルダに相手を務めさせるとシアは言ったのだ。
それを聞いたゴルダはやはりなと言わんばかりにいつの間にか出されていた茶を飲む。
一方でロベリアは、ゴルダが自分の相手を務めと聞いてほんのわずかだが警戒心を弱めた。

「かくなる故は、その内なる炎をしゃぶりつくす」

ロベリアのこの世界での目的は、ゴルダの内なる炎を知るということに今この瞬間から固定された。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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