氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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夜空より降りしは有翼の狼

梅雨の合間の晴れた夜空を見上げ、
凍るか凍らないのレベルにまで冷やしたチェルーシアのストレートを飲みながら煙草のようなものを吹かすゴルダ。
晴れてるとはいえ、湿度が90パーセント以上あるので不快指数は非常に高く、
この様子だと明日からまた雨だろう。

「…」

依然として無言のまま煙草のようなものを吹かし続けるゴルダ。
夜空の星々は数も明るさも変わらず、
上弦の赤い月が怪しく輝く。
やがてゴルダは煙草ようなものの火を消してチェルーシアのグラスを取る。
このグラスはガラス製であるにもかかわらず、
中の液体の温度を1時間以上保持できる魔力の込められたグラス。
そのため飲みかけで放置しても、凍るか凍らないかの温度で楽しめるのだ。

「流れ星か。俺が流れ星を見た夜はろくなことが起きないジンクスがあるが、今宵はどうだろうな」

ふと夜空に流れ星を見つけたゴルダは、
自分が流れ星を見た夜はろくなことが起きないというジンクスを思い出す。
それが今日はどうかと呟いていると、
夜空に薄紫と青の光が突如として出現。
それは流れ星めいてゴルダ家の庭の方へと落ちてくる。

「言霊って奴か、めんどくせぇな」

言った側からろくでもないことが発生したため、
ゴルダは正体不明の飛来物に対処すべく家の中心から半径数百メートルを防護する障壁を展開。
この障壁は、空からの飛来物を被害が出る前に受け止めるものであり、
あくまでも一次リスク回避のための代物。
それが爆発物などであれば魔法で無力化しなければならないし、
竜やその他魔物に類するものであれば撃退する必要もある。

「何が降ってきたんだ?」

飛来物が障壁に受け止められたことを確認し、
ゴルダは自身の目に魔力を送って視力を超望遠レンズレベルまで引き上げ、
その飛来物を見やる。

「有翼犬、あるいは有翼狼。どちらにせよ魔物の一種か」

障壁に受け止められていた正体不明の飛来物は、黒白の翼持つ有翼犬または有翼狼。

有翼犬あるいは有翼狼とはその名の通り翼を手に入れ、
飛行能力を有した犬や狼のこと。
一般的には魔物の類とされているが、
人に類する種族へ害を為すことはほとんどない。

もう一度良く見たところ、有翼狼でほぼ間違いないとゴルダは判断。
体の毛並みは黒に近い灰色?と白で、目は薄紫と青。
左目の下あたりに青く光る斜め線の模様が入っていることが確認できた。

「敵対反応もなし、下ろすか」

敵対反応も感じられないため、
ゴルダは障壁解除し、その有翼狼を普通の人間では出せない跳躍力で飛び上がって受け止め、
よくヒーローがやるような着地をする。

「あれ、ここどこですか?」

有翼狼が幻獣語に近い言語で聞いてきたので、
ゴルダは翻訳魔法を展開せずに幻獣語でこう返す。

「言って分かるかどうかはさておき、ますここはドランザニアという世界のドランザニアという国。そして今しがた空から降ってきたお前をこうして保護したのが俺、ゴルダだ」

「あー…うん、そうなんですか。わ、私零夜って言います」

単刀直入にここが別世界であることを説明した上で名乗ったゴルダだが、
有翼狼の方は数歩下がったような態度で零夜と名乗る。

どうにも自分の無表情さから避けられているような感じしかしなかったゴルダは、

「ミリシェンス、へフィア。どっちでもいいからちと来てくれ」

ミリシェンスとへフィアにどっちでもいいから来るように言う。
するとへフィアがやって来て何か用かという顔をしてやってきた。

「俺の隣に居るのは有翼狼の零夜と言う。どうにも俺の無表情さが苦手らしくてな、少し話し相手をしてくれ。俺はメルムーアに連絡する」

そう言ってゴルダはへフィアに零夜の相手を任せ、
自分はメルムーアに零夜に関して何か知らないかと連絡をすると言ってどこかへ言ってしまう。

零夜と残されたへフィアは、2人してどうするかという顔をする。
話し相手をしろとは言われたが、
話のタネがない以上は沈黙する他ない。

「家の中入りなさいへフィア、そこのお客様も」

するとそこへ洗い物を終えたミリシェンスがやって来て、
へフィアと零夜に家の中へ入るよう促す。
へフィアはそれにはーいと返し、零夜を家の中へ招く。

「あっ、私零夜と申します。それにしてもいい家ですね」

家の中へと上がった零夜は、本棚にぎっしり詰まった専門書と思わしき本や
棚の上飾られている白き毛を持つ竜の写真あるいは絵画に目を惹かれる。

「よいしょっと。私はへフィアよ、よろしく」

「私も相手するわ。ミリシェンスよ」

へフィアがソファへ座りつつ名乗り、零夜が少し離れて座ったかと思えば、
その間にミリシェンスが割って入るように座ってから名乗る。

「まず経緯から聞こうかしら、あなたがこの世界に入って来てしまった理由は一つしかし思い当たらないけれど」

ミリシェンスの物言いに安心したのだろうか、
零夜はこう答える。

「いつも通り夜空を飛んでたんですけど、気付いたらなんとも言えない違和感を感じて、失速してそのままこの家へ落ちてきた。と言った感じです」

その話を聞いたミリシェンスはなるほどといった顔をし、
へフィアの方も次いでそう言うことねと頷く。

「予想は当たっていたか」

メルムーアへの連絡を終えたのか、
家の中へ戻ってきたゴルダにミリシェンスは

「そう、それでシアあるいはメルムーアは何と?」

シアかメルムーアは何と言っていたを聞く。
ゴルダはそれに

「時空の狭間だ、1時間ほど前に突然現れて今さっき消えたとのことだ」

時空の狭間が出現していたこととそれが先程消えたことを話す。
だが、ゴルダが肝心なことを言い忘れていることに気付いたミリシェンスはちらりと零夜を見、
冷たい目線をゴルダに投げかける。

「確かに狭間から何かやって来たとはシアもメルムーアも言っていたが、それが零夜であるかの確証はまだ取れんとのことだ」

ゴルダはその目線に渋い顔をして、
狭間から何かが来たことは観測したがそれが零夜であるかの確証は取れていないことを話した上で一旦話を切り。

「それと、時空波形と魔力波形は記録済みだから、もし何か狭間からやって来たのが居たら連れて来いと言われた」

その狭間の向こうの世界の時空波形と魔力波形は記録済みなので、
もし迷い込んだのを見つけたら連れて来いと言われたと話す。

「あっ、あの。そのシアメルムーアって方はあの写真と絵画の方ですか?」

零夜がそう質問しながら前足で指した方向には、
シアとメルムーア、アルカトラスの3人が描かれた絵画。
そしてメルムーアの癒しの神任命記念に撮影した、
ゴルダやサフィ、その他十何人かと各国国王らを交えての記念写真が飾られていた。

「そうだな。4本角で赤い目がシア、2本角で青い目がアルカトラス。零夜に少し似た耳で角がなく、青と赤目なのがメルムーアだ」

向かい合うように置かれた1人用ソファに座り、
決して人に話をするあるいは人に話をする者としてあらざる者の姿勢はせずに説明する。
まともに第三者と話をするならば、当然のことである。

零夜はこれによりゴルダが一通りの良識を持っていると判断したのだろうか、
ありがとうございますと礼を言う。

「とはいえ、こんな時間からシアとメルムーアのところへ行くのは気がひける。明日行くとしよう」

既に熟睡しているルァクルとレルヴィンとマティルーネを横目で見、
遠回しに零夜に泊まっていけと言う。

「私はどこで寝れば?」

「ミリシェンスとへフィアのベッドで寝るといい。俺はここで寝る」

案の定零夜にどこで寝ればいいのかを聞かれたので、
ゴルダはミリシェンス等のベッドで寝るように言い、
自分はソファで寝る支度を始めた。

「いいんですか?」

「客人をこんな居間で寝かせるわけにはいかんだろう。客人はベッドで寝てもらい、俺は居間で寝るのがスタンスだ」

何だか悪い気がしますと遠回しに言う零夜に、
ゴルダはそんな細かいことは気にしなくていいと同じと遠回しに返す。

「それもそうですよね、おやすみなさい」

零夜はゴルダが遠回しに言おうとしていたことを何となく察したのか、
ミリシェンス達と部屋へ入っていた。

「シアとメルムーアの大きに腰抜かさねばいいが」

そう言ってゴルダは電気を消し、就寝した。

翌日、朝食時に違和感なく紛れている零夜には誰も突っ込まず、
いつも通り朝食を終える。
その後、ゴルダは零夜だけを連れてセイグリッドへ。

シアとメルムーアには昨夜で話が通っていたので、
改めて話すことはなかったのだが、
やはり零夜はシアとメルムーアの大きさに

「見上げられるほどの大きさですね…」

と若干腰を抜かしていた。
しかしそれも一瞬のことで、メルムーアの抱擁ですぐに零夜は立ち直る。

「帰れることは帰れるんですね」

「ええ、あなたは運が良かったパターンよ。いつもなら迷い込んだ者から時空波形と魔力波形を計測した上で検索かけるから」

シアから一通り説明を受け、
本当に帰れるのかと念のため確認する零夜にシアはあなたは運が良かったと話す。

「面倒なんですね」

「そうよ、所要時間がピンからキリまでだから数年かかっても見つからないなんてこともありうるわ」

シアと零夜が楽しそうに話しているのを、
ゴルダはメルムーアに座禅状態でぱふぱふされながら眺めていた。
メルムーアが癒しの神に任命されてからは、
ゴルダはこうしてメルムーアのところへやって来てはぱふぱふされている。
無論、ルピルの定期診察も欠かしてない。

「そうそう、次からは自由にこの世界と行き来できるよう。帰る前にこれをあげる」

帰る用意を始めた零夜に、シアは首から下げるチェーン付きの小さな鍵を差し出す。
シアの渡すこの鍵は、
このドランザニアという世界と別の世界を難解な魔法などなしに自由に行き来できるようになる魔道具。

シアがこれを渡すと言うことは、
零夜の出身世界がこの世界へ悪影響を及ぼすことがない。
あるいはその可能性が極めて低いと判断した証となる。

「いつでもいらっしゃい。ドランザニアという世界は、あなたを今この時から認め。受け入れたわ」

「ありがとうございますっ」

シアの祝福めいた一言を聞き、零夜は元の世界へと帰って行った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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