氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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異形の犬と竜医

その日、ゴルダは至急案件の依頼を受けた。
突如犬にも似た魔物のような何かが港の一角に出没。
警備員が食われただの何だの言っていたがよく聞き取れず、
最終的には逃げろという叫び声と銃声が電話の向こうから聞こえてきて電話は切れた。

明らかにこれはただ事ではないと思いつつ、
殺生が絡む依頼になりそうなのでめんどくさいと思いながらも、
ルァクルとマティルーネは連れて行かずに行くことに。

そしてやってきたのは、ドランザニア南部のとある港。
異界から来る船ののほとんどがここへ停泊し、様々なものを積み込み、または下ろして行く。

「他は平常運営ってか、まあここも我関せずな個人主義なところもあるからな」

該当する区画以外では、
コンテナを積んだトラックやコンテナを積み込まれているトラックが行き来している他、
クレーンフォークリフトが忙しなく動いていた。

そして該当区画へと到着したゴルダだが、異常なまでの静まり返りっぷりに警戒を強める。
どこに電話で言われた犬に似た魔物のような何かが潜んでいるか分からない。
腰の剣とデザートイーグルを抜き、1箇所ずつ確認して行くゴルダ。
すると、ある場所で争ったと思わしき痕跡を見つける。

「薬莢、血痕、そして肉片と思わしき何か」

常人が一目見れば、
その場で嘔吐するか魂を抜かれたように呆然とするかのどちらかな光景に
ゴルダは一切動じず黙々と調べて行く。

「対象は人あるいはそれに類する種族を襲い、喰らう。だがどんな奴なのかがつかめん。そして今回報酬はゼロか」

放置されたコンテナの側面に飛び散った血を見て、
聞き耳を立てるゴルダ。
すると自身を中心とし、正面を北と見た場合の西南西の方向から物音と水たまりを足で踏んだような音がした。
ゴルダはその方向へと向き直り、デザートイーグルを構えてその方向を調べる。

「…?」

刹那。
ゴルダの頭上を何かが飛び越えていった。
迷わずゴルダは後ろへ向き直り、威嚇射撃にデザートイーグルを1発放つ。

「〜!〜!」

何かは翻訳魔法を展開していないゴルダが理解できない言葉を叫びながら、
攻撃しないでと仕草で示す。

一見すると、白毛で青と赤の目をした犬にも見えるそれの尻尾は異常であった。
独立した自我を持っているかのように動き、先端には口が付いている。
尻尾はこちらが仕掛ければ反撃してくるのと判断しているのか、
こちらをじっと見つめて様子を伺っている。

「ゴルダちゃんゴルダちゃん、その子私のところまで連れて来てもらえる?殺しちゃダメよ?」

同じく様子を伺っていたゴルダに、
メルムーアから意思飛ばしによる通信が入り、
この犬の姿をした魔物のような何かを自分のところへ連れてくるように言った。

「簡単に言いやがる」

ゴルダはそう独り言を呟き、尻尾の方を診察眼で観察。
確実に人に類する種族は食える程度には伸縮自在で、
独立した自我と知能も持ち合わせている。
捕食対象がどの程度の獲物までかは一切不明だがだが、
人に類するものならたやすく食えることが分かっている以上最大級の警戒をせざるを得ないだろう。

「とりあえず翻訳魔法を…っと」

尻尾が急に飛びかかって来たので、
ゴルダはそれを上手い具合に回避して翻訳魔法を発動した。

「ちっ…僕に近寄らないでくれる?」

逃げ腰になりながら言う犬型の魔物のような何かに対してゴルダは銃をホルスターへ戻し、
剣だけを握ったままこう返す。

「まず落ち着け。必要とあらばお前の尻尾の方だけ黙らせることは可能だ。そして名があるのならば教えろ。ちなみに覚えなくていいが俺はゴルダと言う」

銃を持っていた方の手に対幻獣用の鎮静剤を持ち、
まずは落ち着くように言い、名前があるなら名乗るように促す。
自分から名乗った上で。

「フタバミ、フタバと呼ばれることが多いよ」

犬型の魔物のような何かは名をフタバミと名乗り、
尻尾が何かしでかさないかと気にしているようだ。

「やはり尻尾が俺を襲わないかが気になるか?こいつで黙るかどうかは不明だがやる価値はある」

ゴルダは剣を戻し、もう片手に持っていた鎮静剤を構えフタバミに急接近。
尻尾に鎮静剤を投与してすぐさま離れる。

「即効性の非常に強力なタイプだが、どう出る?」

結果はというと、フタバミの尻尾には通用しなかったようだ。
薬品耐性があるのか、はたまた単純に遺伝子などの関係で効果がもともと無いのか。
詳しく調べなければそれは分からない。

「あっ、あまり僕に近寄らないほうがいいよ?この尻尾は見境なく襲うし、食欲は底知れずだし」

フタバミにあまり近寄らない方がいいとオブラートに包んだ拒否をされつつも、
ゴルダはまた尻尾に近寄って、
どこからか何の肉かは不明だが重さが数キロはありそうな肉塊を取り出す。

「食うか?」

フタバミの尻尾の前でその肉塊をちらつかせていると、
尻尾は突然大きく口を開いたかと思えば肉塊にかぶり付く。
その際、ゴルダの腕も食べようとしたがゴルダがもう片方の手で鉄拳制裁を食らわせたので事なきを得た。

「ところで君、僕に何の用?用がないならどっか行ってよ」

相変わらず拒否の意思を示すフタバミに、
ゴルダはこの惨状をどう説明したものかと考えながらもストレートに

「お前はこの惨状をどう思う?飛び散った血痕、尻尾が食い散らかした肉片」

周りの惨状を見てどう思うかを聞いた。
ここでフタバミは、自分の足元に血だまりが出来ていることに気付き

「僕じゃない、僕が自分の意思でやったことじゃない。この忌々しい尻尾が全部やったんだ」

自分がやったのではないと呪詛の念の如く繰り返し呟き、
その場に伏せてまた自分がやったのではないとブツブツ呟き出す。

一方フタバミの尻尾はまだ食い足りぬといった様子だが、
割と本気の鉄拳制裁を受けたため、
ゴルダを獲物として見るのはやめたらしい。

「これ以上ここにいると俺が疑われる。悪いが場所を移動するぞ」

さすがにこれ以上ここに居ると、事情を知らない第三者が来た際に真っ先に疑われるため、
ゴルダは座標指定テレポートでセイグリッドへと移動。
移動した先は、セイグリッド城の大浴場。

「えっ、何する気なの?」

「そのついた血を洗い流す」

何をする気なのかと聞いたフタバミに、
ゴルダは血を洗い流すとだけ答えてフタバミを両手易々とで担ぎ上げて大浴場の中へ。
その後は嫌がるフタバミと尻尾問答無用で風呂に入れ、
入れた後にさりげなくブラッシングと尻尾の歯を磨いた。

「これで綺麗になったぞ」

「…匂いきつい」

生まれてこの方風呂というものに入ったことのないフタバミは、
自身から匂う石鹸の匂いに慣れず顔をしかめた。

そしてどうやってシアのところへフタバミを連れて行こうかと考えていると、
たまたま大浴場に使用済タオルなどを取りに来たサフィが

「変な犬ね。犬というよりは魔物?かしら。それはそうと、これ使えばいいんじゃない?」

フタバミを見て魔物か?と呟いた後に首輪とエマセレススチール製の鎖のリードを出してきた。
ゴルダはそれを一応受け取って、使用済タオルを持って行くサフィを見送る。

「とりあえずこいつで引っ張って行くか」

未だに鉄拳制裁が効いているのか、
フタバミの尻尾の方はゴルダが近付くとビクッとして引っ込み、
それ以上は様子を見るだけになる。

一方のフタバミ自身も逃げ足には自信があったが、
ゴルダ相手では逃げられないと踏んで
首輪に嫌悪感を示す視線を投げつけてみる。

「また担がれたいのならばそれで結構。お前はまだ軽い方だ」

「なら担がれる方がいいよ、首輪なんて御免だ。僕は飼われるような存在じゃない」

以外にもゴルダは、自分の意思は尊重してはくれるのだなと思っていた矢先。
突如として担がれ、フタバミはどこかへ連れて行かれる。

「さて、ついたぞ」

「寒っ…」

フタバミが連れてこられたのは、
時季外れな冷たい空気が立ち込めるどこかの塔の上。
端の方から地上を見れるようだが、
フタバミは見る気がしなかった。

「ゴルダちゃん通して見てたけど、その子がフタバミちゃんね?」

ぽかんとしているフタバミをよそに、
紅茶片手にやって来たメルムーアへゴルダはそうだと返す。

「尻尾に目を瞑れば、ただの犬ね本当に」

そう言って、フタバミにそっと触れるメルムーアだったが突如として尻尾が噛み付いてきた。
だがしかし、フタバミとメルムーアではゴルダとは打って変わり、
桁外れ体格差があるためベシッともう片方の前足で抑えられてしまう。

「悪い子」

メルムーアはそう言って尻尾の方を解放し、
フタバミ本体の方を見る。
一応異形の別物といえど、神経は共有しているため抑えられたことに対して
何するんだよという顔でシアを見ている。

「それで、フタバミをどうする気だ?俺は面倒見きれん」

結局つれて来させてメルムーアにフタバミをどうするのかと聞いたところ、
メルムーアはしばらく沈黙した後に

「フタバミちゃんの出身世界、姉さんが行き来に制限かけちゃっててしばらく帰せそうにないから私が面倒見るわ」

シアがフタバミの出身世界への行き来を理由は不明だが制限を掛けてしばらく帰せないとのこと。
そのため、しばらくはメルムーアがフタバミの面倒を見るらしい。

「こいつ尻尾はくせ者だぞ、せいぜい注意するんだな」

フタバミの尻尾に気をつけるよう言った側からまた噛まれていたが、
メルムーアはニコニコしながら尻尾を叩いてやめさせていた。

「魔力与えておけば見境なく襲うことは無くなるはずよ。魔力で尻尾の方の食欲を抑えるの」

「食欲抑制で対応か、やれるもんならやってみるんだな」

フタバミは目の前の白毛の竜とゴルダが何を話しているのかは理解できなかったが、
自分をどうするかの話をしていることは分かった。

「…どうでもいいからさっさと帰りたい」

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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