氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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バウムとメルムーア

フォルテの森の初夏はとても初夏らしくない。
なぜならば、バウムの力で森の気候がある一定のラインに常に保たれているからだ。
その理由としては、ミスティが常に一定の気候に保っていないとカリカリしたり巨鳥が体調を崩すからだ。

「想いさえあればたやすいことではないのだが、疲れるものだ」

森の住人たちのさえずり声に耳を澄ましながら、バウムはそう呟く。
ここ最近はアルガティア達も来ないためか、ミスティが変に気張ることも少なくなっている。
だが、それと同時にバウムは一種の虚空を感じていた。
今まで来ていた者たちがばったりと突然来なくなったのでそれも当然の話だろうが。

「…?シアに似ているがそこまで強くはない気配と、シアの気配がするな。他には…ゴルダか?」

虚空を感じながらバウムが以前アルガティアが置いていった本を読んでいると、
突如シアとシアに似ているがそこまで強くはない気配にゴルダの気配を感じて本から目を離した。
内心、またシアは何を連れてきたんだと思いながら待っていると人の姿のシアとゴルダ。
そして、シアに似ているが角がなくフィルスのような耳に赤と青の目のふわふわした竜が神木の前へやって来た。

「陰陽の念が均衡を保っている、そういう場所ね。闇と光は表裏一体」

そう話す竜に、バウムはこれはこれはと声をかけてみる。
するとその竜は耳をかすかに動かしてバウムの方を見ると

「あらあら、バウムちゃん」

名乗ってもいないのにバウムの名を口にした。
だが、ちゃん付けで呼ばれたためにバウムは若干恥ずかしそうに頬を赤らめて咳払いをし

「ちゃん付けはやめてもらえるだろうか?呼び捨てで構わない。私の名を知っているということはシアから話は聞いているとは思うが」

呼び捨てで構わないのでちゃん付けは止めるように言い、
シアの方をちらりと見た。
一方でバウムに見られたシアは自分は何も知らないといわんばかりの顔をして指に自身の髪を巻き付ける。
そしてゴルダはというと、突如として地面の土をスコップで採取したかと思えば謎の袋へ入れた。

「この森の土を持ち帰って何をするのだ?何の変哲もない土ではあるが」

バウムのその問いに、ゴルダは調べることがあるとぶっきらぼうに返した。
その返しにバウムは左様かと言い、またシアの方へ向き直って

「そちらの竜は?私のことをよく知っているようではあるが」

そのシアに似た竜は誰なのかと聞いた。
するとシアはふふっと笑ったかと思うと

「私の妹のメルムーアよ」

この竜が自分の妹のメルムーアであると話す。
それを聞いたバウムはなるほどとしか言い返せず、ただ見つめるだけに。
一方のメルムーアは、ただ自分を見つめるだけのバウムに近寄ってその顔を前足でぱふぱふする。
耳を動かしながらバウムの顔を前足でぱふぱふするメルムーアを見て、
ゴルダはメルムーアが何をしているのかを探ったところ、単純にバウムの疲れ具合を調べているだけのようだ。

一応メルムーアは癒しの神に任命されているので、バウムの何かの疲れを感知してこうして調べているのだろう。
それからしばらくバウムの顔をぱふぱふしていたメルムーアは、どういうわけか頭を左右に振って

「あなたの疲れって、絶対に『取れることがない』一種の概念みたいなものなのね。想いには光も闇もある。あなたはその間に立って糧とし、この森を維持するもの。その『疲れ』はあなたがこの森を維持している証拠」

メルムーアがどういうものであるかを理解していないものからすれば、
何言ってんだこいつはで一蹴される話ではあるが、バウムはメルムーアが何を言いたいのかを理解したらしく

「まずはその前足を私の顔からどかすのだ」

メルムーアに前足をどかすように促し、メルムーアが前足をどかしたのを確認してからまた一つ咳払いをしてこう言った。

「私を心配してくれるのはありがたいのだが、私はこの森の概念が具現化しただけの存在でしかないのだよ。森が終わるとき、私もまた終わる。だからそこまで心配しなくてもいい、この森と森の住人が生きるという意思を表明している限りはね」

バウムが言い終わった後、いつの間にか茶の用意をしていたゴルダが

「堅苦しい話はお前らには似合わない、こっちへ来い。今を楽しめ」

メルムーアとバウムを呼び、茶会を始めるのだった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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