氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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時期尚早の氷花

その日はブリザードもなく、澄んだ万年雪国の夜空に下弦の月が淡く光っていた。
そんな月夜の元でエインセルスは雪原移動用の竜に乗り、夜の雪原を駆ける。
なぜこんな夜から城を出て雪原を移動しているのかというと、氷花竜の気配を1月ほど早く感じ、不思議に思って調べるために城を飛び出したのだ。

例年では、氷花竜は3の月から4の月の間しか現れず、それ以降は一切姿を見せなくなる。
それが1月も早く現れたということは何かあったに違いない。
スノーヴァにも気になるなら今すぐ行動を起こせと背中を押され、城の者の制止を振り切ってエインセルスはこうして夜の雪原をスノーヴァと共に駆けている。

「魔力観測所からは今年に入って特に変化はないと最近報告を受けたばかりだが、気づけていない何かが起きているのか?」

ふと独り言を漏らしたエインセルスに、スノーヴァはかすかに尻尾を揺らして

「ほぼ間違いない、実は2の月に入ってすぐからいわゆる『春の魔力』というものが強く感じられた。この魔力は普通2の月の終わり辺りから感じるものだ」
例年より早く春の魔力を感じたと話す。
それに対してエインセルスはそうかと頷き、例年氷花竜が必ず現れる場所へと急ぐ。

一方で、リヴァルスウルフ達も氷花竜の気配を感じ取り、族長のシェリスが行動を起こしていた。
他の同族は連れず、ただ1人で。

「おかしい。現れるには早すぎる」

エインセルスと同じ考えをしていたシェリスは、氷花竜の出現場所へと走る。
例年より早く現れるということは、何かがあるはずだ。
やがてシェリスは氷花竜が現れる場所へと到達した。

「気配はする、でもまだ現れてない。そして氷花が咲いている」

氷花が咲いているところを見ると、出没したのはほぼ間違いないのだが肝心な氷花竜の姿が見えない。
シェリスがしばらく辺りを注意深く調べていると、雪原移動用の竜に乗ったエインセルスとスノーヴァがやって来た。

「来たのね」

シェリスは素っ気なくエインセルスに言うと、顎で氷花を指す。
エインセルスは指された方に咲いている氷花に近寄り、調べようとしたがスノーヴァがふわりと肩から降りてその氷花を食べてしまった。

「無味か、普通はほんのり甘いんだけど」

それがどういう意を示すの?とシェリスに目線で訴えられたスノーヴァは、他にもたくさん咲いていた氷花を前足で1つ摘み取ると

「氷花は例年通り咲いていれば春の魔力を含んでほんのり甘い。だがこの氷花は無味。誰かが人工的な春の魔力を放出したせいだろう」

それをシェリスの前に突き出して、誰かが人工的な春の魔力を放出しているからだと言う。

シェリスはそれに納得したような顔をして、あとはあなた達に任せるわと言わんばかりに去っていく。

「人工的な春の魔力には心当たりがある。農業研究所の連中が最近研究用に置いてあった四季の人工魔力のうち春の魔力を誤って外へ放出したという障害報告が上がっていたのを今思い出した」

人工的な春の魔力が氷花竜を例年よりも早く出没させたというスノーヴァに、エインセルスは農業研究所で四季の人工魔力のうち春の魔力が外へ放出されたことがあったことを思い出したと呟く。

「それでか、なかなか厄介なものだ。以降厳重注意するよう伝えたんだろうな?」

「無論の事」

そんな会話をしながらリャダヴィルチへと戻っていく2人を、1匹の氷花竜が木の陰から見送っていた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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