氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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満月のミリシェンスンスとゴルダ

青白い満月の光が地上に住まうものどもをさしたる興味も示さずに見下ろす秋の夜長。
バルコニーで月を眺めながらワインを飲んでいたゴルダの元へ家事を済ませたミリシェンスがやって来た。
今日は満月ということもあり、月の属性が強まっていつもよりどこか魅力的にも見える。
「ふふふ、月がとてもきれいね」

口調がいつもと違うミリシェンスにゴルダは顔を合わせてそうだなと肯定する。
ゴルダは感情欠落により魅力系能力の類はほとんど受け付けないが、それでもどこか惹かれるものを感じていた。しばらく見つめ合っていると、唐突にミリシェンスが膝に座った。

膝に座られたゴルダは、ワイングラスを横のテーブルへと置くと無意識のうちにミリシェンスの頭を撫でていた。
もちろん額の核石を触らないようにしながら。
頭を撫でられたミリシェンスは、クスクスと笑うと

「このまま体起こせるかしら?」

ゴルダに上半身を起こすように促した。

「こうか?」

言われるがままにゴルダが上半身を起こすと、何を目論んでかは一切分からないがミリシェンスはゴルダの右の頬にキスをしてきた。

「これは、どういう意図がある?」

突然頬にキスをされたゴルダは不思議そうにミリシェンスに聞くが、ミリシェンスはクスクス笑うだけ。

ゴルダはこのミリシェンスの行動を満月によるものだと判断してはいたが、普段このようなことをしてこないものがする行為というのは、恐怖の感情を持つものならば畏怖すること間違いなしだろう。
だがゴルダはただただ不思議がるだけで畏怖は感じてなどいなかった。

「何か飲むか?」

取り寄せ魔法で新しいワイングラスを取り寄せようとしたゴルダに、ミリシェンスはいらないと鈴のような声で言い、いつもの前掛けエプロンを外す。

これは従者としてではなく、一介の幻獣として関わることを意味していた。
はたしてミリシェンスは何をする気なのだろうか?

ミリシェンスの一連の行為を見ていたゴルダは、もはや不思議がるというよりはお前は何がしたいんだという目でミリシェンスを見るようになっていた。
やがてミリシェンスは、ゴルダの首輪に手を触れて何かを確かめるようにまさぐる。
その間に首元に感じる違和感にゴルダは渋い顔をする。

「あなたの血、いただいても?」

やがて首輪をまさぐり終えたミリシェンスの一言に、ゴルダは

「竜滅病が持病である以上吸わせるわけにはいかん」

と即答。
竜医滅病の感染経路の一つとして、血液感染があるがための反応だ。しかしながら、幻獣族への竜滅病感染は確認されてないのも事実。
だがそれは、データがないが為であり感染する可能性がゼロとはいえない。
そのためゴルダは自分の血を飲ませるのを拒み続けてきた。あのシャールイズでさえもだ。
だがミリシェンスは、牙のような八重歯をゴルダに見せびらかしながら

「大丈夫、感染はしないから」

と自信たっぷりに言う。

なぜミリシェンスが感染しないと断定できるのか?
いささか疑問ではあったが、素直に許可した方がいいと考えて

「構わんが、違和感感じたら途中でも止めて吐きだせよ?」

首輪を外してミリシェンスが吸いやすいようにする。最近は制御力が高いので、短時間なら首輪を外しても問題はない。

ゴルダが首輪をテーブルに置いたと同時に、ミリシェンスはゴルダの肩と脇の下辺りに手を回すとその首に八重歯を軽く当てて吸う位置を決めると、何の躊躇もなく噛み付いて牙のように鋭い八重歯を首へと突き刺す。
その際ゴルダは採血時に針を刺されたような違和感を感じた。

その後も違和感は感じはしたものの、どちらかというとミリシェンスの顔の毛が頬に当たっていることによる違和感であった。
吸血自体はほんの数分で終わり、ミリシェンスが首元から顔を離すとゴルダは再び首輪をつける。
血を吸ったミリシェンスは満足そうに笑みを浮かべいたが、口元についていた血が何とも言えない雰囲気を醸し出していたので、ゴルダはその口元についていた血を拭き取ってやる。

するとミリシェンスは何も言わずにまた頬にキスをした。これが礼の代わりなのだろう。
ミリシェンスは夜空の方へ向き直り

「あなたと後どれだけの満月を迎えられるのかしら?」

ミリシェンスの独り言ようにも受け止められる問いにゴルダは

「数えるだけ不毛だ、俺がくたばるその日まで何度でも今日のような満月は迎えられる」

契約切れるその日まで何度でも迎えられると返し、また頭を撫でる。
今宵の月は、どこか地上のものどもに興味を示しているようだった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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