氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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七夕の前に

7の月に入り、本格的な夏が訪れたリフィル。
王宮のあちこちに笹の葉が置かれ、紙で作られた飾りと長方形の短い紙が下げられていることから、これが七夕のために置かれた笹の葉であることが分かる。
そんな笹の葉の前で、ゴルダとルーエとルーナが下げられた長方形の短い紙を見て話をしていた。

「ルーエ、ルーナ。お前は想いの力を信じるか?」

「信じるよ。呪いを含めた呪術はは人の負の感情という想いがあってこそ成り立つものだし」

「そうですね、信じてないといえば嘘になるかな。想いの力はどんな風にも作用しますから」

ゴルダに想いの力を信じるかと聞かれた2人は、それぞれ信じるという返事を返す。
その返事を聞いたゴルダは、ふむと頷くと次はこんな質量をする。

「では質問を変えよう、想いに質量があると聞いたら信じるか?」

この質問には、ルーエもルーナもきょとんとして何も答えなかった。
これにはマティルーネも

「質問のハードル上げすぎ」

と苦言を漏らすが、ゴルダは一切気にしていない様子である。

「あっ、ルーナだ」

その頃、笹の葉の前に立っているルーナを見つけたアイレは他にも誰か居るのを見て 警戒して様子を伺う。

「誰だろう?全然知らないのが2人…いや、3人?」

ルーナとは別に、自分と同じカーバンクルと全く見たことのない異様な雰囲気を醸し出す男とその頭の上に乗る紫毛の竜。
カーバンクルと紫毛の竜の方は問題なかったが、異様な雰囲気を醸し出す男だけにはアイレは警戒を解くことができなかった。

「とりあえず話しかけてみようかなぁ」

というわけで、アイレはカーバンクルと異様な雰囲気を醸し出す男に

「こんにちは〜…」

と話しかける。
すると男はアイレに興味深そうな視線を投げかけて

「アイレだったか?話は聞いている。イファルシアの奴に雑草と間違えられたらしいな。俺はゴルダ、頭の上のはマティルーネだ」

イファルシアに雑草と間違えられた時の話を持ち出し、名をゴルダと名乗り、頭の上の紫毛の竜の名前も教えてくれた。
一方、カーバンクルの方はアイレをあまり興味がなさそう目つきで見ながら

「アイレだっけ?ボクはルーエ」

そっけなくルーエと名乗る。
アイレは自分がルーエに初対面にもかかわらず、そっけない態度を取られたことにしょんぼりした顔になる。

「アイレ、気にするな。ルーエは親しくない奴にはこういう態度を取ることが多い」

一応ゴルダがフォローを入れるが、それでもアイレはしょんぼりしたままだ。
これには横で見ていたルーナもどうしたものかと、ゴルダにどうするのかと視線を投げかける。
それにゴルダは、少し考えた後に

「こうも暑いと溶ける。応接室に行くぞ」

応接室へ行くぞと言い、ルーエたちを応接室へと連れて行く。

応接室にはなぜか人化したシアとアルガティアが優雅にティータイム中で、ゴルダたちが入ってくるや

「ちょうど良かったわ。短冊書きなさい」

全員に短冊を押し付けて書くように促す。
しかし、短冊を渡されても書くものがないのでルーナとルーエは同時に

「書くものがないんだけど?」

とシアに聞く。
一方、アイレは短冊には全く興味を示さず、人化しているシアに釘付けになっていた。
どこに惹かれたのかは定かではないが、おそらくはその腰まで届く長い髪と吸い込まれそうな赤き目に惹かれたのだろう。

「その短冊は使用者のイメージを文字や絵に具現化させる特殊な紙で作られているから、願い事イメージするだけでいいわ。あと…アイレだったかしら?こっちにいらっしゃい」

ルーナとルーエにこの短冊は書くものを必要としないので願い事をイメージするようにと言った後、シアはアイレに自分のところへ来るように促す。
それに最初はえっえっと動揺していたアイレも、惹かれた相手においでおいでをされたのでは拒否できなかったらしく、最後は素直にシアの膝へと座る。

「いいなー」

シアの膝の上に座るアイレを見て、羨ましそうにするルーナに対し、ルーエは何かを感じ取ったかのような顔をして

「かつてないほどの癒しの魔力が放出されてるね。アイレとシアが原因かな?」

かつてないほどの癒しの魔力が放出されていることを指摘する。
ゴルダはそれには何も返さずに、アルガティアから出された紅茶に手をつけて

「真夏の昼下がりに涼しい部屋で熱々の淹れたての紅茶をたしなむ。一見するとどこか矛盾しているな」

などとよく分からないことを言う。
このゴルダの一言に、アルガティアは

「涼しい場所に熱いものは似合わないってこと?そう言われてみればそうかもね」

理解できないわけではないという意と似たようなことを返した。

「んー…」

どうイメージすれば短冊に願い事が書かれるのか分からないルーナは、短冊を両手に挟んだり、二本指で短冊を持ってポーズを取ったりとあの手この手を試しているが、短冊に願い事が刻まれる様子はない。

「ふみゅう、できた」

一方ルーエはあっさりと願い事が刻めたようで、なおもアイレを膝に乗せているシアに短冊を渡す。

「なるほど、ねぇ」

アイレを撫でながらルーエから受け取った短冊を読んだシアは、そんなことを呟いてパッと短冊をどこかへ消してしまう。
それにルーエは、せっかく書いたのにと今にも言いそうな顔でシアを見たが

「大丈夫。セイグリッドの笹の葉に飾ったから」

セイグリッドに置いてある笹の葉に飾ったから大丈夫よと言って安心させる。
なお、それを見たゴルダはシアに

「何も言わずに転送するか普通?それだと処分されたと勘違いされてもおかしくはない」

一言言ってから転送しろと言う。
だがシアはうふふと笑いながらアイレを撫でてごまかした。
アイレはシアに撫でられたりして骨抜きされたのか、すっかりシアに甘えている。

「なんで書けないのかな?」

その一方、ついに打つ手を全て打ったルーナが諦めムードを見せ、がっかりした顔になる。
それを見たルーエは、ルーナにこんなヒントを出す。

「額に当てる」

額に当てる。
なぜそれを思いつかなかったのだろうかとルーナは自分に問いかけながら額に短冊を当てた。

「あはは。ルーナ、キョンシーみたい」

額に短冊を当てた姿がそう見えたのか、アイレはルーナにキョンシーみたいだと言う。
ルーナはアイレのその一言にそう?とだけ返して願い事をイメージし出す。
するとどうだろうか。
白紙だった短冊に文字が浮かび上がり、しっかりと刻まれたのだ。

「あっ、出来たみたい」

そう言ってルーナは短冊をシアへ渡す。
短冊を受け取ったシアは、ちらりと短冊に刻まれた願い事を読んですぐに転送してから

「面白い願い事するのね」

とだけ呟いてアイレにも短冊を渡して書いてみなさいと言う。
いきなり短冊を渡されたアイレは、ルーナの見よう見まねで額に短冊を当て、目を閉じてイメージする。

「あら?これはどういう意味かしらね?」

アイレの短冊に刻まれた絵を見て、シアは不思議そうにする。
アイレの短冊には、何かの紋章とも取れるものが描かれており、その下には幻獣語に近い文で

「寂しくならない未来を」

と書いてあったのだ。
これが何を意味するのかは、最後まで誰にも分からなかった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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