氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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出会いは勘違いから

原則、国王の居る書斎などの一部の部屋を除いて大陸の国王の住まう城や王宮、屋敷は一般的に解放されていることが多い。
そのため、観光客の他に一般市民も時には暇つぶしだったり避暑や避寒のために訪れることも決して少なくはない。
それはリフィル王宮でも同じで、常日頃からいろんなものが出入りしている。
そして今日も、その中に。

「あっついわ」

麦わら帽子を被り、エゼラルドとイレーヌと共に王宮の畑の手入れをしていたイファルシアはどこからかひょうたんで作られた水筒を出して水を飲む。
梅雨も明けて夏本番を迎えたリフィルは、長雨日から打って変わり、連日猛暑日が続いている。
畑に植えられている野菜たちは、すべてそういった極端な天候の変化に強い品種ばかりなのだが、それでも病気になる時にはなる。
今のところ目立った病害は確認できないが、念には念を入れて調べているのだ。

「雑草もしつこいわね、普通のと魔法雑草が入り混じっているから余計厄介」

蔦と手、両方をうまく使って雑草を抜いていたイファルシアだが、チャチャルチというカブが植えられている部分の雑草を抜こうとした瞬間

「いたたっ!僕は雑草じゃないって!」

雑草と思って引っ張った緑の何かの下から雑草じゃないという声が聞こえたので、イファルシアはため息交じりに

「畑の中で隠れて何やってんの?」

と声の主に問いかける。
すると、チャチャルチの葉と葉の間から緑毛のカーバンクルが現れた。
ただ、他のカーバンクルと違って額の核石だけではなく頬にも髭のように並んだ石があるのだ。

「頭がハゲちゃうかと思ったよもう」

緑毛のカーバンクルは、イファルシアに引っ張られた頭の毛をさすりながらぶつくさ呟く。

「まず、ここの畑は無許可の場合は関係者外立入禁止よ。知らなかったとは言わせないわ」

腕組みをして不機嫌そうな顔をしながらイファルシアはそう言う。
だが緑毛のカーバンクルはそんなことを一切気にせずにまだ自分の頭の毛をさすっている。

「ねえ、あんた私の話聞いてる?」

イファルシアが蔦で突くと、緑毛のカーバンクルはようやくイファルシアの目を見て

「聞いてるよ。ばっちりね」

話は聞いていることをアピールし、イファルシアの額の核石に触れた。
その次の瞬間、イファルシアのプロボクサーも顔負けの鋭い蔦ストレートが緑毛のカーバンクルを吹っ飛ばす。

補足までに説明しておくが、この世界のカーバンクルは核石と呼ばれるカーバンクル族が持つ独自の石を触られることを非常に嫌う。
理由は諸説あるものの、有力な説としては核石そのものが敏感な場所であり、触られることで体内の魔力のバランスに悪影響を及ぼすからだと言われている。

「大丈夫かい?」

吹っ飛ばされた緑毛のカーバンクルを、エゼラルドはもふっと受け止めてから怪我はないかどうかと聞く。
緑毛のカーバンクルは大丈夫と答えてから、イファルシアに敵意のある目線で睨みつける。

「たやすく核石に触るってことは、あんた異界出身ね」

またもや飽きれた様子でため息をつきながら、イファルシアはそう呟く。
緑毛のカーバンクルはそんなことを呟くイファルシアを睨みつけたままエゼラルドに

「ありがとう」

と礼を言ってイファルシアに近寄る。
なお、イファルシアは喧嘩を売ってくるなら容赦はしないといった感じで緑毛のカーバンクルを見ていた。
やがて、互いに睨み合いの状態に入ってしまった。

「困ったねこれは」

サトイモの葉を日傘代わりにしながら、エゼラルドはどうしたものかと考える。
現在イレーヌは魔法植物の手入れ中で手が離せず、フィルスでは止められるかどうかすら怪しく、アルガティアはおそらく仕事中。
となれば、自分が仲裁に入るほかないのだ。

「僕はあまり仲裁とかするのは好きじゃないんだけど仕方ないか」

自分しか居ないなら仕方ないと、エゼラルドがまだ名を聞いてない緑毛のカーバンクルとイファルシアの仲裁に入ろうとしたその時。

「あっ、アイレじゃない。イファルシアと何しているの?」

突然ルーナが現れ、緑毛のカーバンクルの方に声をかける。
さすがにルーナの前で喧嘩はできないとどちらも思ったのか、イファルシアはアイレと呼ばれた緑毛のカーバンクルからそっと目線をそらし、アイレの方も何事もなかったかのようの振舞う。

「一件落着かな」

喧嘩勃発の危機が回避されたことを確信したエゼラルドは、アイレとイファルシアとルーナに近寄って

「ここは暑いよ、日陰へ行こうか」

と3人をひとまず応接室へ連れて行くことにした。

そして場所は変わって応接室。
アイレとイファルシアは互いに話そうとはしないが、ルーナとアイレは最近どう?などといった他愛もない話をしている。

「じゃあ、僕はまだやることがあるからこれで失礼するよ」

そう言って応接室を出て行くエゼラルドを、ルーナはニコニコしながら見送った。

「あんたアイレって名前だったかしら?イファルシアよ」

息が詰まりそうな空気になったために、イファルシアは自らアイレに名乗る。
アイレはそれを聞いて右耳につけているアクセサリーを揺らしながら

「長い名前だね、短くした方がかわいいと思うけどなぁ。僕はアイレだよ」

イファルシアの名前を皮肉った上でこちらも自分からアイレと名乗り、また額の核石を触ろうとするが

「ダメよアイレ、イファルシアはそこを触られるの一番嫌うから」

ルーナに咎められてしまう。
さすがのアイレも、今度蔦ストレートを食らったらどうなるか分からないので自重することに。

「こんにちは」

それから十分ほど経って、仕事の席を外してきたと思わしきアルガティアが従者とフィルスを連れて応接室へと入ってきた。
ルーナはすぐにアルガティアとフィルスに挨拶をしたが、アイレは知らん顔を決め込み、イファルシアにいたっては自分で出したみかんをどこ吹く風で食べている。

「イファルシア、何かあった?」

どこ吹く風でみかんを食べるイファルシアを見て、フィルスがルーナに聞くも、ルーナは分からないとしか返さない。

「もしかしなくても君がイファルシアの機嫌悪くさせた?」

フィルスに問い詰められ、アイレはぎくりとしながら頷く。
フィルスはそんなアイレの反応を見て、そこそこ呆れた様子で

「一度機嫌悪くなると、イファルシアの機嫌直すの大変だから気をつけてね。ところで君名前は?僕はフィルス」

イファルシアの機嫌を直すのは大変だと言いつつ、自らの名を名乗る。
アイレはフィルスの核石も触ってみたくなったが、触ればおそらくイファルシアの時のような目に合うだろうと思い、ここはぐっとこらえて

「アイレだよ、よろしくフィルス」

普通に挨拶を返した。
フィルスは、アイレが自分の核石を触ろうとしていたことを感じ取って

「うん、よろしく。それと僕の核石も触らないでね、イファルシアの触ったでしょ」

イファルシアが意思を飛ばしてアイレに核石を触られたことを教えてきたので、それについても触れつつよろしくと返す。
アイレはなんだか自分が丸め込まれたような気分になり、従者が置いていった氷がほとんど溶けた緑茶をぐいと飲む。
なお、この後アイレはアルガティアにも挨拶し、名乗ったのだが核石をなぜ触ってはいけないのかを1時間近く教えられたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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