氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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スノーウィーと語る

昼の淡い日差しが池の水面に反射し、より一層幻想的な雰囲気を醸し出すフォルテの森のとある場所。
その池のほとりで、スノーウィーはまどろんでいた。
特に自分を狙うものがいるわけでもなく、何かが起きるわけでもなく、悠久とも言える退屈な時間だけが流れている。

「暇ねぇ」

スノーウィーは小さくあくびをし、水面に写る自分の顔を眺める。
そこに写っているのは、独特の角を持ち、青い羽とふわふわの体毛に覆われた氷竜としての自分の姿。
スノーウィーはそんな自分の姿を嫌ったことも好いたことも生まれてこのかた一度もない。
いや、正確には嫌ったあるいは好いたことは一度はあるだろうが、そういった記憶は自分の主が死去した際にぽっかりと空いた心の穴と共に抜け落ちている。
今でこそ、その心の穴はフォルテの森で生きていく上で支障が出ない程度には表面上塞がっているが、今でも時々その穴がまた顔をのぞかせることがあった。
心の穴が顔をのぞかせる引き金は、スノーウィー自身にも分からず、気がつけば穴が現れていたということ珍しくはない。

「なんで先立っちゃうのよ」

今は亡き主にそう愚痴をこぼしていると、背後に何者かの気配がした。
慌ててスノーウィーが振り向くと、そこには他でもない最近この森へ良く来るようになった半分は人間だが、もう半分は自分と同じ竜族の匂いがする男ことゴルダと、その頭の上にいつも乗っているマティルーネという紫毛の竜だ。

「何か用?」

そっけない態度でゴルダに何か用があるのかとスノーウィーが聞くと、ゴルダはスノーウィー目線の辺りまでしゃがんでから

「会いに来るのに必ず理由がなければならないのか?あるとすれば少し話をしたいから来た」

会いに来るのに理由はいるのか?と疑問を投げかけた上で、理由をつけるなら話をしたいから会いに来たと話す。
スノーウィーはそれにむすっとした表情で

「あなた読めないから苦手」

ゴルダに読めないから苦手だと言い放ち、聞いてあげるから何を話したいのか言いなさいと上から目線の態度を見せる。
スノーウィーのその上から目線の態度にゴルダは何も言わなかったものの、マティルーネは

「何よその態度」

上から目線な態度が気に入らなかったようで、吐き捨てるように苦言を漏らした。
スノーウィーはそれを無視し、ゴルダに早く話してよという目線で見る。
それにせかされるように、ゴルダは冷凍イチゴを差し出してから

「お前の過去への迷いについてちょっと聞きたいことがある」

スノーウィーの過去と、それが原因の迷いについて聞きたいと切り出す。
それを聞いた瞬間、スノーウィーはゴルダからもらった冷凍イチゴをぽとりと地面へ落とす。
自分が死去した主への想いを捨てきれないことから来ている心の穴と迷い、それらをゴルダ見抜かれていることに衝撃を受けたのだ。

「それから一つ断言しておくが、俺が問題視しているのはお前の心の穴と迷いだ。亡き主への想いは捨てる必要はない、亡き者が恐れるのは忘れ去られることだ。忘れ去られた時、亡き者への完全なる無へと帰す。それが死者の完全なる死となる」

衝撃を受けているスノーウィーにゴルダはなおも話を続け、スノーウィーに主への想いだけは絶対に捨てるなということと、亡き者は忘れ去られる事を恐れることを話す。
そこでスノーウィーは、あることを自覚した。
自分が生きている限り、主のことを忘れてはいけない。主はまだ自分の心の中に生きている。
だが自分が主のことを忘れてしまえば、心の中に生きる主は無へと帰してしまうということを。

「だがしかし、想いを忘れずして過去と決別するのは難しい話だ。そこで聞きたい。スノーウィー、お前は主の死で何か後悔していることはないか?誰かが死ぬことで、それを引きずる者のほとんどがその死んだ者のことで何かやり残したことなどがあることが多い」

また冷凍イチゴをスノーウィーに差し出し、マティルーネにはニンジンを、自分は得体のしれない木の実をかじりながらスノーウィーに主が死去した時にやり残したことはないかと聞く。
だが、そのゴルダの問いは無理に答えなくてもいいという慈悲を込めた物言いにも聞こえた。
再び差し出された冷凍イチゴを頬張りながら、スノーウィーは自分の心の穴と向かい合おうとする。
だが、心穴をのぞいた瞬間得体の知れない何かが穴の奥底から出てきた気がしてスノーウィーは思わず飛び上がり、若干涙目になる。

「向き合うのが怖いのよね、自分の心の穴と。大丈夫、ゴルダは無理に向き合わせようとはしないから」

それを見たマティルーネは、ゴルダが何か言う前にスノーウィーの側へ行き、なだめる。
ゴルダと長い間居たためか、マティルーネはこのようななだめ役などを率先して買って出ることが多い。

「ありがとう…優しいのねあなた」

「優しさで誰かを救えるならたやすいことよ」

この一件以降、マティルーネとスノーウィーの距離は一気に縮まり、ゴルダとの関係も若干良くなったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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