氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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夜のフォルテの森で

昼とは打って変わり、幻想的な月明かりに照らされたフォルテの森。
鳥たちは眠りに就き、今この森で起きているのは古くからこの森に住まう尾が蛇のフクロウのフォルテと、精霊のバウムくらいだろう。

「実に美しい月だ。そうは思わないかねバウム?」

バウムの住む巨木がある部分だけは空が見えるほどにぽっかりと穴が開いており、昼は柔らかな日の光、夜は幻想的な月明かりが顔を覗かせる。

「そうですな、しかし空が淀んでいる世界ではこのような光景は幻も同然」

何かを気にするようにバウムは同意する返事を返す。
バウムが何を気にしているのかというと、座っているバウムの腹の辺りに1人のエルフと、緑毛のカーバンクルがもたれかかっているのが見える。
そう、他でもないアルガティアとイファルシアだ。
なお、ゴルダも一緒に来ているがフォルテの隣に座っているのでそこにはいない。
なんとなく3人を連れてやって来たゴルダだが、アルガティアがバウムのことをどういう意味でかは分からないが気に入ったらしく、日が暮れてもこのままの状態で動こうとしないのだ。

「暗くなる前に帰りたまえとは言ったが、無駄だったようだ」

「ああなると簡単には動こうとしないからな」

いつの間にか狩ってきたネズミをついばみながら言うフォルテに、ゴルダはアルガティアはあのようになってしまうと簡単には動かなくなると話す。
フォルテはそれに困ったものだよと返し、またネズミをついばみに戻る。

「今日の月は下弦だね」

「そうは言われても、私はあまり月のことは詳しくないな」

「じゃあ星は?」

バウムの頭の上で月を眺めるフィルスの呟きに、バウムは自分は月に関してはあまり詳しくないと苦笑いしながら言う。
月については詳しくないと返したバウムに、フィルスは今度は星は分かるかと聞く。
バウムは一瞬月を眺めるのをやめ、ふうと大きく息を吐いてから

「星なら少しは分かるよ。フォルテに教えてもらったからね」

フォルテに教えてもらったので少しは分かると返して、木の上に居るゴルダとフォルテを見る。
ゴルダは何をするわけでもなくただ夜空を見上げており、フォルテは食事の最中だった。

「うーん」

一方、ずっとバウムの腹の辺りにもたれていたイファルシアは大きく伸びをして特に理由はないがバウムの腹を小突く。

「こら、私の腹を突くんじゃない」

バウムはすぐに突かれたことが分かったのか、顔をこちらへ向けずにイファルシアを咎める。
咎められたイファルシアは、ちぇっとつまらなさそうにまたもたれかかった。

「もふもふ、ふかふか」

一方アルガティアは、時折バウムの体毛を揉むように触る以外は特に何もせずにもたれたままだ。
最初こそはバウムの肉球を触って咎められたが、アルガティアの放出している魔力とバウムの放出する何かが互いに心地のいいものらしく、こうしてもたれたまま動こうとしないのだ。

なお、ゴルダはこれをバウムが放出する想いの力とアルガティアの魔力何らかの原因で相互反応を引き起こして、二者間限定の癒しの力を生み出していると見ていた。
なお、この仮説はフォルテもフィルスも支持しているものである。

「ごちそうさま。おや、まだ一国の女王様はお帰りではなかったのか」

狩ったネズミを食べ終えてゴルダの方へ向き直ったフォルテは、少しばかり心配そうに言った。
いくら癒しの力を生み出しているとはいえ、ここまで長時間居座っているのはよろしくないとフォルテは思って言っているのだ。

「悪いな、そろそろ俺も帰りたいがアルガティアがあの様子ではまだ無理なようだ」

ゴルダのその言葉に、フォルテは 参ったなとだけ返してアルガティアに視線を移す。
相変わらずアルガティアはバウムの体毛を揉むようにもふもふしており、帰ろうという意思が感じられない。
さすがにバウムも困っているようで、どうにかならないかとフォルテに目で訴えている。

「これはどうにもならんな、そして俺も眠くなってきた。しばし寝かせてもらおう」

そんなバウムとフォルテをよそに、ゴルダは木から飛び降りてバウムの後ろ足を枕代わりにして寝てしまう。

「寝ちゃったね」

「そのようだ」

「私はもう一狩りしてこよう」

フィルスがゴルダが寝てしまったのを見てそう呟くと、バウムは困った様子でそのようだと答え、フォルテはもう一狩りしてくると言ってどこかへ飛び去った。

そしていつしか気づけば、バウムもフィルスもイファルシアもアルガティアもゴルダも、ゴルダを除いて熟睡していた。
夜空の月は、バウムたちを見守るわけでもなくただ夜を照らすためにそこに存在していた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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