氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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双と聖の竜、それぞれの出会い

ある日、ゴルダの元に謎の青年が訪ねてきた。
特に危険な雰囲気がするわけでもなければ、その素性すら不明である。
頼みごとがあるというので、依頼だろうと思って話を聞いてみれば

「シアに会わせてほしい」

と言われた。
ゴルダはそれにそうかと答え、そんなことなら俺に依頼するまでもないのではないかと思いながら続けろという目線を青年へ送る。
なお、この青年の名はウェインというらしい。
どこの世界から来たのかなどは一切話してはくれないものの、そっちの気があることは十二分に伺えた。

「シアにか、特になにかしでかすような感じはしないから会わせることに関して問題はないが。こちとら何でも屋の仕事をしている以上、それに対価を示してもらわんと困るぞ」

そしてゴルダは、ウェインに依頼をする以上は対価を示してもらわないと困ると話す。
なお、それに対しウェインは対価の話だろうかこんなことを言う。

「あんたのこと、調べてないわけじゃないぜ?調べたうえでこうして依頼を持ち掛けているんだ。そう、あんたが竜の医者をしていることも、第三者に対してほとんど医学的な興味しか持たないこともな」

「よく調べているようだな、それでお前が示す対価とはなんだ?」

ゴルダは俺もさほど暇じゃないという意思表示なのか、何度か足を組み替えながらウェインに言った。
ウェインはそんなゴルダの意思表示を察して

「実はシアに会っている間、俺の友達の相手をしてもらおうかなと思ってな。もちろん竜だぞ?」

シアに会っている間、自分の友達の相手をしてほしいと対価を切り出す。
確かにウェインの友達、しかも竜が相手であればゴルダの興味を満たすには事足りる相手であろう。
ようやくウェインから対価を聞き出したゴルダは頷いてから

「よし、いいだろう。お前の依頼を受けるとしよう」

依頼を受けようとウェインに言ってソファから立ち上がる。
その際、頭上のマティルーネがずれ落ちそうになったがどうにか持ちこたえたのでゴルダは全く気にも留めずウェインと家を後にする。

そして場所は変わってシアの塔の真下。
ゴルダはここでウェインに

「このまま中の梯子を上っていけばシアのいる頂上までいける。そしてお前の友達とやらは塔の近くの森にいると」

「そうだな、多分すぐに見つかるはずだ」

シアはこの塔の頂上にいることを説明し、ウェインの友達が塔の近くの森ことを確認した上で後は勝手にシアと楽しめと言わんばかりにその場を去る。
一人残されたウェインは、なんだかなと思いつつも言われたとおりに塔の内部にある梯子を上ろうとした。
だが梯子に手をかけた瞬間、ウェインの体がふわりと持ち上がりそのまま頂上まで持ち上げられてしまう。

「何なんだこの仕掛けは」

あっという間に塔の頂上へと着いたウェインは、服の埃を払って辺りを見回す。
頂上はそこまで広いというわけでもなく、隅のほうに中が丸見えの倉庫かなにかと思わしき建物があるくらいだ。
そして、ウェインが今いる場所から十数メートルほど離れた場所に白毛の角が4本ある竜が昼寝をしていた。
寝ているためにこちらには気づいていないらしく、近づいても問題はなさそうである。

「本当に大丈夫か?」

ウェインは訝しみながらも、シアと思わしき寝ている竜へと近づく。
遠目からはよく分からなかったが、近くで見るとかなりしっとりしている毛であることが分かった。

「触ってみるか」

ウェインはそう言って、シアと思わしき白毛の竜にそっと手を触れる。
手触りはやはりしっとりしており、いつまで触っていても飽きない感触だ。
最初こそはただ手でその毛を梳いていただけだが、次第にその毛の中に体を埋めたい願望が湧いてきたかと思えば

「もっふり…」

四の五を言わずに白毛の竜の毛の中へ全身を埋もれさせていた。
その影響でその白毛の竜が目を覚ましたとも知らずに。

一方ゴルダは、塔の近くの森の中でウェインの友達を探して歩き回っていた。
だが、かれこれ一時間半近く探し回っているがどこにもそれらしき姿どころか、竜の気配すら感じない。
一応この森には野生の竜が生息しているのだが、ゴルダは竜族の感知対象を異界の竜族のみに絞っているのでそれらの竜族は感知しないのだ。

「はて、どこにいるんだ?まさかとは思うが」

「嘘言うような感じはしなかったんだけどね」

嘘の情報をつかまされたか?と疑い始めたところでマティルーネがウェインからはそんな気はしなかったと返す。
それにゴルダは確かにそうだなと返し、気を改めてウェインの友達探しを再開。
するとその後五分足らずでゴルダの感知に何かが引っかかった。

「この気配、何なんだ?二つなのか一つなのかはっきりしない反応だが」

顎に手を当てて思慮にふけていると、突如ゴルダの目の前に反応の主と思われる竜が現れる。
初見でもその容姿の異様さにすぐ気付く者もいるだろうが、この竜、体は一つしかないのに気配が二匹なのだ。
どういうことなのかと思いがちだが、よく見れば左右で姿が違うのが分かる。
おそらく、双竜と呼ばれる類の種族だろう。

「おや?」

「あら?」

白と黒の双竜はゴルダを見るや、興味深そうな視線を投げかけてくる。
それに対してゴルダは一瞬剣に手をかけてマティルーネを守るかのような素振りを見せたが、双竜は襲う気はないと言わんばかりに目線をゴルダの顔の辺りまで下げて

「お前がウェインの言っていた人間か?」

「あなたがウェインの言っていた人間ね?」

二人同時に話すのでどっちが話しているのかが分かりにくかったゴルダだが、この双竜はどちらも性別が違うようなので声の高さが違っていたので容易に判別できた。
こういったタイプの竜族を今までに見たことがなかったゴルダは、ウェインがどうやってこの双竜と知り合ったのかが気になってきた。

「ところでお前、名をゴルダと言ったか?」

「あなた名前、ゴルダだったかしら?ウェインから聞いているわ」

相変わらず双竜が同時に話すので、ゴルダは双竜に

「確かに俺はゴルダだ。そして頼みがあるんだが、話す時はどちらか一方だけが話してはもらえないか?同時に話されると分かりにくくてな」

名はゴルダで当たっていることを告げた上で、双竜に話をするときはどちらか一方だけにしてくれるように言う。
すると双竜はこれは失礼と言わんばかりに、スッと白い方が消えて黒い方だけが残る。
かつては人を食っていたような雰囲気を出しているが、今は落ち着いているようだ。

「これでいいか?っと、俺はバーンだ。よろしくな」

「ゴルダだ」

名をバーンと名乗る。
ゴルダは黒い方ことバーンにいつもの調子で名乗り返し、その場に座った。
バーンは座ったゴルダを見てふっと笑うと、スッと消えて白い方と入れ換わる。
白い方はバーンとは違って人を食らっていたというような雰囲気は感じられず、慈悲と母性にあふれた雰囲気をしているがその目からは昔は人間のことをあまりよろしく思っていなかったことが伺える。

「ふふっ、ウェインから話はいっぱい聞いているわ。竜のお医者さんなんですってね?私はハーレインよ」

白い方はハーレインと名乗り、バーンよりもゴルダとマティルーネに興味を持っているようでその頭をかなり近くまで近づけてきた。
ゴルダもマティルーネもそれにはさほど驚かずに、ハーレインの頭を撫でてやる。
ハーレインはゴルダに頭を撫でられて

「んふふっ」

と笑い、軽く頭突きをしてくる。
その頭突きが存外強かったのかどうかは不明だが、頭突きでゴルダはその場で転倒しかけたもののどうにか持ちこたえた。
ゴルダが倒れかけたのを見て、ハーレインは思わず

「あらあら、ごめんなさいね」

ゴルダに誤り、その顔を舐める。
顔をなめられたゴルダは、少々渋い顔をしながらもハーレインの頭をまた撫でて

「ハーレインはかわいい奴だな」

と言ってまた顔を舐められたのであった。

その頃、ウェインはというと白毛の竜ことシアが起きたことも知らずに夢中でもふもふしている最中だった。
シアの方は、片目を開けてウェインをじっと見ているものの相変わらず気づかれていない。
そこで、シアはそっとウェインの背を尻尾でトントンと叩いてみることに。

「うー…ん?やっぱりもふもふだな」

だがウェインはそれに気づかず、シアの腹のあたりの毛に完全に全身を埋めてしまっている。
ここまで来ると、シアも少し手荒な手段を講じざるをえないと判断したのか、ウェインの体に尻尾を巻きつけて毛の中から引きずり出し、自分の眼前まで連れてくる。

「もふもふするのはいいけれど、挨拶くらいはして欲しいものね。ウェイン?」

「えーっと、その…」

シアに眼前へ連れてこられ、ウェインは顔を赤らめながらうつむく。
どうやらかなり恥ずかしいようだ。

「私は触られるのは構わないスタンスだからどうでもいいのだけれど」

解放されはしたものの、シアの目に射止められているウェインはただただ顔を赤らめたままシアを見つめることしかできない。
シアはそれに対しては特に問い詰めることはせず、慈悲深い目で見つめながらウェインの方から話すのを待っていた。

だが、ウェインはシアの慈悲深い目線の虜になったのだろう。
その目をじっと見据えたまま何も話さず、そっと寄り添うだけであった。

そしてその一方でゴルダは何をしているのかと言うと、ハーレインの頭にマティルーネを乗せて自分はハーレインをまじまじと観察中。
バーンと比べてとっつきやすいのか、マティルーネがハーレインに懐くのにそこまで時間はかからなかった。

「対応魔力不明、エーテルへの耐性はそれなり。そしてシアに匹敵する母性と慈悲深さ、属性は不明」

ぶつくさ言いながらメモをしていくゴルダを、ハーレインは目線だけでそれを追う。
変なことをするような人間ではないことは理解しているのだが、どうしても何をしているのかが気になるのだ。

「ふふっ、そんなに私が珍しい?」

頭に乗っているマティルーネを落とさないように頭を下げ、ハーレインはゴルダに問う。
だがゴルダはそれに答える時間すら惜しいのか、問いには答えずにハーレインの前足の爪をコツコツと叩いて何かを調べ始める。

「ちょっとくらいは話をしてほしいんだけど、ダメかしら?」

ハーレインのうるうるしたその口調にゴルダは一つ大きく深呼吸をしてから

「珍しいと言えば珍しいな、この手のタイプの竜は幻想生物学の本でしか見たことがない」

珍しいと言えば珍しいともっともらしい返事を返して、どこからか出したブルーベリーのソイジョイを食べ始める。
微妙に原材料が違うが、ソイジョイはこの世界でも販売および生産されているという。

「あなたが医者になった理由を聞いても?」

ソイジョイを黙々と食べるゴルダに、ハーレインは気になっていたのよと言わんばかりに聞く。
なお、バーンは完全にハーレインに体を預けたままで出てくる気配がない。
おそらく、自分が出てくればマティルーネが警戒してしまうからだと判断したからだろう。

「俺が医者になった理由か、少しばかり長くなるがいいか?」

「ええ、ぜひ聞かせて?」

医者になった理由を長くてもいいので聞かせてと言いつつ舐めてきたハーレインにまた渋い顔をしながら、ゴルダはルライエッタに家庭教師をしてもらっていた時の話を始めた。
それが一番ゴルダが竜医を目指すきっかけとなったからである。

「そう、複雑な過去があったのね」

「だが俺は今を楽しんで生きているぜ。過去を悔やむよりも、未来を憂うよりも今をどう生きるかだ」

その頃ウェインは、まだ顔を赤らめながらも自分についてシアに語り終えたところだった。
シアはそれを子供の空想話を聞くかのような感じで黙って聞いていた。

「やっぱりシアさんは美しいな」

「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」

ウェインはお世辞ではなく本気で言ったのだが、シアがそれをどちらの意で汲み取ったかは不明である。
ウェインはシアが嬉しそうにしているのを見て大きく欠伸をしながら伸びをする。

「眠い?」

「少しね」

眠いのかと聞かれたウェインは、少しばかりと答えてシアの前足の辺りを撫でる。
するとシアはウェインを尻尾で腹の辺りに引き寄せて

「寝ていいのよ、私ももう少し昼寝するわ」

どこからか落ち着く匂いを出しながらウェインに言う。
その匂いにウェインは、あっという間に眠りに落ちてしまった。
シアの聖母のごとき表情を見ながら。

「そう、そうなのね」

「稼げるからとかそういう理由じゃない。俺は純粋に知的探究心から竜医になった」

ウェインが眠ってしまった頃、ゴルダもハーレインに自分が竜医になった話を聞かせ終えていた。
純粋な知的探究心から竜医になったことを聞かされて、ハーレインはどこか安心していた。
そして確信した、この人間ならウェイン同様信じてもいいと。

「あなたなら信用するに値するかもね。ウェインが興味を持つ理由も頷けるわ」

ずっと頭の上に居座るマティルーネを気づかいかながら、ハーレインはゴルダの頬にそっとキスをする。
唐突にハーレインにキスをされたゴルダは、疑問を持った目で

「これは心から信頼している相手だけにする行為じゃないのか?」

などと聞く。
ハーレインはそれにはこうとだけ答える。

「あなたがウェインと同じくらい信用できると分かっての行為よ」

ゴルダはそれに

「そうか」

とそっけない返事を返し、またハーレインに舐められた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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