氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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師匠と弟子と

最近リフィルでは異界からの留学生などが増えたことにより、微妙にアルガティアの仕事が増えている。
普通は書類と念写されてきた写真だけで最終的な入国などの許可を下すか否かを決めるのだが、まれにアルガティア自ら会って話をしてから判断する場合もあるという。
その際は必ずフィルスが補佐について判断するのだが、それでもリフィルへの入国や王立大への留学を却下した事例は今のところない。
そして今日も、アルガティアが直々に会って判断を下す必要のある入国者がやって来たようだ。

「この獣人がそう?」

『シュトラーレン=ナハトグランツ』と名前の書かれた書類と、細目で笑みを浮かべて杖を持つ三毛猫の獣人の念写写真を見てアルガティアは入国管理官に尋ねる。
自己申告書類では何ら問題はなかったのだが、リフィルに来た理由を

「王立大に留学中の弟子に会いに来たのよ」

の一点張りで具体的な理由を話してくれないので、アルガティアにどうにかしてくれないかと頼んできたのだ。
無論、アルガティアはこれに二つ返事で了承して本人をここへ連れてくるように命じる。

「ルーエに雰囲気が似ているのよね、あの子もここへ連れてきて」

さらにアルガティアは、シュトラーレンがルーエと同じ雰囲気を放っているとして、ルーエも連れてくるようにイファルシアに命じた。

「なんだか嫌な予感がするんだよなぁ」

イファルシアがルーエを呼びに行ったのを見て、フィルスはそう呟く。

それからおよそ一時間後。
入国管理官の代理が、例の三毛猫獣人を連れてアルガティアのところへやって来た。

「どうぞおかけになられて」

「何か悪いことでもしたのかと思いましたが、私の誤解だったようですねぇ。失礼します」

三毛猫獣人こと、シュトラーレン=ナハトグランツは杖をテーブルにもたれさせるように起いてから椅子に座る。
色までは判断できなかったが、オッドアイのようで、三尾であることも確認できた。

「リフィル国王、アルガティア=リフィル=ライラです。手数かけさせてごめんなさいね」

「書類でお名前はお知りかと存じますが、シュトラーレン=ナハトグランツです。手数かけさせられいることは気にしてないので大丈夫ですよ。ところでそちらの青い毛のカーバンクルは?」

一通り互いに名乗り合い、さて話を始めようかという時になってシュトラーレンは自分の書類に目を通しているフィルスのことをアルガティアに聞く。

アルガティアはその問いに対しては一言だけ

「フィルスよ」

と答えてそれ以上は何も話そうとせず、従者の運んできた紅茶をシュトラーレンに出す。

「あまり熱いのは好きではないのですがね、元々の種族的には」

シュトラーレンはそんなことを言いつつも、出された紅茶を飲む。
そしてシュトラーレンが紅茶を口にした瞬間、イファルシアがルーエを連れて戻ってきた。
治癒魔法演習がどうだなどと言っている辺り、講義の最中に呼び出されたようだ。

「おやおや、その声はルーエではないですか」

「あっ、師匠!」

ルーエがぶつくさ文句を言っているのを聞いたのか、シュトラーレンは振り向かずにルーエに話しかける。
するとルーエは、その後ろ姿と声からすぐにシュトラーレンと分かったようで、その隣に座って師匠と声をかけた。

「思った通り、あなたとルーエは師匠と弟子の関係だったのね」

紅茶片手に言うアルガティアにルーエはてへへと笑いながら

「師匠はボクに星の魔術を継がせてくれた、ただ一人の存在だよ」

シュトラーレンが自分に星の魔術を継承してくれたと話し、それに同意を求めるかのようにルーエはシュトラーレンに期待するような視線を投げかける。
シュトラーレンは程よく冷めてきた紅茶を一気に飲み干してから軽く縦に首を振っただけで済ます。

「師匠ー、何か言ってくださいよー、師匠ってばー」

それを今の今まで黙って見ていたイファルシアは、唐突に真顔で

「師匠にべったりなのね、そこまでの関係を持てるなんていい意味で呆れるわ」

そこまでの関係になれるのはいい意味で呆れるとまだ熟しきっていないシークワサーを食べながら言い放つ。
そのイファルシアの言葉にアルガティアはふふっと笑い、シュトラーレンはそうでもないとやや口角を下げ、ルーエにいたっては

「そんな言い方ないじゃないですかっ!師匠もそう思いますよね?」

またシュトラーレンに同意を求める目線を投げかけながらイファルシアに反論したが、シュトラーレンは

「紅茶のおかわり、いただけませんか?それと大きく話が逸れている気もしますが」

紅茶のおかわりを求め、話が逸れていないかとアルガティアに聞く。
だがそれにアルガティアは、入国および滞在許可書をどこからか取り出して署名してから国章印を捺印して

「あなたがルーエの師匠と判明した以上、何も言うことはない。これは入国とルーエの寮の部屋への滞在か宿への宿泊と滞在を許可する書類。ようこそリフィルへ」

それをフィルスにチェックさせてからシュトラーレンへと渡す。

「ありがとうございます」

それを受け取ったシュトラーレンは、今までに見せたことのない笑みを浮かべた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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