氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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異界留学生はカーバンクル?

ある日、ゴルダにアルガティアからこんな手紙が時雨を通して送られてきた。

「王立大学に今年度から留学に来ているカーバンクルの留学生が、体調不良を訴えてきていると大学の医務室から連絡があった。フィルス達の専属幻想獣医は休暇中だから派遣できないの。あなたで診てもらえないかしら?」

それは、たまにあるリフィル王立大学の異界留学生を診てくれという依頼だった。
この世界の大学は国立しか存在せず、私立大学という概念がない。
そのため、大学の規模は地球のそれよりもはるかに大きく、各学部学科の定員も桁違いだ。
それゆえに、地球どころかそれ以外の世界からの留学生も種族を問わず多い。
そして問題になってくるのが、人あらざる種族の健康を守れる医者の確保である。
そのため、人あらざる種族を診るために、セイグリッドやリヴァルス、ドランザニアはそれぞれ大学専属の幻想獣医師を抱えているが、なぜかリフィルだけは王宮のフィルスやエゼラルドの専属医をことあることに派遣している。
そのため、専属医が休暇中だったりするとこうしてゴルダに白羽の矢が立つのだ。

「やれやれ、前から大学専属の幻想獣医師を置けとアドバイスしているんだが」

時雨が帰った後、ゴルダはそうめんどくさそうに呟きながらリフィルへ行く準備をする。
するとそこへミリシェンスが

「私も行くわ、同族ってのが気になるし」

自分も行くと言い出す。
それにゴルダはさほど問題はないだろうと判断して

「分かった、ならついて来い」

とだけミリシェンスに言って自分はまた手紙を読んで症状を把握しにかかる。
手紙には、魔力制御および倦怠感と時々めまいと医務室の担当者の手紙が別途添えられていた。

「この症状から想定するに、魔力酔いのが最有力候補だな」

魔力酔いとは、体内に魔力を宿す者が自分の住んでいる世界とは別の世界へ行った時に稀に発症するものである。
同じマナやエーテルでも、その細い特性などは世界によって違ってくる。
通常はその世界の魔力に体内の魔力が適合するようになるのだが、何らかの原因でそれが上手くいかず、競合状態になってしまうことがある。
そうなってしまうと、魔力制御ができなくなったり、体調不良を引き起こし、最悪死に至ることすらある恐ろしいもの。
治療法としては、薬で徐々に競合を弱めてこと適合させるか、適合魔法で競合状態を解消させて適合状態にさせるというものがある。

「どっちがいいかはこれだけでは判断できんな」

そう呟きながらゴルダは頭の上のマティルーネを撫でながらミリシェンスの用意が終わるのを待つのだった。

それから数時間後。
ゴルダはマティルーネとミリシェンスを連れてリフィル王立大学へとやって来ていた。
リフィル王立大学は、王宮からそこまで離れてない場所に位置し、規模は地球の大学の平均的な規模と同程度。
魔法系の学部学科が過半数以上を占め、魔法系ならリフィル王立大と言われるほど。

「さて、医務室はどこだ?」

ゴルダが大学の見取り図から医務室を探していると、ミリシェンスが

「目の前の棟みたいね、本部棟」

本部棟だと教えてくれたので、そのまま本部棟へと向かう。

「この時間は1日の講義の半分が終わった感じだな」

「みたいね」

学生でごった返す廊下を歩いていると、右手に「医務室」というプレートが打ち付けられた部屋を見つけた。

「ここか」

「のようね」

ゴルダ達は有無を言わさず、医務室へと入った。

「あー…えーっと、アルガティア様から言われて来られた方ですか?」

この医務室の担当者と思わしきエルフの女性に聞かれて、ゴルダはそうだと即答。

「ベッドで休んでますので、あとはお任せします」

「どうも」

ゴルダは担当者にそう返してベッドの方へ。
やたらベッドの数が多く、大きさも様々なのはやはり様々な種族がこの大学に居るからだろうか。
人が寝るには一回り小さいベッドの前まで来たゴルダは、ミリシェンスにカーテンを開けさせる。

「寝ているようだが、起こすか?」

寝ているのは確かにカーバンクルではあったが、どちらかというと亜人に種族が分類されるカーバンクルであった。
なぜかというと、パッと見た限りでは体型が本来の幻獣族のものではなく、獣人などの亜人族ものだったからである。

「起きるまで待ちなさいよ」

「それもそうだな」

まだ名も分からぬぐっすりと寝ているカーバンクルの側で、ゴルダ達は本人が起きるのを待った。
その間にゴルダは診察眼で状態を調べてみたが、まだそこまで魔力酔いは重症化はしていないようであった。
なので弱めに調合した薬を飲んでいれば1週間くらいでは治るだろうと判断する。

「ふみゅ…」

それからどれくらい時間が経っただろうか。
ミリシェンスは眠りこけ、ゴルダは前にフィルスから借りたウクライナの魔女伝説に関する本を読んでいた。
どうやら当人がようやくお目覚めのようである。

「頭くらくらするー…」

上半身を起こし、ふらつく頭を抱えながらそのカーバンクルはゆっくりとゴルダの方を見やる。
なお、ゴルダは本に視線を落としており、こちらに気づいているかどうかは分からない。

「あのー…?」

数分の沈黙のあと、どうにかふらつきが治ったカーバンクルは本を読んでいるゴルダに声をかける。

「おっと、目が覚めたか?お前が起きるのを待っていたんだ。あと俺は医者だ」

ゴルダは本を閉じ、俺は医者だと言った。

「お医者さんかぁ、呼んでくれたのかな?あっ、ボクはルーエです」

ゴルダが医者であると分かると、カーバンクルは自らの名をルーエと名乗る。
そしてそれに呼応するようにゴルダも

「ゴルダだ」

と名乗り返す。
そしてその後は、互いに察した上で診察が始まる。
その間、ミリシェンスもマティルーネもぐっすりだったが。

「魔力酔いという、この世界の魔力とお前の体内の魔力の噛み合いが上手くいかずに競合している状態だ」

「それってまずいの?」

自身が魔力酔いを患っていると聞かされて、ルーエはゴルダにそれはまずいのかと問う。
それにゴルダは、ルーエの核石をちらっと見てから

「まだそこまで危なくはない。薬でどうにかできるレベルだ」

薬でどうにかなる状態であることを説明し、どこからか魔力酔いの薬を出す。
やけに色とりどりな色をしているが、それは使っている素材が素材なためである。

「ふみゅ、変な味ぃ…」

ゴルダから薬を受け取り、そのまま飲んだルーエだが、今まで味わったことのない味に渋い表情になる。

「効く薬は基本的にまずいものだ」

そう言ってゴルダはルーエに水を渡す。
ルーエは渡された水を一気に飲み干しし、ゴルダの隣で寝ている青紫の毛の同族のミリシェンスに目線を移す。

見た限りでは属性の判別はできないが、少なくとも自分より格上の同族であることは確かだ。

「あの、その子は?」

ルーエは、ゴルダにミリシェンスのことを問う。
するとゴルダは

「俺のところに住んでるカーバンクルで、ミリシェンスという名だ。水と草と月の三属性のな」

ルーエにミリシェンスを紹介する。
すると、その声でミリシェンスが目を覚まし、5分ほどルーエをじっと見つめながら

「属性不詳といったところかしら?魔力は…それなりね、修行でもしてる?潜在魔力が大幅に引き出されてるようだけど。それはそうと私はミリシェンスよ、同族の話を聞いてついて来たわ」

ルーエを一通り観察した結果を話した後で、名乗った。
観察されていたことに対してルーエはどこか不服気な顔をして

「よろしく」

とそっけない返事を返した。
そのそっけない返事に、ミリシェンスはやめた方がよかったかしらと言わんばかりの顔をする。

「あの、そろそろ医務室を閉める時間なのでお引き取り願えますか?」

ミリシェンスとルーエが何とも言えないムードになっていると、医務室を担当しているエルフの女性が医務室を閉めるので帰ってもらえないかと言ってきた。
それを聞いたルーエは、ゴルダ達に

「体調良くなったし、もう医務室も閉まるそうなのでボクの部屋行きませんか?」

自分の部屋へ行かないかと申し出てきた。
おそらく、自分が住んでいる部屋へ行かないかということだろう。
それにゴルダは二つ返事で了承し、医務室を出てルーエの部屋へ向かう。

ルーエの部屋は大学敷地から少し離れた学生寮棟の1つにあり、5階建ての寮の2階にあった。
それなりに広い部屋ではあったが、部屋の大部分が魔法書や呪文用紙などで埋め尽くされているあたり、さすがは魔法科の学生といったところだろうか。

「狭いけどどうぞ座って」

ルーエは机のそばに杖を置き、ベッドの上に腰掛けながら言う。
それにゴルダは軽く頷くとマティルーネを膝に置いて床へと座り、ミリシェンスはその場でふわふわと浮遊したままになる。

「専攻属性は?」

どこから出したのかはいざ知らず、淹れたれの緑茶を湯呑からすすりながらゴルダはルーエに聞く。
その問いにルーエは、物体移動の魔法で本の山から一冊の本を取ってゴルダへ渡す。
渡された本はこの世界の言語で書かれているものではなかったが、翻訳魔法さえ使えば読めるものだったので読んでみると

「正の魔法-基礎編」

と読めた。
正の魔法がどういう属性なのかは不明だが、つまりそういうものなのだろうとゴルダは

「そうか、なるほどな」

1人納得したように呟く。
だが、ゴルダが完全には納得していないと感じ取ったのか、ルーエは

「正の魔法はこの世界でいう聖属性が一番近いかな、それ以外に水と草。生命の始まりにかかわってくる属性のことだよ。負の魔法はその逆で生命の終わりにかかわってくる属性」

正の属性について説明すると同時に、その逆の負の属性についても説明する。
なお、それを横で聞いていたミリシェンスはルーエに

「判然としなかったから属性不詳としていたけど、そういうことだったのね。よく分かったわ」

と言って、ルーエにかなり強い魔力が宿っているであろう柘榴石を渡す。
ちなみに、どこで手に入れたのかは不明である。

「これは?」

柘榴石を受け取り、ルーエはミリシェンスに聞く。
するとミリシェンスはこう答えた。

「お近づきの印、それからあなたの属性に合っている合っているからよ」

「うん、ありがとう。何かに使えるかもしれないから大切にするよ」

何とも微妙な関係になっていたルーエとミリシェンスの関係がごく普通になった瞬間であった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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