氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

未知の森の中で

どこに通じているかすら分からない空間の裂け目の向こうに広がっていたのは、見渡す限りの森だった。
人とその類の知的種族が立ち入った様子が皆無なその森は、聞いたこともない鳥の鳴き声が響き、澄みすぎて逆に毒になりそうなほどの空気が漂っている。

「なんとも妙な雰囲気だ」

今しがた通って来た空間の裂け目が閉じたのすら気に留めず、ゴルダはエーテルカウンターなどの計測機器を出して軽く計測をする。
だが、エーテルカウンターもマナカウンターも一切の反応を示さず。反応しているのは魔力波形と時空波形の計測機器が見たこともない波形を表示しているくらい。

「裂け目は消えたが、帰れないことはない。よし…始めるか」

そう言って、ゴルダは未知の森の中を歩き始めた。
そもそも、なぜゴルダがこんなことをしているのか?
それはほんの数日前まで時間は遡る。

「というわけなの」

「仕事を頼みたいから来いとサフィに呼び出されて来てみればこれか」

シアから仕事を頼みたいから来いと言われてゴルダが行くと、とある空間の裂け目の向こうにある世界の調査をして欲しいという仕事を頼まれる。
ここ最近、大陸のあちこちで空間の裂け目が出現し、アルカトラスとシアはエーヴィヒと協力してその位置を把握して塞ぐという仕事に追われていた。
ほとんどの空間の裂け目は、関わりのある世界と繋がっていることが多かったが、中には全くの未知の世界へと繋がっているというイレギュラーな空間の裂け目も存在しているのも事実である。

「だからと言って、俺に頼む理由にはならないだろうが」

「いいえ、あなたじゃないと無理な仕事なのよ」

シアがそう言うのには、理由がある。
そのイレギュラーな空間の裂け目は、非常に不安定なものが多く、入ってしまえばその裂け目は消える。
つまり、帰って来れないリスクがあるのだ。
世界と世界を行き来する魔法があれば帰って来れないこともないが、使い手は非常に少ない。
そこでシアは、一応その手の魔法が使えないわけではなく、身近にいるゴルダにこの仕事を頼んだのだ。

「どのみち拒否権はない、行くとするか。それで、その行って欲しい世界と繋がっている空間の裂け目はどこにある?」

どう転んでも引き受けなければならないことを理解していたゴルダは、やれやれと言いながらも了承し、その裂け目の場所を聞く。

「場所?城の近くの森の中よ」

後は頼んだわと言わんばかりに、時の鍵という繋がりのない異世界へ行った時にこの世界へ帰って来るための魔道具を押し付けて、シアはゴルダを忙しいからと追い払う。

「見返りはそれなりにもらうからな」

そう言ってゴルダはその日は帰った。

その翌日。
城の近くの森へやって来たゴルダは数分で目的の空間の裂け目を見つけ、めんどくさそうにそれを見つめる。

「人1人が通れるくらいの大きさだな」

裂け目はそこまで大きいものではなく、人1人が無理なく通れる程度のものだった。

「うだうだしてても仕方ない。行くか」

やがてゴルダは覚悟を決め、その裂け目へ飛び込んだ。
向こう側の世界へたどり着く数秒間が、数分にも数時間にも感じられるような奇妙な時間感覚に襲われながらも、どうにかゴルダは裂け目を通り抜けることができた。

「鳥は鳥だが、なんとも丸っこい鳥ばかりだな」

そして時間は現在へ戻り、ゴルダは森の中を注意深く探索して回る。
やはり見かけるのは鳥ばかりで、しかも普通に見かける体型の鳥ではなく、全体的に丸い体型の鳥ばかりだ。

「本当に丸いなお前らは」

ふと目に入ったピンクの丸い鳥を見て、ゴルダはそう呟く。
そのピンクの丸い鳥は、ゴルダを見て

「だあれ…はっ!?」

何かを察したようなことを呟き、どこかへ行ってしまう。
それを見たゴルダは

「何なんだ?」

と首を傾げてさらに森の調査を続ける。
なお、この森はどこまで行っても日の光が程よく差し込み、とても明るい。
木の根が縦横無尽に伸びているせいで時折歩きにくい場所もあったが、ゴルダには苦にならないものだった。

「これはまた樹齢数百年レベルの木だな」

やがて開けた場所へと出たゴルダの目の前に樹齢数百年レベルの巨木が姿を表す。
周りに同じく生えている数百年レベルの木とは違い、あからさまな荘厳さを醸し出しているその巨木は、自分がこの森の主であるかのような主張をしているようにも見える。

「実に立派な木だ。他の木と違って」

そう呟きながらその巨木を触っていると、背後で何か重いものが地面に落ちた音がした。

何だと思い、ゴルダが背後を振り返ると、そこには濃い灰色の角と翼を持つ巨大な狼のような生物がこちらに強い警戒心を含めた視線を投げかけていた。

「汝、この森に何用か?」

その生物に話しかけられ、ゴルダは正直に

「これはどうも、ちょっとこの森の調査をしているだけだ。森を荒らそうなどとは微塵も思っていない」

調査をしているだけだと答える。
するとその狼に似た生物は納得したようなしてないような様子で

「どういうことなのだミスティ?この人間は森を荒らそうとは考えてないと言っている。私自身もそれが嘘ではないことを感じ取った」

自分の側を飛んでいたピンクの丸い鳥に問いかける。
ミスティ呼ばれたその鳥は、慌てふためいた様子で

「だってバウ様。人間なんてバウ様のお話の中だけの存在だと思ってたんだもん」

ミスティの言い訳に、バウと呼ばれた狼に似た生物は

「私がいつ人間は実在しないと言った?今こうして目の前に居るではないか」

前足でゴルダを指しながらミスティに説教を始めた。
そして放置されたゴルダは、その場で持ってきた荷物の中に紛れていた緑茶を出してその場で正座して飲み始める。
その間にも、バウムはミスティに説教を続け、ゴルダのことなど眼中になかった。

「…分かったな?」

「…はい、バウ様」

やがてバウの説教が終わった頃には数時間が経過。
その間にゴルダは緑茶を飲み終え、バウとミスティをスケッチしていたりと、自由きままにやって時間を潰していた。

「すまない来訪者よ、名乗るのが遅れてしまって。私はこのフォルテの森の守護者にしてこの森に住まう精霊のバウムだ」

バウ改めて、バウムはゴルダに自らの名を名乗る。
それに応じるように、ゴルダも

「ゴルダだ。こことは違う世界から来た」

自らの名を名乗り返す。
その後、ゴルダとバウムは互いの世界ついて語り合い、次第に打ち解けていく。
やがてゴルダは、バウムの体に興味を移していった。
毛はゴワゴワではなくしっとりした質感。
角はよく見ると2対4本で、目は黄色かった。
そして何よりゴルダが気になったのはその足の肉球。
何となくだが触りたくなったので、そっとバウムの前足に手を伸ばしてみたが

「私の肉球をむやみやたらに触らないで欲しいな」

と断られてしまう。

「ま、当たり前だよな」

断られたゴルダはそう言って、バウムの腹の辺りを触る。
バウムは最初こそは嫌そうな顔をしたが、ゴルダの触り方が気に入ったらしく、させたいようにさせてくれた。

「どうせなら手入れしてやろうか?」

「客人にそのような真似はさせぬ」

どうにもバウムの毛がまともに手入れされていないことに気付き、手入れするかと聞くも、バウは客人にそんなことはさせないと断る。

「まさか客人扱いされるとはな」

バウムにもたれて完全にくつろぎながら、客人扱いされたことに納得がいかないようなことを言ったゴルダに、ミスティは

「バウ様がそういう風に接してくれているんだから甘んじなさいよ」

バウムがそういう風にしているんだから甘んじろと言い放つ。

「やれやれ」

こうしてゴルダの未知の森の調査は終わり告げた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |
| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。