氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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フィルスとメリエル

「ねえ」

「なんだい天才さん?」

「私の名前は天才さんじゃなくて、メリエルよ。意思飛ばして会話してくるのやめてくれない?」

ゴルダの家で、フィルスとメリエルがそんな会話を交わしている。
フィルスがゴルダの家へ来る事は珍しくはないのだが、メリエルとフィルスが一緒にゴルダの家に居るのは初めてのことだ。

「それは無理な相談だね。僕は声帯が生まれつき弱いから会話は意思を飛ばしてやるし、詠唱も無声詠唱だよ」

メリエルに意思を飛ばして会話をするのをやめてくれないかと言われて、フィルスは自分が生まれつき声帯が弱いのでこうしてしか会話ができないと理由を話した。
それを聞いたメリエルは、苦虫でも噛み砕いたような表情をしてフィルスにそれは知らなかったわと謝る。
なお、フィルスはメリエルに自分が説明してなかったのでおあいこだと返した。

「あらあら、仲がよろしいようで」

「何よその皮肉たっぷりな言い方は」

台所で黙々と菓子作りをしているゴルダをよそに、メリエルとフィルスに茶を淹れてきたミリシェンスの一言に対してメリエルは皮肉かと突っ込む。
メリエルに皮肉かと言われたミリシェンスは、微塵にも気にしていないような様子で3人分の茶をカップに注ぐ。
なぜ3人分なのかというと、マティルーネは紅茶などは飲まないからだ。
仮に飲むとしても、ゴルダかミリシェンス手製のニンジンジュースか水くらい。
それ以外は自分から進んで口にしようとはしないのだ。

「天才なんだから察すことぐらいできないの?」

フィルスとのやり取りを側で聞いていたマティルーネに刺さる一言を言われて、メリエルは

「いくら私が全世界期待の天才でもできる事には限界があるのよ。ゴルダみたいな観察眼に長けてるわけでもないし」

天才も万能ではないと逃げの台詞を吐く。
マティルーネはメリエルの返しにふうんといつもと同じ反応を示し、ミリシェンスにアイコンタクトでニンジンジュースをちょうだいと訴える。

「ちょっと待ってて」

マティルーネのアイコンタクトに気づいたミリシェンスは、また台所へと向かう。
なお、メリエルはミリシェンスが注いだ紅茶に手をつけながらフィルスを見る。
フィルスは何やら本を読んでいるようだが、その本の文字が幻獣語だったのでメリエルはタイトルを読むのをためらう。
それはなぜかというと、幻獣語には名詞や動詞などの他に、ドランザニア語やエルフ語にもある詠唱詞というものが存在する。
詠唱詞は、ドランザニア語とエルフ語には詠唱詞と名詞や動詞などと明確な区別の定義があるのだが、幻獣語にはそれがない。
そのため、ちょっとした挨拶だけでもそれ自体が呪文となって、詠唱と判断されてしまうことが多々あるため、幻獣語の習得はエルフ語などと比べてハードルが高いのだ。
だが、それでもメリエルはマティルーネと通訳を通さずに会話をするために幻獣語を1週間ほどで習得した。
だがそれでも、下手に幻獣語を読むのははばかられているのが現実なのだが。

「メリエル、この本のタイトルが知りたいの?『闇の応用魔法入門–月と星の属性』だよ」

じーっと自分が読んでいる本を紅茶片手に凝視しているメリエルに気づいたフィルスは、首輪の辺りを掻きながらメリエルに本のタイトルを教える。

「お、教えてもらうまでもなく読めてたわよ。ただ詠唱にならないか気掛かりだっただけで」

それに対してメリエルは、実は読めていたのよとドヤ顔でフィルスに言う。
だが、それは半分嘘である。
実際は『闇の応用魔法』までしか読めず、それ以降はああでもないこうでもないと頭の中で解読を試みていた。

「知識って、使わないと忘れていくものだよ?いくらメリエルが天才でもね」

知識は使わないと忘れていくものだと言われて、またもや刺さったメリエルはうぐぐと唸る。
それにマティルーネはメリエルの頭に乗って

「図星なの?」

と煽ってきた。
さすがに2人に強く言うことはできないため、メリエルは紅茶を飲んでその場をやり過ごす。
なお、この後メリエルはゴルダにまた別件で図星を突かれる事になったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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