氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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実家へ引っ越すかどうかの決断

しとしと雨の降る春先のある日。
ゴルダとミリシェンスは、食卓テーブルで互いに向き合って座っていた。
特に何か重要なことを話すわけでもなく、ただただ真剣な目付きで互いを見合い、静寂の時を過ごす。
だが、それも長くは続かなかった。
今まで沈黙を守っていたミリシェンスがゴルダにこう言う。

「もう一度だけ聞いていい?本気なの?」

「もう一度だけ答える。確定事項ではないと」

おうむ返しめいた会話が二者の間で生じた後、再び静寂が訪れた。
一体何があったのだろうか?
それは昨日にまで遡る。

「引っ越せだと?」

シアではなく、アルカトラスが呼んでいるというメールをサフィから受け取り。セイグリッドへやって来たゴルダ。
アルカトラスのところへ赴いた直後、ゴルダは単刀直入にセイグリッドへ引っ越さないかと聞かれた。
あまりに唐突な提案に、ゴルダはアルカトラスに

「何でまた引越しを勧めるんだ?」

その理由を問う。
理由を問われたアルカトラスは、書類を処理する手を一旦止めてゴルダの方を見るとこう言った。

「父方ではあるが、実家に居た方が何かと不便はしないだろう。それにバハムードとサマカンドラも汝と暮らすのを望んでいる」

実家に戻って来いという理由と、弟と妹が自分と一緒に暮らすことを望んでいるという理由。
だが、ゴルダはこの理由を聞いてもいいすぐに首を縦に振れなかった。
そもそも、自分とアルカトラスやバハムードにサマカンドラとは住んでいる世界が大きく異なっている。
生き方にせよ、生活の仕方にせよだ。
そのため、ゴルダはその場での返事を渋ったのだ。
無論、アルカトラスとてゴルダが住んでいる世界が違うことはよく理解していた。
それを加味した上であえて聞いたのである。

「すぐには返事が出せんな祖父さん」

ゴルダがしばらく考えて出した答えは、保留。
逃げているように見えて、そうにも見えないその答えにアルカトラスは軽く頷いて

「急ぎ答えを求めるものではない。よくよく考えて出した答えを聞かせて欲しい」

よく考えた末の答えを出すようにと言い、その日は帰した。

そして今日。
ゴルダはミリシェンスにその話を持ち出して今この状況に至っている。

「私が首を突っ込むことじゃないわ。あなたがどうしたいか、それだけよ」

やがて、ミリシェンスのあっさりした返答にゴルダはそれもそうだなと頷くと

「大方考えはまとまった。あとは祖父さんにどう話すかだ」

その日はミリシェンスとの話を終えた。

その翌日。
ゴルダはまたアルカトラスの所に居た。
だが、今日はサマカンドラやバハムードも同席している。
そう、決断を告げるためにだ。

「では汝の答えを聞こう」

淡々と言い放ったアルカトラスに、ゴルダはうむと頷いて口を開く。

「やはり一緒には住めない。理由は簡単だ。俺はあの場所とあの家が好き、それだけだ。そこまで周りに民家はなく、あるのは空き地や畑、そして森だけ。ミリシェンス達と静かに暮らすにはこれ以上最適な場所はない」

ゴルダが下した決断は、否だった。
その理由は、セイグリッドでは静かに暮らせそうにないから。
それを聞いたアルカトラスは、そうかと呟くと

「ならば無理強いはしない。汝の好きなようにするといい。だが、今まで通り時折帰って来い。それだけは守るのだぞ?」

「そうだぞ兄貴」

「これからもたまには変わらない兄さんの顔を見せに来てね」

アルカトラス、バハムード、サマカンドラの三人に今まで通り時折帰ってくるように言われ、ゴルダは言われなくともという目線を投げかけたのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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