氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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それはニンジンではなくマンドラニンジン

今年もまた、製菓会社の陰謀だなどと言われているあの日がやって来た。
この日は異界へ出張だったはずのゴルダだが、ドタキャンを食らって暇になり、家で暇を持て余す。

「ねえねえ、買い物行ってきてくれない?今夜は結構豪勢に作りたいから」

月刊幻想と医学という幻想獣医学の専門誌を読んでいるゴルダに、ミリシェンスは買い物に行ってきてはくれないかと話しかける。
ゴルダはそれに構わんがと返事をしながら立ち上がると

「何を買ってくればいい?」

と自分の座っていた横でまどろむマティルーネをよそに聞く。

「このメモに書いてあるの全部よ」

そう言われてミリシェンスから渡されたメモ書きを見て、ゴルダは少しめんどくさそうに

「セイグリッドにいかんといかんな」

と呟く。
それミリシェンスは、文句言う暇あるなら行くとゴルダの腰をポンと叩いた。

「分かった、行ってくる」

「ええ、行ってらっしゃい」

こうして追い出されるような感じでゴルダは出かけるのであった。

「さーて、今年はあげるんじゃなくて貰うわよ。友チョコを」

ゴルダが買い物へ行かされた頃、セイグリッドではメリエルがシアの所へ向かっていた。
なお、今年はあげるのではなく貰おうと目論んでいるのでチョコも何も持って来ていない。

「さーて…どーん!」

などと言いながら城の一室にシアの気配を感じ、扉を勢いよく開けて入るメリエル。

「今年は来ないと思ってたのに、来たのね」

「何よその来てほしくなかったような物言いは」

テンション高く部屋へ入ったのに、シアの一言に水を差されて一気にテンションが落ちたメリエル。
だがそうも言ってはいられない。
メリエルはすぐ調子を戻してシアに

「今年は逆にくれるんでしょうね?」

とドヤ顔でチョコでも何でもいいので要求する。
するとシアは、メリエルをもふっと触ってから

「今年はサフィとの力作よ」

やたらと大きいトリュフチョコを差し出す。
だがこのトリュフチョコ、どうやらビターチョコらしく、そんなに甘そうには見えない。

「何でビターチョコで作ったのよ?これそういうチョコで作るものじゃないでしょ」

というメリエルの指摘に、シアはこう返す。

「白と黒ってやつよ」

さすがに全世界期待の天才のメリエルでも、こればっかりはシアが何を言いたいのかを理解できなかった。

「もういいわ、でもありがとう。私ゴルダのところ行くからこれでおいとまするわ」

「あら残念、またね」

今日はこれ以上シアに付き合うと頭がこんがらがりそうなので、メリエルはセイグリッドを後にする。

「マティルーネにはあげないとね、とっておきの人参を…」

メリエルはそんなことを呟きながらゴルダの家へと向かうのであった。

一方、ゴルダに置いて行かれて留守番をしているマティルーネはというと

「うーん、眠い」

と言いつつ欠伸をしてソファから飛び立ち、台所へ。
台所ではミリシェンスが忙しく動き回り、食事の仕度を進めている。
時刻は午後三時過ぎだが、この時間から仕度をするということはよっぽど下準備に時間のかかる料理を作っているのだろう。

「マティルーネ、テーブルには座らないで。今からすごく散らかるから」

「あらあら、そうなんだ」

ミリシェンスにテーブルに座るなと言われ、マティルーネはまたソファ戻る。
ざっと見た感じ、いつもの人数より余分に用意している気がしたがマティルーネは今日は来客があることを知らない。

「トスカが来るのかな?それかメリエル」

などと考えていると、玄関の方から

「メリエル様がお邪魔…って手裏剣投げるのいい加減やめてくれる!?」

「お邪魔しますと言わないあなたが悪いのよ」

いつものやり取りが聞こえてきた。
ミリシェンスもメリエルを本気で傷付けるつもりはないのか、わざとメリエルが避けやすいように投げているらしい。
だが、手裏剣を投げられる側のメリエルはそれに気付く様子は微塵もない。

「ゴルダが居ればものすごい反射神経でキャッチしてくれるのに、居ないのね。そしてマティルーネ、あんたはなぜか居ると」

また料理に戻ったミリシェンスをよそに、メリエルは居間へとやって来てマティルーネに話しかける。
そんなマティルーネは、メリエルを見て懲りない人と言いたげな顔をした。

「もっふもっふ」

メリエルはそう言いながらマティルーネを触る。
以前は触ろうとするだけで噛もうとしていたマティルーネは、たまに毛の手入れをしていたおかげで噛もうとはしなくなった。

「後でいいものあげるわ」

「ふーん」

「何よその反応は」

いいものをあげると言った後のマティルーネのそっけない反応に、メリエルは雷に打たれたような感覚に襲われた。
だがその感覚もすぐ消え去り、またマティルーネを触りだす。
すると、マティルーネは今までゴルダ以外の頭に乗ろうとしなかったのにそっとメリエルの頭の上に乗る。

「どういうつもり?」

「さあね」

どういう風の吹き回しだと聞くメリエルに、マティルーネはさあねと返す。

そしてそのまま一時間ほどマティルーネを頭に乗せていると、ゴルダが荷物を抱えて帰ってきた。

「お邪魔しているわ」

「そうか、そして今日もミリシェンスに手裏剣投げられたんだな」

お邪魔していると言うメリエルに、ゴルダは皮肉たっぷりにまた手裏剣を投げられたのかと返す。
それにメリエルは何よという顔をしながらマティルーネに降りてよと言うが、聞く耳を持たれなかった。

「俺も手伝おう」

「そうしてくれるとありがたいわ」

一言二言話をしただけでミリシェンスの手伝いに入ったゴルダを見て、メリエルはなんとも言えない気分になる。

「読めないのよねえ」

「本当にね」

なぜかゴルダが読めないという点で意見が合致した二人だった。


やがて何もすることがなくなったメリエルは、どこからか謎の包みを出す。
何やらもぞもぞ動いているのが気になるが、形からしてニンジンにも見える。

「ニンジン?」

マティルーネが身を乗り出して取ろうとするので、メリエルはその謎の包みを開いた。
だが、包まれていたのはただのニンジンではなかった。
マンドラゴラとニンジンのハイブリッド、マンドラニンジンだったのだ。
しかも、マティルーネがマンドラニンジンを食べようとした瞬間。顔のような部分が突然くわっと開いて叫び声を上げ出す。
叫び声死の呪いは含まれてはいないのが不幸中の幸いだが、マンドラニンジンはメリエルの手を離れ、近くで火薬が爆発したようなうるささで叫びながら走り回る。

「…うるさい」

「ちょっと、生きてるって聞いてないわよ!」

こうなってしまってはとっ捕まえて食べて黙らせるしかない。
メリエルは頭上で耳をたたんでいるマティルーネをよそにマンドラニンジンを追いかける。

「待ちなさーい!」

叫びながら逃げ回るマンドラニンジンをメリエルは追いかけるが、なかなか捕まえられない。

「全く、お前は変なものを持ってくるんだな」

とそこへ、包丁片手に居間へ来たゴルダがマンドラニンジンをむんずと捕まえ、包丁の背で殴った挙句聖水をかけて完成に黙らせた。
あれだけのうるささで叫んでいたのに、窓ガラスは一枚も割れておらず。メリエルがマンドラニンジンを追い回した後が荒れているだけである。

「マンドラニンジンとはこれまた変なもの持って来やがって、だがこいつはいい材料だ。後でお前にもやるから待ってろマティルーネ」

そう言ってゴルダはまた台所へと戻って行った。

「…シアからチョコもらったけど食べる?」

「マンドラニンジンがいい」

なお、マンドラニンジンはスープとサラダにされてディナーの席に出されたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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