氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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遅すぎるが一足早いプレゼント

クリスマスを明日に控えたある日。
ゴルダの家では、それもどこ吹く風といった感じのいつもの風景があった。
だが、一つだけ違うのはゴルダが依頼も診察もなく牧場に用もないのに用事があると見え見えな嘘を言って出掛けて居ないが。

「むー」

「あと五分ね」

食卓テーブルでは、フウがミリシェンスに算数を教えられていた。
一方ユウは、なぜか幻獣語の入門書を読んでいる。
ただ居候させるだけではなく、一人で生きていけるような知識をつけさせるという方針をゴルダが最近取り出したので、ミリシェンスと二人でフウとユウの習熟度に応じたことを教えている。
今のところフウは小学三年くらいのレベル、ユウは小学五年くらいのレベルのことを教えられている。
本人が理解するまで、怒らず何度も教えるという物の教え方はゴルダもミリシェンスも変わらない。

「できたよ」

「そう、じゃあ国語やってね」

算数の問題を解き終えたと言ったフウに、ミリシェンスは今度は国語をやるように言う。
フウはそれに納得のいかなさそうな顔をして、しぶしぶ国語に取りかかる。

「うーん、飲み込み早いわね。結構ひねった問題だったんだけど」

「昔から自分からやってましたので」

フウも理解力も申し分ないのだが、ユウの理解力はゴルダもミリシェンスも感心するしかないレベルだった。
今やっていたのは、小数の計算問題だったが、ユウはミリシェンスが指定した時間の半分で解き終えのだ。

「うん、ユウは今日はここまで。洗い物してくれる?」

「分かりました」

ミリシェンスはユウに今日はもういいので洗い物をするように言い、フウの前に座り直す。
ユウはミリシェンスに言われた通り、台所の洗い物を片付けにかかるのであった。

一方そのころ、嘘をついてまで出掛けたゴルダは何をしていたのかというと、カヴェルニーエに赴いて何やら買い物をしていた。
今来ている店は、普通とは違う魔法が絡む履き物全般を扱う店。
履くとどんなに運動音痴でもマラソン選手並に走れるようになるスニーカー、臭くなることがほとんどないビジネスシューズ、水中での移動が楽になる長靴など色々な履き物が売っている。
その中でゴルダが目をつけたのは、どんな足にも対応し、しかも足の大きさが変わると同期してサイズの変わる竜革と幻獣布を使ったブーツ。
竜革自体がこの世界ではあまり出回らない代物なので、それを使ったブーツが二つもあるのは非常に珍しい。

「ろくな履き物がないせいで牧場の手伝いさせるの渋ってたが、これで解決だな。しかも二つの意味でのプレゼントになる。一つは遅すぎて、一つは早いが」

「もったいぶってる暇はないんじゃないかしら?」

なんだかんだで呟いていると、マティルーネにそんな暇はないのでは?と言われ、ゴルダはすぐさまそのブーツを買って店を出、ケーキ屋へ向かった。

「どこ行ったのかしら本当に」

一方家では、ミリシェンスが半ば呆れ気味にゴルダの帰りを待っていた。
一応、フウとユウの誕生日を忘れていたので今日祝うとは聞かされていたものの、本人たちが居間に居るので準備のしようがない。

「何作ろうかな」

ユウが洗濯物を干しに外へ出、フウは自室に戻ってゲームをしているのでこの隙にとミリシェンスは夜の献立を考える。
そして、考え始めて数十秒で

「うん、決めた」

献立を思い付き、台所へ立った。

そのころ、洗濯物を干していたユウは自分でも忘れていた誕生日のことを思い出す。

「うーん、言い出すのも図々しいかなぁ」

などと言いながら洗濯物を干していると、ゴルダとは出掛けなかったレルヴィンが外に出てきた。

「どうしたの?」

ユウが声をかけると、レルヴィンは洗濯物のカゴを頭で押して寄せてきた。
どうやら、早く干そうと言いたいようだ。

「そうね、寒いからね」

そしてユウはレルヴィンにそそのかされるがままに洗濯物を干し、家の中へと戻る。
家の中に戻ると、ミリシェンスが台所に立っているのが見えたので手伝おうとしたユウだが

「今日はいいわ、私だけでやるから」

ミリシェンスに今日はいいと言われ、させてもらえなかった。

「機嫌悪そうには見えないんだけど、どうしたのかしら?」

ミリシェンスの態度に首をかしげながら、ユウはフウと共同で使っている部屋へ。
部屋の中はある程度片付いてはいるものの、フウの机だけはパソコンがあることを除いても、菓子のクズなどで若干汚れている。

「フウ、机の上が散らかってるから片付けして」

「えー、後でやるよ」

ユウに片付けをするように言われるも、フウは後でやると先伸ばしにする者がよく言う一言を言う。
もちろん、ユウもはいはいと弟であるフウの言ったことを鵜呑みにはしない。

「後でやるはやらないと同じ、今すぐやるの」

弟のだらしなさを改善するためなら、姉として厳しく言うまでである。

「分かったよ、やるよ」

ユウに厳しく言われ、またもやフウはしぶしぶ机の上を片付けるのだった。

そして夜。
なんだかんだで、三時過ぎ辺りから出掛けて帰って来なかったゴルダがようやく帰ってきた。
その手にはいくつかの荷物が握られてたが、それが何かは不明。

「ずいぶん遅かったのね」

「出先で急に診てくれと電話が来て行っていた」

遅かったのねと、遠回しに遅くなった理由を聞いてきたミリシェンスにゴルダは急に往診が入ったからだと言って、荷物の一つを冷蔵庫へ入れる。
なお、食卓の上にはすでに盛り付けの済んだ料理が並べられていた。
そして今日のメニューは、やたらとマッシュルームの多いハヤシライスだった。

「丁度腹が空いていた、飯にしよう」

ゴルダの一言にミリシェンスは頷き、ユウ達を呼びに行く。
やがて全員が揃ったところで、これまたいつもと代わり映えのない夕食が始まった。

「言ってなかったが、クリスマスは異界へ出張で居ないからな」

ゴルダの突然の一言に、アルガントがむせて涙目になったので、慌ててユウがなだめる。

「そう、ゴルダはクリスマスなんて関係なかったわね」

ミリシェンスは口をつけていたワイングラスを置いてからゴルダに静かに返す。
ミリシェンスとユウは今年がゴルダと初めてクリスマスを過ごすことになっていたが、どうやらそれはかなわないようだ。

「そんなにお仕事大変なんですか?」

どうにかアルガントをなだめたユウに聞かれ、ゴルダはそうだと頷く。

「それはそうと、少し早いようで遅すぎたが。ユウ、フウ。お前達にプレゼントだ」

頷いてからしばらくして、やや意味不明な前置きをしてからゴルダはユウとフウに謎の包みを差し出す。

「何ですかこれ?」

「なぁに?これぇ?」

何これと言う二人に、ゴルダは後で開けてみるように促す。
するとユウとフウは、夕食もそこそこに渡された包みを開けてみた。

「わあ、新しい靴だ」

「本当だわ」

包みの中身は、一見普通のブーツだった。

「履いてみるといい、大きいが問題はない」

ゴルダに履いてみるように言われ、フウは試しにそのブーツを履いてみることに。
確かにサイズの差がありすぎてぶかぶかでは済まなかったが、突然ブーツその物が縮んでフウに適したサイズになったのだ。

「牧場の手伝いさせよう思ったら、まともな履き物がなかったからな。そしてお前達の誕生日を忘れていたからちょうどいいと思って選んだ。誕生日おめでとう」

こうしてユウとフウは誕生日にしては遅すぎて、クリスマスには早すぎるプレゼントを貰ったのだった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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