氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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シャールイズの頼み-血を手に入れよ

ミリシェンスと共にシャールイズのところへ行き、無暗に呼び出すなと言った日からどれくらい経ったか分からないある日。
全くと言っていいほど呼び出されなくなって、少し胸をなで下ろしていたところへまたシャールイズから来てという電話が入った。
だが、今日のシャールイズはどこかげっそりした声をしていたので、ゴルダはアレだろうなと察しを付けながらもシャールイズのところへ向かう。

「しかしまた急に夏日に戻ったな」

もはや真冬だというのに、夏日のような暑さが戻ったような空の下を歩きながらシャールイズの店へと到着したゴルダ。
だがそれでも、シャールイズの店がある路地裏に少し入ったこの場所はそんな戻ってきた夏日を遮り、不快な蒸し暑さだけを漂わせている。
そのせいか、頭の上のマティルーネも横にいるレルヴィンもその不快な蒸し暑さでかなり不機嫌だ。

「おいおい、そんな牙ぎしりするな」

あまりの暑さのせいで牙ぎしりして不機嫌さを露わにしているレルヴィンにそう言いながら、ゴルダはイェリゼラの扉を開く。
店内には、表に私用で今日は休むという張り紙がされているためか客はおらず。店主であるシャールイズは、ゴルダを呼ぶために使ったであろう携帯を持ったままカウンターに突っ伏していた。
どうやらシャールイズが突っ伏しているのは眠いからではなく、動く気力がほとんどないから突っ伏しているようだ。

「おい、大丈夫か?死んでないだろうな?」

頭の上で爪を立て、降ろすなと言わんばかりに尻尾で後頭部を叩いているマティルーネをよそに、シャールイズに声をかけるゴルダ。
だがシャールイズは何も答えない、というよりは答える気力もないようである。
この状態から、ゴルダはシャールイズが血を飲むのを怠っていたツケが回ってきていたことを確信し、何をするかと思えば

「ほら起きろ、こいつを飲め」

まず、カウンターに突っ伏して動かなくなっていたシャールイズの上半身を抱えてそっと起こし上げ、腰に装備していた薬品ポーチと思わしきものから赤紫色の液体の入った小瓶を取り出し、シャールイズにゆっくりと飲ませる。
なお、今ゴルダがシャールイズに飲ませている液体は、サフィから伝授してもらった吸血鬼とその類の種族が慢性的な吸血不足を一時的に補うための特殊な薬。
本当にその場しのぎの薬なので、これを飲んだからと言って吸血しなくてもいいわけではない。
だが、サフィから伝授されたこの薬の効果はかなり強力なものなので、どうなのかは不明だが。

「ああ、いらっしゃい。来てくれたのね」

「単刀直入に聞く、どれくらいの間血を飲んでいなかった?」

薬を飲まされ、なんとか持ち直したシャールイズは何事もなかったかのように立ち上がり、ゴルダにいらっしゃいと言う。
それに対してゴルダは、突っ立ったままでどのくらいの期間血を飲んでいなかったのかと聞く。
ゴルダの問いに対し、シャールイズはうふふとごまかすように笑うと

「そうねえ、少なくとも半年。それ以上は覚えてないわ」

半年というシャールイズの答えに対し、ゴルダはよくそれで持ちこたえてこれたなと言うのを抑え、先ほどの薬を片付けてから近くの椅子に腰かける。
なお、レルヴィンはふてくされたような様子で少し離れた場所に座り、こちらを見ている。

「血を手に入れて来よう、その代わりこいつらを手に入れてくる間見ていてくれ」

もともとシャールイズが呼び出した理由が、血を持ってきてほしいというものであること察していたため、ゴルダはシャールイズにその間マティルーネとレルヴィンを見ているように言う。
だが、マティルーネはシャールイズのことを良く思っていないため、ゴルダの頭の上から降りるのを渋った。
しかし、それでもゴルダに力づくで頭から降ろされ、最終的にはカウンター上でゴルダを何で降したのよと言いたげな目つきをしながら座った。

「じゃあ行ってくる。変なことするなよ」

「しないわ、いってらっしゃい」

こうしてゴルダは、マティルーネとレルヴィンをシャールイズに預け、血を探しに行くのだった。

ゴルダが血を手に入れに行った後、シャールイズはマティルーネを触ろうとしては噛まれそうになって手をひっこめるを繰り返していた。
シャールイズは相変わらずマティルーネにかなりの敵対心を持たれているようで、触ろうとするとこのありさまである。
だが、最初に会ったころよりは警戒も敵対心も薄れているが、それでも触ろうとすると噛まれそうになるのでまだまだのようだ。

「マティちゃん、マティちゃん。どうして噛もうとするのかしら?」

向こうがこっちの言っていることを理解しているかどうかなど知らず、シャールイズはマティルーネにそう問いかける。
問いかけられたマティルーネは、少し首を傾げながら

「血吸われそうだからよ」

と答えた。
それを聞いたシャールイズは、えっ?という顔をしながらマティルーネを見る。
ここで、マティルーネの話している言語はこの世界での幻獣語に似たものらしく、フィルスくらいしか通訳ができないと補足しておく。

「ふーん、私が話していることを理解できるのってフィルス以外にも居たんだ。ちょっとびっくり」

マティルーネは耳を動かし、シャールイズにそう言ったっきり何も話さなくなった。
なお、この後シャールイズが抱っこしてもマティルーネはその心配はなく、信用してもいいと思ったらしく。抵抗することはなくなったとか。

「よう」

「どうした、昔の竜滅病の薬でも仕入れに来たのか?」

「そういうもんじゃない、血が欲しい」

一方、血を手に入れに行ったゴルダは何をしているのかというと、同じく路地裏に居る裏社会に生きるものしか診ない知り合いの医者の所へ来ていた。
ちなみにこの知り合いの医者、今は諸事情があって製造などが禁止あるいは無期限休止された薬などを取引してくれることもある。
血が欲しいと言われ、知り合いの医者は変わったもんが好きだなと言いたげな顔をして

「ああ、あるぞ。人間でも亜人でも、竜でもな。最近幻獣族の血が手に入ったんだがどうだ?値はそれなりだが」

血ならいくらでもあると、知り合いの医者はゴルダに在庫のリストを差し出す。
リストは種族ごとに分けられていて、目的の血を探すのにはそう苦労はしなかった。
その中から、ゴルダは適当に1つを選択してそれをよこせと金を渡す。

「よし、ちょいと待ってな」

そう言って知り合いの医者はどこかへ消えたかと思えば、輸血用のパックに入った血を持ってきた。
表の社会であれば、血の売買は法で禁じられているのだが、それは地球での話であってここの世界では表社会でもひっそり売られていることがあるようだ。

「悪いな、助かったぞ」

「いいってことよ、また何かあったら来てくれ」

こうして血を手に入れたゴルダは急いでシャールイズの所へ戻るのだった。

「うーん、やっぱり毛のある子って皆触り心地がいいわ」

その頃、カフェでゴルダが戻るのを待っているシャールイズはすっかり警戒しなくなったマティルーネを抱っこしたまま紅茶を片手にだらだらと時間を潰していた。
マティルーネの毛はしっとりかつさらさらで、シャールイズが吸血竜に戻った時とそうそう変わらない。
そのためか、シャールイズはマティルーネを離さんと強く抱いている。

「強く抱きすぎ」

「いいじゃないのよ」

強く抱きすぎとマティルーネに言われるも、頑として抱く強さを緩めないシャールイズ。
今のところ、まだゴルダが帰ってくる気配はない。
なお、レルヴィンは離れた場所で昼寝中だ。

「早く戻ってこないかしらね」

「だから抱く強さを緩めて」

早くゴルダが戻ってこないかと呟くシャールイズに、抱く強さを緩めてと言うマティルーネ。
だがそれでもシャールイズが抱く強さを緩めることはなく、結局ゴルダが血を持ってくるまでそのままだったと言う。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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