氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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サフィの冬の休暇

セイグリッドにも、身に染みるような寒風が吹くようになった11の月初旬。
セイグリッド城の従者は、全員1週間くらいの休みが年に一度は必ず入るような制度があり、今日からサフィが休みに入ることになった。
その間、従者を束ねる者が居なくなるので、サフィはエルトナとサマカンドラに自分の代わりを1週間だけ頼むことに。
その際にやることを2人に教えているのだが、エルトナはサフィにちょっかいを出そうと話を聞こうとしないため

「…というわけで、サマカンドラ。エルトナにも今言ったことを伝えてちょうだい、絶対によ」

「はい、分かりました」

サフィはエルトナをつまみ出し、サマカンドラに説明して後でエルトナにも教えるように釘を刺した。
それにサマカンドラは頷いて了承したので、サフィは改めて

「頼んだわよ、私の代わりを」

「お任せを、1週間しっかり休んでくださいね?」

サマカンドラに自分が居ない間の代わりを頼み、従者用休憩室を出て自室へと向かう。

「とりあえず明日は墓参りして、明後日は…どこか遠くに出かけようかしらね。アメリカとか」

明日からの休みの初日は、いつもの両親への墓参りが入っているが、それ以降は何も予定が入っていない。
どこか遠くに出かけようかと思った時、真っ先にアメリカが頭に浮かんだ。

「あいつも上手くやってるかしらね」

サフィが呟いたあいつとは、他でもないイルフェス。
今は国際異界文明犯罪取締機関という裏の顔を持ちながら、表向きはFBIで殺人事件の捜査を主にやっているという。
メールのやり取り、そしてたまの通話から相変わらずであることはうかがえるのだが、卒業してからまともに会ったことはない。

「ま、いいか」

そう言ってサフィは明日からの準備をするのだった。

そして翌日。
いつものメイド服を脱ぎ、結んでいた髪をほどいてストレートにし、幻獣族の毛を使ったジーンズにジャケットを羽織り、サフィは久しぶりに封印されし実家へ。

「あら、シアがやってくれたのかしらね。蔦植物がなくなってるわ」

実家へと到着すると、いつもなら壁という壁が蔦植物で覆われているのだが、今日は違った。
蔦植物が全て消え、元々の壁が見えているのだ。
無論、年に一度来るのが精一杯なため蔦植物の始末などまともにできた試しはない。
可能性があるなら、自分の休みを知ったシアの仕業だろう。

「親切だかお節介だか何だかは知らないけど、こうしてやってくれるのはありがたいわね」

そんな独り言を言いながら、サフィは両親の墓石のところへ。

「今年も忘れずに来たわよ。遅くなったけどね」

ふふっと微かに笑いながら、墓石の前で手を合わせ、供え物のワインを置く。
そこまで高いものではないが、味の評価はそれなりの銘柄の赤ワインだ。

「私は仕事バカな方が幸せなんだけど、母さんはどう思う?…って聞いても答えは返ってなんかこないわよね」

そして帰ろうと、供え物のワインを片付けながら、口元だけに笑みを浮かべ、目元に影を落としながらサフィはそんなことを呟いて再び両親の墓石に手を合わせて実家を後にする。
なおこの後サフィはカヴェルニーエへ赴き、あちこちを回って夜までの時間を過ごした。

やがて夜になり、サフィはある場所へ向かう。そう、それは他でもないゴルダの家だ。
行くなどとは一切メールなどで連絡していないので、完全なる不意打ちである。
そもそも、サフィがゴルダを不意打ちで呼び出しても本人はめんどくさそうにするだけなので、不意打ちで家へ行っても同じようにめんどくさそうにするだけだろうとサフィは思っていた。

「ああ、居るわね」

家の中の明かりは点っているので、居て間違いないと思ったサフィは玄関の扉をノックする。
その際、少々強めにノックしたせいで扉が凹んだように感じたものの、サフィは気にせずゴルダが出るのを待つ。
それから1分ほどして、出てきたのはゴルダではなく見たことのないカーバンクルだった。

「こんな夜分かつまったく人気のない場所に何の用…と思ったけどゴルダの知り合いのサフィね、本人は今居ないわよ。それと私はミリシェンス」

そのカーバンクルはサフィが誰であるかを察し、ゴルダが今居ないことを告げると同時に自らの名をミリシェンスと名乗る。
それにサフィはご丁寧にどうもと返すと

「いいわ、ゴルダが帰って来るまで待つから。上がっても?」

ゴルダが帰ってくるまで待つので、サフィはミリシェンスに家に上がっていいかと聞く。
するとそれにミリシェンスは渋い顔をして

「うーん、多分今日は午前様よ?それでも構わないならどうぞ」

帰りが日をまたいでもいいならどうぞと言って家へ上げてくれた。
サフィはおじゃまするわと一言言って家の中へ。
家の中は、去年来た時とほとんど変わっておらず。多少ソファの位置が変わっているくらい。
サフィはそのままレルヴィンが床で熟睡している側からソファに座り、携帯を出してゴルダに家に来てるからとメールを投げた。

「どうぞ、口に合うかどうかは知らないけど」

そう言いながら茶を出してきたミリシェンスに、サフィは何も言わずにカップを取って口をつける。
おそらく茶葉は自分がプライベートで淹れるものとさほど変わりはないようだが、口をつけた時の風味が自分が淹れた時と全く違っていた。
説明しがたいが、あえて言うならサフィが自身で淹れた時の風味はスッと入ってくるような感じだが、ミリシェンスが淹れたものはふわっとしたような感じで入ってきたのだ。

「これはこれで、上出来ね。いい意味で淹れ方に癖が出てるわ」

この一言を、ミリシェンスは褒めているとは受け取らなかったのかやや微妙な顔をしてそう?とだけ返事をする。
ミリシェンスの反応を見て、サフィは同じ従者としてのプライドか何かが許さないのだろうと思い、それ以上余計なことを言うのをやめた。

それからしばしの間、サフィとミリシェンスは互いに一言も話さずに茶を飲むだけの時間が流れていたが

「ただいま」

ゴルダが予定より早く帰って来たことでその時間は終わりを告げる。

「おじゃましてるわ」

頭に自分が吸血竜になった時のような紫毛の竜を乗せ、ゴルダが居間に入ってくる。
なおサフィはこの竜---マティルーネのことは、ゴルダから以前メールで写真が送られて来たので把握している。
ドラビットという種族らしいが、この世界では聞いたことのない竜族名。
案の定、ゴルダからは異界の竜族であるとメールには書いてあったが。

「飲みに連れ出されそうだったが、お前と飲もうと思って引き上げてきた」

寝ているレルヴィンなどお構い無しにサフィから少し距離を置いて座り、ゴルダはそう言う。
なお、その手にはスリュムヴォルドの白のフルボディワインと、リフィルの赤のライトボディワインが握られている。どうやら帰りがけにどこかで買ってきたようだ。

「ミリシェンス、お前は飲むか?」

ワインをテーブルに置き、食器棚からワイングラスを取り出しながらゴルダはミリシェンスに聞く。
ミリシェンスは、少し悩んでから

「もらうわ」

と返事を返す。
ゴルダはそれにそうかと返し、ワイングラスを3つに冷蔵庫に入れてあった山羊竜のチーズを出す。
そして、テーブルにグラスを置いてワインを注いで

「では、飲もうか」

と言って3人は互いにグラスを鳴らして飲み始める。

「ライトじゃなくてフルねやっぱり」

「人それぞれだ」

赤の方を飲むも、ライトボディだったがためにどこか納得いかない顔のサフィに、ゴルダは人それぞれと当てずっほなことを言う。
ミリシェンスはちまちまと白の方を飲んでおり、マティルーネはワインより人参をよこせと不機嫌そうにしている。どうやらこの不機嫌さは眠気からも来ているようだ。

「マティルーネが眠そうよ」

サフィの一言に、ゴルダはマティルーネを頭から下ろしてソファに座らせる。
するとマティルーネは欠伸をしたかと思えば、そのまま寝入ってしまった。

「あら、かわいい」

山羊竜のチーズを食べながらその寝顔を見ていたサフィがそんなことを漏らす。

「起こすなよ」

サフィに起こすなと釘を刺し、ゴルダは2杯目を注ぐ。
寝ているマティルーネを触りたくなったサフィだが、下手に起こすと何をされるか分からないのでここはぐっと堪えた。
なおこの後、3人は朝まで飲み明かし、サフィは休みの1日の最後をこれで潰した。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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