氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

ほぼ2人の時間-ミリシェンスとゴルダ

冬も本格化し始め、街のあちこちの店で年末、そしてクリスマス商戦の雰囲気が見え始めたドランザニアの首都カヴェルニーエ。中にはもうクリスマスの飾り付けをしている店があり、クリスマスが嫌いな者にとっては非常に居づらい場所となりつつある。
そんなカヴェルニーエの街中を、セイグリッドの国章が入ったジャケットにジーンズ。そして封印石を下げた首輪姿の男と、その男の頭に乗っている紫毛の竜と、その横に狼竜とカーバンクルが並んで歩いていた。

「北風が寒いわ」

「マフラーくらいしてこい言ったのに聞かないからだろう」

そんな話をしているのは、他でもないゴルダとミリシェンス。
今日は夜まで依頼が入ってないため、ミリシェンスがどこか出掛けたいと持ちかけ、今こうしてカヴェルニーエまで出て来ているのだ。
北風が寒いと言ったミリシェンスに、本来そうだなと返せばいいところをマフラーをしてないからだろと返すゴルダ。
その返事にミリシェンスは、それはないでしょという顔で若干不機嫌になる。
そしてそのやり取りを頭の上で見ていたマティルーネが、ゴルダの後頭部を尻尾で叩く。
どうやら、その返し方はないと言っているようだ。

「女心はよく分からん、かと言ってアルガティアよりは全然いいんだが」

アルガティアよりは全然ましであると呟いたゴルダにミリシェンスは

「あまりにも精神が混沌としてて、探りを入れようものならその混沌に呑まれる。そんな従姉妹でしたね。しかも一国の女王」

完全にではないが、ゴルダとある程度の記憶を共有しているので、その中から情報を引っ張り出して話す。

「それより、このまま街中を徘徊してても埒が明かないが。どこか行きたい店はあるか?」

特に機嫌が悪いわけではないが、煙草のようなものを取りだし、吸いかけたところで、ここが路上な上にミリシェンス達が居ることに気づいたゴルダは煙草のようなものをしまい、行く宛てがあるかと聞く。
それに対してミリシェンスはゴルダの方に向き直り、行きたい場所を言ったが、声が小さかったため、道路を走る車や竜タクシーの足音に消されて聞こえなかった。

「なるほど、分かった。なら行くか」

だが、ゴルダは声を聞き取れずともミリシェンスの口の動きから何を言っていたのかを読み取ったらしく、また歩き出す。
ちなみに、ミリシェンスはゴルダに

「アクセサリーショップに行きたい」

と言っていた。

それから数分ほど歩き、ゴルダ達は近くのアクセサリーショップにやって来た。
ここは異界にあるような鉱石などを使ったアクセサリだけではなく、この世界独自の鉱石や魔法鉱石を使ったアクセサリ、さらにはオリジナルのものを作ることができるようだ。

「好きに見てろ」

ミリシェンスに好きに見てろと言ったゴルダは、店の店主に声をかけられてその場を離れる。おそらく依頼か何かに関することだろう。
一方ミリシェンスは、既製品が陳列された棚の前でどれがいいかと選んでいた。
今見ている棚には、ピアスではない方の耳につけるアクセサリが並んでいる。
大体が異界でもお馴染みの宝石や鉱石などを使ったものだったが、その中で1つだけミリシェンスの目に留まったアクセサリがあった。
そのアクセサリの主な材質はミスリル銀で、装飾にルビーと紫水晶とサファイアを使用している。
それを眺めていると、何かしら前の契約者との記憶が蘇ってきたのだ。

「それにするか?何を買っても構わんぞ」

「はっ…!うん、じゃあこれで」

店主と話を終えたゴルダに後ろから話しかけられ、ミリシェンスは急に我へ帰る。
これは今買い逃したらもう出会えないだろうと思ったミリシェンスはこれでと即決。
ゴルダはそれに何も言わずに、そのアクセサリの代金を一括現金で支払った。

「大丈夫なんですか?そんな景気よく現金で、しかも一括で払って」

店を出てからミリシェンスにそんなことを聞かれ、ゴルダは大した出費じゃないと返す。
ゴルダと契約し、その家に住むようになってからミリシェンスはゴルダの収入に少々疑問を抱いていた。
医者とはいえフリーランス、そして何でも屋として依頼をほぼ年中無休で受けてくる生活。
一体どれくらい報酬を取ってるのか気になったが、ミリシェンスは探りを入れたことがない。
そもそも、探りを入れること自体が愚問なようにも思えてきたのでこれ以上は考えないようにした。

「少しどこかで休むか」

「はい?」

アクセサリショップを出、1時間半近く歩いたところでゴルダはそんなことを言う。
唐突なゴルダからの提案に、ミリシェンスはえっ?という顔をするもすぐさま表情を元に戻して

「構わないけど、どこでです?」

どこで休むのかとゴルダに改めて聞く。
するとゴルダは、どこか知っているような素振りを見せて、踵を返すと路地裏の方へと入る。
ここカヴェルニーエの路地裏は、そこまで奥まで入らなければある程度の治安は約束されているが、奥のほうへ入るともはや無謀地帯だ。
そんな少し入った路地をしばらく進んでいると、一見すると陰気な外見の建物が目に入る。
その建物の看板には「Cafe Yrizer」と書いてあり、この建物が喫茶店であるというのが分かる。
カフェの名前がドランザニア語で書いてある上、改めて見ても外見が陰気でもだ。

「いらっしゃい、久しぶりね」

店の中に入ると、ケルトに次いで癒しの音楽と言われるエルフの音楽が流されており、明かりは蝋燭ランタンの光だけ。
席の数もそこまで多くはなく、テーブル席が2つにあとは全部カウンター席。
そして、ゴルダ達に声をかけた店主は、白髪に近い銀髪の紫目の女性。

「ようシャールイズ、近くに寄ったんで来たまでだ」

ゴルダがシャールイズと呼んだこの女性、実は今ではサフィ以外はもう居ないと思われていた吸血竜である。
諸事情あって普段は人間の姿で生活しているが、吸血竜であることには変わりない。
そして、時たまゴルダに依頼をしてくる一応のお得意様でもあるのだ。

「しばらく見ないうちに、お仲間が3人も増えたのね。狼竜とカーバンンクルと…その子は?」

シャールイズはミリシェンスとレルヴィンを交互に見ると、ゴルダの頭の上で何よこいつという顔をしているマティルーネを指して聞く。
それにゴルダは一旦カウンター席に座ってから

「マティルーネ、ドラビットという異界の竜族だ。人参以外はほとんど食わない」

マティルーネをシャールイズに紹介した。
シャールイズは、ゴルダの頭の上に居座り続けているマティルーネにそっと手を触れる。
するとマティルーネは、あまりよろしくなさそうな顔でシャールイズを見た。

「あらあら、ところで注文は?」

シャールイズに注文はどうするのかと聞かれ、ゴルダは

「いつものだ」

と答える。
ここでゴルダの言う、いつものとは他でもないブラックコーヒーである。
シャールイズはそれに頷いてメモを取り、今度はミリシェンスに何にするかを聞く。
ミリシェンスは、カウンターテーブルに張られているメニューから

「カプチーノ」

と注文をする。
シャールイズはふふっと笑うと、それぞれの注文のコーヒーを作り出した。

「私とどこか同じ匂いするけど、何者なのかしらね」

カプチーノが来るのを待っている間、ミリシェンスはシャールイズを見てふとそんな疑問を口にする。
するとそれを耳にしたのか、シャールイズはゴルダにブラックをホットで出しながら

「私?私は吸血竜よ、あなたと同じ闇の血が入ってるね」

自分が吸血竜であることを名乗る。
ミリシェンスはシャールイズが吸血竜であることを知ると

「やっぱりね、思った通りだわ」

と返してそれ以降何も話さなくなる。

「まあ、ここで会ったのも何かの縁だから。また機会があればいらっしゃいね?」

それから1分もしないうちに、何も話さなくなったミリシェンスの前にカプチーノを置きながらシャールイズはそう言った。
ミリシェンスは軽く頷き、カプチーノを口にする。
その味は、かつて自分で淹れていた時と同じかそれ以上のもので、とてもカプチーノとは思えなかった。

「淹れ方が上手いのね、いい意味でカプチーノを飲んでいる気がしないわ」

褒めているのかどうか分からない物言いで感想を述べるミリシェンスに、シャールイズはあらそう?という顔をするだけで何も言わずにミリシェンス達を眺めていた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。