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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

サジと悪夢

晩秋から初冬へと季節が移り変わり、身に堪えるほどの寒い夜の日が増えてきた大陸。
ゴルダの家の周りではうっすら雪が積もる日も出てきて、冬本番と言ってもいいくらい。

「また抜け毛」

「そうだな、冬毛になる時期なら仕方ない、掃除すれば済む話だ」

素足で歩きたくないほどに床が冷えたある夜。
就寝のためにベッドへ入ろうとしていたのだが、サジが抜け毛を気にしてベッドに入ろうとしないのだ。
ゴルダはそれを仕方ないと寛容な態度を取るが、それでもサジはベッドに入るのを渋る。

「参ったな」

「寝ないの?まだ寝ないなら明かりを消して居間に行ってくれない?」

エプロンを外し、2つのとんがりがある就寝用の帽子を被ったミリシェンスが、眠そうな顔をしながらそう言う。
最近は、ゴルダに対してのみ碎けたしゃべり方をするようになってるが、ゴルダは一切気にしていない。

「分かった、サジ。居間行くぞ、そんなに気になるなら少し梳いてやろう」

ゴルダはミリシェンスの言葉に頷き、サジを連れて居間へ。

「どの辺だ?」

有毛竜用のブラシをどこからか持ち出したゴルダは、サジにどのへんを梳いたらいいと聞く。

「んー、背中」

サジが背中と即答したので、ゴルダは背中に回ってブラシを当てて梳かしだす。
サジは平熱が40度くらいなので、素足で歩きたくないほどに冷えているとかなり暖かく感じる。
なお、梳かされている間サジは微動だにもしなかった。

「これはかなり抜けたな」

ゴルダが梳かし終えたころには、両手には収まらない量の毛が床に落ちていた。
サジは有毛種で長毛なので、抜け毛がこんな量になるのは無理もない。

「寝よ?寝よ?」

梳かしてもらった直後から、サジはそう言いながら舐めてきた。
ゴルダはこれに一切動じず、サジが満足したところでタオルで拭く。
その後また部屋へ行き、2人はベッドへ。

「おやすみ」

「おやすみ」

そして、その日はこのまま就寝できるはずだった。

床に就いてどれくらいの時間が経っただろうか。
半覚醒睡眠中のゴルダの耳に、やたらとうなされているサジの声が入る。
何事かと思ってサジの方へと向き直り、その身に触れた時。明らかにおかしい点に気付く。
それは体温が下がっているということだ。
火属性を持つ量の体温が下がる要因は様々だが、精神的な要因もないわけではない。

「これ以上下がると危ない」

火属性の竜の体温の生命維持に必要な最低ラインを下回りそうだったので、ゴルダは策を講じてこれ以上下がらないようにする。

「う…うーん…」

うなされながら震えているサジを見て、ゴルダはその精神に少し探りを入れる。
それから分かったのは

「悪夢か、しかも深みに入って簡単には抜け出せないタチの悪い奴だ」

サジが何らかの悪夢にうなされているということだった。
しかも運が悪いことに、深みに入ってしまっているタイプの悪夢なので、簡単には目は覚めないだろう。

「まずいな、このままだと無意識下でスイッチが入りかねない」

これ以上何もせずに経過観察だけをしていては大変なことになると、ゴルダはベッドから飛び起きて地下室の薬品庫へ。

「タチの悪い悪夢には聖竜の毛とその角の削り粉。風癒竜の羽毛に月属性の竜の血を少々と聖水…だったな」

悪夢に効く薬の材料を呟きながら、ゴルダはてきぱきと材料を揃えるとすぐに調合を開始。
そして出来上がった薬を持って自室へと戻る。

「少々手荒だが手段を選んでいる時間などない」

いまだにうなされいるどころか、牙ぎしりまでし始めていたサジを見て、ゴルダは出来た薬を片手にサジの側へ。
そして何をするかと思えば、指を噛み切られることも恐れず、サジの口をこじ開けて無理矢理その薬を飲ませた。

「うげがぐっ…おぇっ」

無理矢理薬を飲まされ、しばし痙攣しているかのように身を震わせていたサジだが、すぐに収まって

「んー…メロンメロン」

いつものようにすやすやと寝息を立て始めた。

「トラウマを持っているのは知ってるが、そろそろ向き合わせないといかん時期か?」

ぐっすりと寝ているサジを見ながら、ゴルダはそんなことを考え始めるのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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