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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

メリエルと焼き芋

秋も峠を越え、冬の気配が感じられ始めたある日のこと。
家の畑ともう一つの牧場にある畑からサツマイモを収穫し、出荷して残ったものから種芋を分別した後のさらなる残りでゴルダは庭で焼き芋をしようとしていた。
市街地でこんなことをやろうものなら、警察や消防が来て大変なことになるのだが、ゴルダの住んでいるところはまったくの農村地帯。
火の扱いにさえ気を付けていれば何の問題もないのだ。

「焼くとはいっても、落ち葉寄せ集めてやるわけにはいかんから竈だな」

などと言いながら、つい最近羊竜肉を使ったピザを焼いて以来ほったらかしにしていた竈の中の燃えカスを掃除しながらゴルダはそう呟く。
燃えカスといっても、木炭の燃え尽きた後の灰や燃え残った木炭があるくらいで、それ以外は何も入っていない。
たまに、燃えカスを掃除しているとゴキブリなどの虫の死骸が炭化して出てくることもあるが、今回はそんなことはなかった。

「よーし、これでいいだろう」

竈の中から顔をひっこめ、煙草のようなものに火をつけて吸いながらゴルダはまた呟く。
なお、マティルーネは竈の上に座ってゴルダを見下ろしていた。

「マティルーネ、そこどきな。火付けるからな」

竈のそばにあった万年桜の木炭の入った箱を引き寄せ、中へその木炭を入れながらゴルダはマティルーネに竈から離れるよう促す。
するとマティルーネはえーと言いたげな顔をしてゴルダの頭の上に乗る。
一方、家の中では

「メリエル様のお出ましよー…ってまた変なの投げつけてこないでよ!」

「お邪魔しますくらい言ってください、ゴルダ様がいいとはいっても私が許しませんよ」

いつもの2人がまた何かを言い合っている。
どうやら、またミリシェンスがメリエルに手裏剣を投げつけたらしい。
メリエルは日頃からお邪魔しますなどとは言わないので、それが仇になったようだ。

「タイミングがいいんだか何だか」

「何よその引っかかる物の言い方は」

メリエルが庭にまっすぐやって来たので、ゴルダは煙草のようなものを消してメリエルの方を向く。
そのゴルダの引っかかる一言に、メリエルは何よと追及する。
メリエルの追及に対し、ゴルダはふっといつものように鼻で笑うと

「焼き芋だ、つい先日収穫したばっかりの奴でな」

焼き芋をするつもりだと返す。

「ふーん、それで私にもくれるの?」

メリエルはそれにふーんと一見興味がなさそうに答えた後に私にもくれるのかと聞く。
普通なら、なんだこの図々しい奴はと思われること間違いなしのメリエルの一言に対してゴルダは

「種芋に回しきれないくらいある、食えるだけ食ってけ」

食えるだけ食って行けと返してまた竈に木炭を入れ始める。

「落ち葉の中で焼くんじゃないの?焼き芋って」

そのゴルダの動きを見て、メリエルは落ち葉の中で焼くんじゃないかと疑問を投げつけた。
ゴルダはそれに対して焼ければいいと返し、木炭に火をつける。

「サラマンダーに火起こしさせたらすぐ焼けるんだけど呼ぶと余計なこと言われそうだから呼びたくないのよね」

メリエルはそう言いながらゴルダの頭の上に乗っていたマティルーネを呼ぶ。
するとマティルーネはスッとメリエルの頭の上に乗ると、なぜかその髪を食みだした。

「ちょっと、やめなさいよ」

マティルーネに髪を食われたメリエルはやめなさいと言ってやめさせようとしたが、その際に手を噛まれそうになった。
メリエルは過去にマティルーネに指を噛まれたことがあり、マティルーネを頭に乗せる際は噛まれないように注意はしているのだが、それでもよく噛まれる。
だが、本気で噛まれたのは最初の一度きりでそれ以降は噛んできても傷ができないくらいの強さでしか噛んでこない、
それでもまた本気で噛まれるのではないかと、メリエルは心配しているのだが。

「これは…火が強いか?」

その頃、ゴルダはようやく竈に芋を入れて焼き始めていた。
どういう感じで焼こうとは決めていないので、強火で一気に焼いてしまおうとしていたのだが、逆に火力が強すぎて皮が焦げていたのだ。
なので、ゴルダはこれ以上風を送ったりして火力を上げることはせずに、燃えている木炭を抜いたりして火力の調整をしている。
それでも、竈の中からは芋の焼けるいい匂いがして食欲をそそっているが。

「まだ焼けないの?」

「中途半端に焼けたやつが食いたいならいまだしても構わんぞ?」

どこからか取り出した竹串で引き寄せた芋を刺して焼け具合を見ているゴルダに、メリエルはまだ焼けないのかと聞く。
それにゴルダは、中途半端にしか焼けてない芋を目の前に差し出し、これでいいならやるぞと言う。
メリエルは中途半端にしか焼けていない芋を見て

「そんな中途半端に焼けた芋、食べれるわけないでしょ。ちゃんと焼いたのちょうだい」

「そらそうだな」

ちゃんと焼けたのをちょうだいと言ってその芋を受け取るのを拒否する。
ゴルダはそのメリエルの反応を見て、それはそうだろうとまた竈の中へ芋を戻す。

「あんたは焼き芋食べる?」

いつの間にか自分の頭の上から降りていたマティルーネにメリエルはそう聞く。
だがマティルーネはうんともすんとも言わない表情をしてメリエルを見るだけであった。
それにメリエルは変なのと言って、ずっと家とバルコニーの出入り口の窓のそばに座っていたレルヴィンを触る。
レルヴィンとはそこまで仲がいいかどうかは不明だが、少なくとも煙たがられてはいない。

「わっ…っと、びっくりするじゃないのよ」

メリエルに触られて今の今まで座っていたレルヴィンが起き上がったため、メリエルはびっくりしてその場で尻餅をつく。
だが、レルヴィンはそれ以上何かをするわけでもなく、ただメリエルをじっと見ていた。
そんなレルヴィンを見て、メリエルは

「起こすの手伝うとか…やっぱりいいわ」

起こすのを手伝ったらどうなのと言いかけたが、レルヴィンがそれをしたらどうなるか分からないのでメリエルは言うのをやめる。

「おう、レルヴィンに変なことされてないか?それより芋が焼けたぞ」

そこへ焼きたてで相当熱いはずの芋を難なく手に持ちながら、ゴルダが芋が焼けたと言ってきた。
メリエルはそれを見て熱くないのかとも思ったが、そこはゴルダなら仕方ないと割り切って紙に包まれた焼き芋を受け取る。

「あら、やけに蜜が垂れてくるのねこの芋」

受け取る前から包んでいた紙に芋の蜜がにじんでいる状態だったので、メリエルが芋を紙に包んだまま割ってみると、湯気と共に程よい芋らしい黄色の中身にとろっと蜜が垂れてきた。
そして、口に運ぶと焼きたての暖かさが芋の甘みを増幅させ、口に運ぶ前から強烈に伝わってきた甘さがより強く伝わってくるのだ。
なお、ゴルダが焼いているこのサツマイモは、品種は不明だが比較的糖度が高いもののようだ。

「あー甘い、焼き芋はこうじゃなきゃね」

ほくほくと焼き芋を楽しんでいるメリエルであったが、芋が焼けたというゴルダの声を聞いてやって来たミリシェンスに

「食欲の秋の反動って、意外と大きいのよ?」

と言われて

「余計なお世話よ!」

メリエルはいつもの調子で余計なお世話だと返すのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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