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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

メリエルとミリシェンス

夏空にモクモクと雲が湧いて不快な暑さが感じられ始めたある夏の午後。
メリエルはいつもの調子でゴルダの家に事前連絡もなしに来ていた。

「期待の天才のメリエル様が来たわよー」

これまたいつものようにお邪魔しますも言わずに玄関を開けて家の中へ入るメリエル。
ゴルダから随分前に許可を得ているので全く気にしなくなっている。
だが今日は違った。
家の中へ入った瞬間、奥の方からなぜか手裏剣が飛んで来たのだ。

「ちょっと、危ないじゃない!」

意外と見切れる投擲の仕方だったので、メリエルは即座にしゃがんで手裏剣を避ける。
一方避けられた手裏剣は、そのまま外へと飛んでいった。

「私の手裏剣投稿を避けるとは、やるわね。どこの馬の骨かは分からないけど、ゴルダ様の家に勝手に、しかも事前連絡なしに入って来るとは何者なんでしょうかね?」

すると、奥の方からフィルスやイファルシアとも違う、白い前掛けエプロンをした青紫の毛のカーバンクルが次の手裏剣を構えて立っていた。
メリエルはそれにえっ?という顔をしていたが、向こうが自分に明確な敵意を持っていたので大剣を構えようとしたが、それより早く青紫の毛カーバンクルが再び投擲した手裏剣に阻止される。

「今出ていけば深追いはしないわ、どうする?」

今度はポーションのようなものを持って距離を縮めて来る相手に、メリエルは内心どうすりゃいいのよと思っていた。

しかし次の瞬間

「ミリシェンス、俺の友人に何してんだ」

「あらあら、ご友人でしたの?それよりどういうことか説明してくださいな」

庭の畑から戻って来たゴルダが青紫の毛のカーバンクルを制す。
すると、ミリシェンスと呼ばれたカーバンクルはゴルダに向き直り、どういうことなのか説明してよと迫る。
それにゴルダはやれやれと言いながらミリシェンスに説明する。

「あいつ、いつの間にか従者雇ってたのね。それにしても物騒な従者だこと」

さり気なく頭に乗って来たマティルーネを触りつつ、メリエルは青紫の毛のカーバンクルこと、ミリシェンスに説明するゴルダを眺める。
それから30分ほど経っただろうか、ミリシェンスはようやく納得したような顔で

「最初に説明して欲しかったわ、友人が居るならそうと仰ってくださいな」

「俺の能力を不死以外丸々コピーしたようなお前なら、教える必要はないと思ってたんだが」

「記憶のコピー及び共有まではできませんのよ?」

「なんだそうか」

と、ここで30分あまりほったらかしにされていたメリエルが

「いつまで私をほったらかしにするつもりよ!」

と言ったことで、ゴルダとミリシェンスはようやく話をやめる。

「…とりあえず茶を、あとメリエルに水羊羹」

「承知です」

ゴルダに無言で座るよう言われ、メリエルは不機嫌そうにソファに座る。
メリエルがソファに座ると、マティルーネは頭から降りて膝に座った。

「あのミリシェンスってカーバンクルは誰?前来た時には居なかったけど?」

ひとまず落ち着いて機嫌を直したメリエルは、改めてミリシェンスが何者なのかを聞く。
ゴルダはそれにソファに乗ろうとしたレルヴィンを制しながら

「依頼で貰った魔法書に名を書いたら召喚された、それだけだ。それ以降は俺が不在の間の家事なんかを任せている」

依頼で貰った魔法書に名を書いたら召喚されたと返す。

「ふーん、意外と役に立ってるのね。でも手裏剣投げて来るのはどうなのよ」

メリエルの手裏剣を投げてくるのはいかがなものかという一言に、ゴルダは

「それは俺のミスだな、召喚時の契約者のコピー能力を過信していた」

自分のミスだとさらっと流す。

「はいお茶です。それと水羊羹」

そこへ、ミリシェンスが割り入るようにして茶と水羊羹を持ってきてテーブルの上に置く。
ゴルダは何も言わずに茶をすすり、メリエルは水羊羹を切り分けて口へ運ぶ。

そんな2人を見て、ミリシェンスはメリエルの方を数十秒じっと見た後に

「なるほど、そうなんですね」

1人何か納得したような一言を漏らす。

「何が分かったってのよ?」

メリエルの問いにミリシェンスはふふっと笑って

「素質という器の大きさかしら、それなりに大きいのね。でも活かせてないみたい」

と答える。
それにメリエルは

「余計なお世話よ」

とだけ返し、切り分けていた水羊羹を再び口へ運ぶ。
一方、それを見ていたゴルダはどこまで俺に似ているんだと言いたげな目線をしながら茶を全部飲み干す。

「ところで気になったんだけど、あんた従者なのにその前掛けエプロンだけでいいの?」

水羊羹を食べ終えたエリエルにそんなことを言われ、ミリシェンスは必要ですかね?と言いたげに首を傾げる。

「そんな外出るわけでもなし、その上ミリシェンスは畑仕事もするからその前掛けエプロンもすぐ汚れる。欲しいなら新調するのも考えるが」

そんなミリシェンスを見て言ったゴルダの一言に、ミリシェンスは着れるならばという返事をする。
その返事にゴルダはならば考えておこうという返事をし、台所へ行ってしまう。

「ところであんた、マティルーネよりふわふわしてそうね」

台所へ行ってこちらを見ていないことを確認したメリエルは、ミリシェンスに意味深な一言を言う。
それにミリシェンスは何ですかと言わんばかりの顔をして

「これでも毎日自分で手入れしてるのよ、大変だけど」

毎日自分で手入れしていると少し自慢げに言う。
それを聞いたメリエルは、そっとミリシェンスに手を伸ばして触れた。
するとミリシェンスはくるっと一回転してメリエルの手を避ける。

「今触ろうとした?」

「いいじゃない、本当にふわふわしてるか確かめても」

触ろうとしたかと聞いてきたミリシェンスに、メリエルはふわふわしているか確かめるために触ってもいいじゃないとまた触ろうとする。
しかし今度は手が届かなかった。

「そういうのに目がないの?」

意地でも触ろうとするメリエルに、ミリシェンスは少し意地悪そうに聞く。
それにメリエルは

「あったりまえでしょ、もふもふなら触らないと損でしょ」

ドヤ顔でそんなことを言う。
するとミリシェンスはしょうがないわねという顔をして

「額の石触ったら承知しないから」

額の石は触るなと念を押してからメリエルに近寄る。
そしてメリエルはミリシェンスの頭をそっと撫でた。
確かに、ミリシェンスの毛は見た目通りにふわふわしていたが、それとは別に不思議な何かをメリエルは感じた。

「魔力吸って無いでしょうね?」

「私に触った者から吸おうと思えば吸えるけどい、今は必要ないからしないよ?」

その不思議な何かが魔力を吸っているのではないかとメリエルは勘ぐったが、ミリシェンスは必要がなければそんなことはしないと言う。
その後も何度かそれを感じたが、特に何も起こらなかったのでメリエルは気が済むまでミリシェンスを触っていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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