FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

それぞれの七夕-メリエル編

今年もドランザニアに七夕の日がやって来た。
だがしかし、そんなことはどこ吹く風なメリエルはセイグリッド城の庭園の木の木陰で相変わらず暑い暑いと言っている。

「あっついわね、でもなんで今日に限って城の庭園に笹の葉が立ててあるのかしら?」

この時点で、メリエルはこの世界にも七夕があることをまだ知らない。
それもそのはず、この世界に来た時は秋口で七夕などとうの昔に終わっていたのだから。
メリエルが不思議そうに笹の葉を見ている間にも、その笹の葉には次々と短冊を下げていく者が絶えなかった。

「木陰でも暑いならウンディーネでも呼んだらどうだ、お嬢さん?」

「誰がお嬢さんよ!私は天才召喚士のメリエルよ!」

聞き慣れた声でウンディーネを呼んだらどうだと聞こえてきたが、メリエルはその声にお嬢さんと呼ばれたことに過剰に反応し、ついつい自分の名を名乗ってしまう。
無論、その声の主は

「あんたねえ…」

「暑いなら中来い、アイスでも食って涼しくなれ」

不釣り合いな日傘を片手で差し、頭にはマティルーネを乗せ、氷麟に乗っかっている他でもないゴルダだった。
ゴルダはメリエルに呆れ口調であんたねえと言われると、氷麟から日傘を差したまま降りて

「そうカッカすんな、余計暑くなるぞ」

日傘をメリエルに差し出し、自分は頭部の直射日光だけを防ぐ帽子の魔法でどうにかした。
ゴルダから日傘を差し出されたメリエルは、それをたたんでゴルダに返すと

「いらないわ、ここから建物の影までそう遠くないし。それより、庭園のこの大量の笹は何?」

庭園に無数に立てられている笹のことを聞く。
ゴルダはこの問いに、知らなかったか?と言いたげな口調で

「この笹が何だと?七夕の短冊を下げる笹に決まってるだろ」

七夕の短冊を下げる笹だと即答。
ゴルダの口から七夕と言う言葉を聞いたメリエルはぽかんとして

「この世界も七夕ってあるの?」

「そうだ、さっきも言っただろ」

と改めて聞き直す。
ゴルダはそれにさっきも言っただろと返した。
するとメリエルは、何かを閃いたかのような顔をして

「私も短冊書きたい」

自分も短冊を書きたいと言い出したのだ。
ゴルダはメリエルが短冊を書きたいと言い出したのに対し

「書きたいならそれはそれで構わんが」

何か意を含んだような返事を返す。
メリエルはこれには何の反応も示さず、ゴルダの後を追った。
そして、ゴルダの後に次いでメリエルがやって来たのはシアの塔の上。
なお、氷麟は下の方で休憩している。
塔の頂上が雲より高いところに位置するため、暑いどころか肌寒く感じるようなこの場所は真夏日にはもってこいの場所だ。
こんな塔の上にもゆうに5メートル以上はある笹が立てられており、無数の短冊の重みで枝が垂れていた。

「ねえねえ、この笹の短冊全部白紙なんだけど?」

メリエルは、笹に下げられていた短冊が全て白紙なことに気付いてゴルダにどういうことかと聞く。
しかしゴルダは何も答えず、マティルーネに上の方にある短冊を取ってもらっている。

「何よもう、人が聞いてるのに」

「この短冊は、書いた者の念が強いほど叶うように細工してあるのよ。だから全部白紙なの」

「きゃっ、ってもう驚かさないでよ」

またもや聞き慣れた声とともにふわふわしたものが体に触れたので、メリエルは驚いて後ろを振り向く。
すると、そこにはシアが10メートルはあろうかという笹を持って立っていた。
しかも同じ短冊を無数に下げたままで。

「念が強いほど叶うってことは何でも叶うの?」

「そういう訳じゃないわ、悪い願い事は絶対に叶わないし、そうでなくとも叶わない願い事はたくさんあるわ」

なんでも叶うのかと、少々期待の眼差しをシアに向けて聞くメリエル。
しかし、シアはあっさりと悪い願い事は絶対に叶わないしそうでなくとも叶わないものもあると返す。

「なーんだ、なんかがっかり」

「あら、定義書き換えでどうにかなる願い事もあるのよ?」

「やめとくわ」

とここで、ゴルダが笹の上の方にあった短冊をマティルーネに取ってもらい終えてメリエルに渡してきた。
メリエルはゴルダから短冊を受け取ると、どこからか出した羽ペンで願い事を書こうとしたが、インクが短冊に吸収されて書けなかった。
どういうことなのとメリエルが必死に書こうとしている側で、ゴルダは短冊を持ち、額に当ててて何かを念じている。
一方、マティルーネは口に咥えて同じようなことをしていた。

「あらごめんなさい、これ念書しないといけない短冊だったわ」

ここでシアがこれが普通の短冊ではないことに気づき、自分が持ってきた笹に下がっている短冊をメリエルに渡す。
本当に今度は大丈夫なのかとメリエルが書いたところ、普通に書けたのでメリエルは何を書くかを悩み始める。
一方ゴルダとマティルーネは念書で書き終えたらしく、シアから普通に書ける方の短冊も貰っていた。

それからだいたい10分後。

「そんなに悩むこと?3枚くらいまでなら書いていいのよ?」

いつの間にかシアにもふもふされてる状態で、まだ何を書くか悩んでいるメリエル。
なお、ゴルダはシアにもたれかかってマティルーネを頭に乗せたまま昼寝をしている。

「うん、もうこれでいいわ」

「あら、なにか思いついたの?」

それからさらに5分ほど悩んだ挙句、メリエルはようやく願い事を決めたようで短冊にさらさらと願い事を書いていく。

「うん、もうこれでいいわ。それで、どこに下げればいいの?」

「私にちょうだい、下げておくから」

書き終えたメリエルは、どこに下げればいいのとシアに聞く。
するとシアは、自分が下げておくからちょうだいと言う。
それにメリエルは短冊って自分で下げるものでしょと言って譲らず、シアが持ってきたあの10メートルはある笹に下げる。

「あんたは下げたの?」

「ん?ああ、とっくの昔に下げた」

「そう」

この後、メリエルとゴルダはシアに城で行われている七夕祭りに参加したという。

ここで、メリエル達がどんな願い事を書いたのかというと、メリエルは

「この世界の知り合いともっと親密になれますように」

と書き、ゴルダは言語をあれこれ混ぜて書いているので分からず。

マティルーネは

「より多種多様な人参を発見したい」

と書いた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |
| HOME |