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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

幻獣の里へ行くようです

リフィル王国王都のはるか北の地に、その北部の土地の3割を占める幻獣の里というものが存在する。
ここにはカーバンクルなどの幻獣の他に、幻竜族や古代エルフ族などが小さい村を転々と作って暮らしていという。
しかし、この里はあろうことかアルカトラスやシア、そしてリフィル国王のアルガティアですらほぼノータッチという場所。
その理由は定かではないが、この里全域にマナとエーテルが混同しているからではないかという話もあるようだ。
なので、エーテルに対して何らかの耐性やエーテルをマナに変換する能力を持たずにこの里に来るのはとても危険。
しかも夜になるとエーテルの比率が跳ね上がるので、余計に危険なのだ。
そして、そんな里の平原を歩く3人の姿があった。

「ふうむ、エーテルカウンターが反応しっぱなしだ」

エーテルカウンターとマナカウンターを手に持ち、慎重に歩いているのは、ほかでもないゴルダ。
その後ろからは、フィルスとエゼラルドがついて来ている。
なおマティルーネはエーテルへの耐性の有無などが不明なので連れてきていない。

「ならこの辺りは避けたほうがいいね」

そう言ったのはエゼラルドで、フィルスはエゼラルドの頭に座って遠くを眺めている。
なぜゴルダとエゼラルドにフィルスが幻獣の里へやって来ているのか?
それは、数日前にさかのぼる。

「幻獣の里を知っているか、だと?知っているも何も昔イレーヌとその近くまで行ったことがある」

「その里へ行ってほしいの、私の代わりに」

珍しくアルガティアに呼び出され、フィルスとイファルシアにイレーヌも入れてティータイムをしながら話をするゴルダ。
呼ばれた理由は、アルガティアの代わりに幻獣の里へ行ってほしいというものだった。
それにゴルダはちょっと待てよと言って

「なんでまた急に幻獣の里に関わろうと思った?今の今までノータッチだと爺さんから聞いていたが」

なぜ今になって関わりが皆無だった幻獣の里と関わろうなどと思ったのかという理由を問い質す。
それにアルガティアは、1枚の手紙を取り出す。
一見すると普通の手紙だが、ゴルダにはこの手紙にエーテルがべったりついていることが簡単に分かった。
しかし、ゴルダはアルカトラスとシアの血を引いているので完全にではないものの、そこそこエーテルには強い耐性を持っている。
なので、エーテルがべったりついていても構わずにその手紙を取って読む。
だがしかし、ゴルダにはこの手紙の言語が何なのかが理解できなかった。
古代エルフ語や古代竜語に地球の主要言語と一部の少数民族の言語までルライエッタを含めた賢竜に教えてもらってある程度理解できるゴルダでさえもだ。

「ちょっと貸して、これカーバンクル族で使われてる幻獣語だから古代エルフ語なんかとはまたわけが違うよ」

すると、フィルスが手紙を貸してと言ってきたのでゴルダはフィルスに手紙を渡す。
手紙を受け取ったフィルスは、また別の紙にその手紙の内容をアルガティアやゴルダが最も理解しやすい英語に翻訳して見せる。
英語に翻訳された手紙の内容を翻訳すると、次のようなものになった。

「今、幻獣の里では幻獣族を診れる医者が足りなくて困っています。アルガティア女王陛下、どうにかできませんでしょうか?」

その内容を読んだゴルダは、なぜ自分がアルガティアの呼ばれたかの理由を理解した。
ゴルダは竜医である以前に、幻想獣医でもあり、幻獣族の診察および治療も可能な存在。
なので、必然的にこういう案件でアルガティアに呼ばれるのは無理もない。

「行ってくれる?」

「構わんが、幻獣語通訳できるようにフィルスかイファルシアを連れて行きたいんだが?」

行ってくれるかどうかを聞いてきたアルガティアに、ゴルダは幻獣語の通訳にフィルスかイファルシアを連れて行きたいと言う。
それにアルガティアはうーんと考えて

「エゼラルドとフィルスを連れてってもいいわ」

エゼラルドとフィルスを連れて行くことを許可してくれた。
こうして、ゴルダが幻獣の里へ行くことになったのが数日前の出来事である。

「何か見えるか?」

「何も。でも僕以外のカーバンクルの気配は強くなってきたかな」

平地と草原と森ばっかりで何も変化がない場所を歩き続けてはや2時間以上。
村らしい村は見えず、見えたといえばこちらに気づいていない魔物くらい。
それ以外はたまにエーテルカウンターが警告音を出すほどのエーテルの吹き溜まりがあったくらい。

「ううむ、GPSも使い物にならんか」

リフィルでも平気で電波の入る自分の携帯のアプリで地図を見ようとするも、通信エラーが返されて地図が見れなかったのでゴルダは携帯を戻す。
かといって、アルガティアから渡された魔法の地図はエーテルのせいなのかどうなのかは不明だが現在地どころか周辺の様子すら表示しきれていない。

「ちょっとその地図貸して」

ゴルダがどうにかならないかと魔法の地図をいじっていると、フィルスが地図を貸してと言い出す。
それにゴルダは、何かいい方法でもあるのか?と言いつつフィルスに渡した。
地図を受け取ったフィルスは、自分の体毛を引き抜いたかと思えばそれを地図に散らす。
すると、今までまともに表示されていなかった地図がきれいに表示されて村の位置もはっきり分かるようになったのだ。

「アルガティアがエーテル対策せずに渡したみたいだね、でもこれで大丈夫」

フィルスから地図を返され、ゴルダは現在地から縮尺と地図上の距離を計算して実際の現在地から村までの距離を割り出した。
その結果は、このままのんびり移動していたら夜中にしか着かない距離だったのだ。

「これは困った、エーテルが多い場所を避けて通らねばならんのに村までの距離がこれとは」

「飛ぼうか?上空のエーテルがどれくらいかは分からないけど」

困ったと呟いたゴルダに、エゼラルドがそこまで飛ぼうかと案を出してきた。
しかし、大気中のエーテルの濃度がどれくらいなのかが分からない以上は上空を飛ぶのは危険である。
フィルスとエゼラルドはエーテルをマナに変換する能力を持っているので何ともないが、ゴルダは強い耐性があるだけなのであまり長時間高濃度のエーテルに晒されるのはよろしくない。

「背に腹は代えられないな。よし、それで行こう」

最終的にゴルダが下した決断は、エーテルの蓄積量が危険レベルに達した時は薬で抜き取るということでエゼラルドに村まで飛んでもらうことになった。
そしてエゼラルドはゴルダを背に乗せ、村のある方角へと飛び立ったのであった。

「上空だとあまり反応しないな」

「風向きもあるかもね」

上空でも常にエーテルカウンターを出しっぱなしにして値を注視しているゴルダ。
フィルスの言うとおり、今日は風向きがいいためか、エーテルカウンターは正常の値の域を出ていない。
エゼラルドも、少しでもエーテルの濃度に違和感を感じるとそこを避けて飛ぶようにしてくれていたので、ゴルダのエーテル蓄積量はそこまで上がらなかった。

「この辺かな?」

「そうだな、この辺からは降りて歩いて移動しよう」

村の少し手前まで来たところで、ゴルダはエゼラルドに降りるように指示。
エゼラルドは徐々に高度を落として軽い音とともに地面へ着地。
飛び始めて3時間ほど経った時のことであった。
日がすでに傾き、降りた瞬間にエーテルカウンターが要注意の値の域を指したのでこれは早く村に行かねばと3人はそそくさと村まで移動する。

「ものみごとにカーバンクル…と幻竜族か?それしか住んでないな」

「たぶんここがカーバンクル族が住む村で一番大きかった気がするよ」

一行がたどりついた村は、幻竜族とカーバンクル族が住む村。
幻竜族サイズに合わせて家が建てられているためか、そこまで小さいとは感じず、いたって普通の村だ。
全員こちらを凝視しているが、特に警戒している様子は感じられない。

「どこか泊まれるところないか聞いて来てくれんか?」

「ちょっと待ってて」

ゴルダはフィルスにどこか泊まれる場所がないか聞いて来てくれと頼み、フィルスが戻ってくるのを待つ。
するとフィルスはほんの数十秒で戻って来て

「どうやらアルガティアに手紙を出したのはこの村の村長みたいだね、その村長が泊めてくれるみたいだよ」

村長が泊めてくれるということと、手紙はこの村の村長が出したということを伝えてきた。
ゴルダはなら話は早いとその村長の家へ。

「どうも、村長のルヴェルニッチ=シェルルです」

村長はどうやらドランザニア語が話せるようで、ドランザニア語で挨拶してきた。
性別は今のところ分からないが、物腰の落ち着いた薄紫と白い毛のバランスが取れた容姿の幻竜族で、目は透明に近い紫色をしている。

「アルガティアに頼まれて来たゴルダだ、一応これでも幻想獣医だ」

「そうですかそうですか、わざわざこんなところまで来ていただけるとは」

ゴルダが自らを幻想獣医であることを名乗ったところ、ルヴェルニッチは急にゴルダの手を握ってきた。
それにゴルダは無表情な顔で

「医者がいない、ということだったが。ほかの村にもいないのか?」

ゴルダのその問いに、ルベルニッチは握っていた手を離すと

「居ないわけではないんですが、どうにも自分の村で手一杯なようで来てほしいと手紙を出しても断りの返事しか返ってこないのです」

居ないわけではないが、慢性的な医者不足のせいか手紙を送っても断りの返事しか返ってこないという。
それにゴルダはそいつはかなり深刻な問題だなと独り言を言うと

「今この村に医者に診せなければならん奴はいるか?今日は無理だが明日朝一番でそいつを診察したい」

この村に医者が必要な奴はいるかとルヴェルニッチに聞く。
ルヴェルニッチは少し渋い顔をして

「居るには居るんですがね…まあいいです。明日また詳しくお話しします」

明日また詳しく話すと言って、その後3人に夕食を振る舞った。

「あの物言い、何かが引っ掛かる」

夕食を終え、風呂に入っていたゴルダはルヴェルニッチが言っていたことを模索していた。
居るには居ると言っておいて、急に話の腰を折ってまた明日話すと言い出したあの態度の裏には何かがあるとしか思えない。
ゴルダはそう確信していたのだが、それを気にしても仕方がないのでさっさと明日の準備をして今日は寝ることにしたのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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