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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

祝え、何を?誕生日を

「んむー…こんなにもふもふ…」

「ぐっすりだな、よしよし」

未だにぐっすり寝ているフウを見て、ゴルダはそう呟く。
今日はフウにとって少し大切な日、誕生日なのだ。
しかしそれはシアがフウが生まれた世界での暦を、この世界の暦換算で割り出したものなのだが、本人はそれには気付いていない。

「どこ行く?」

「ああ…ちと留守頼まれていいか?」

「やー」

フウが寝ているのを確認し、出かけようとしたゴルダをアルガントが呼び止めた。
それに呼び止められたゴルダは、留守番しててもらえないかと言う。
アルガントは留守番を了承して、ゴルダに手を振って見送った。

「第一ミッションは成功。さてどんなケーキがいいかだな」

どうにか家を出、市街地の方へと軽トラを走らせ始めたゴルダ。
フウがどんなケーキが好きなのか分からないので、どういうのを作るかで悩んでいた。
ちなみに、今日のフウの誕生日はコロンやアルガティア達を交えて行う予定。

「レアチーズケーキか、それとも普通のチーズケーキか…あるいは生クリームかチョコ。どれも捨てがたいな」

一向に考えがまとまらないまま、ゴルダはそのまま買い出しに向かったのであった。
一方その頃、アルガティアというと

「悪いわね、手伝いからわざわざ来てもらって」

「いいんです、料理もお菓子作るの好きなので」

早めにやって来たコロンと厨房でフウの誕生日会に出す料理と歌詞を作っていた。
ケーキはどうにかフウにバレないようにゴルダが作ってくるとのことだったので、アルガティア達は作らない。

「じゃあ、クッキーの方お願いするわ」

「任せて」

コロンにクッキーを作るのを任せ、自分はフウが好きそうな料理を直感で作り出すアルガティア。
ちなみにこの直感、わりと当たるようだ。
一応何を作ろうとしているのかを明かしておくと、揚げ物少々とサンドイッチにシチューである。

その頃ゴルダは、スーパーでまだどんなケーキを作るかを悩んでいた。
早く買って帰らないとフウが起きて、作っているところを見られるというのにまだ決められないでいるのだ。

「やはり生クリームでいくか?いやいや、チョコも…ええい、こうなったら小さいのを両方だ」

チョコか生クリームかの2択まで絞ってどっちにしようか決められずにいたゴルダだが、最終的に小さいのを両方作ることにした。
そうと決まればと、ゴルダは値段も見ずに材料をカゴに入れてそそくさと会計を済ませて家へと戻る。

「ただいま」

「あん?帰ったのか、フウならまだ寝てっぞ」

「それは都合がいい」

帰ってくると、居間のテレビでバイオハザード6をしていたウラヘムトが、フウはまだ寝ていると言ったので、ゴルダは好都合だと台所へ。
ケーキの土台自体は両方同じなので、まずは土台の部分を作り始めた。
なお、ゴルダは菓子作りもごく普通のパティシエレベルの腕前はあるらしい。
それから大体1時間後。

「よし、土台は完成だ」

土台を作り終えたゴルダは、次はそれぞれのクリームの方を作り出す。
この時点で、フウはまだ起きてきていない。
クリーム自体はそこまで作るのに時間はかからないので、手際よくやって30分くらいしか掛からなかった。

「さて…次が問題だ」

ケーキ作りにおける最大の難関は、クリームを塗ったりしてちゃんとしたケーキにする工程。
集中力を切らせば失敗確実の作業であり、ここでフウが起きてきたら大変なことになる。
ゴルダは、フウが起きてこないことを確認しながら作業を進めた。
だが、作業を始めて10分くらい経過しただろうか。

「んー、よく寝た…」

どうやらフウが起きてしまったらしい。
一応、ケーキを何のために作っているのかは嘘をついて誤魔化せるが、それでも集中力が途切れるのは間違いなし。
ちゃっちゃと完成させてしまおうと、ゴルダが作業の手を速めた時だった。

「エ〝ェーイ」

どういうわけだか、突如としてアルガントが部屋のドアを押さえつけ、フウが出てこれないようにしたのだ。

「あれ開かない?なんでだろ?」

ガチャガチャと開けようとするフウだが、仮にもアルガントも竜。
フウくらいの力ではびくともしないのは目に見えていた。
ゴルダはこれをアルガントの枠な気遣いだと思い、アルガントがドアを押さえつけている間に急いで完成させ、冷蔵庫にケーキを隠す。

「ふう、やっと開いた…」

ゴルダが冷蔵庫にケーキを隠したと同時に、アルガントは何事もなかったかのようにドアの前から退く。
すると、フウが前のめりで倒れこみながら部屋から出てきた。
フウは間に合ったかという顔をしているゴルダを不思議そうに見ながら

「何かあったの?」

と聞く。
すると、ゴルダは何でもないと嘘をついてフウの遅い朝食の準備を始める。
フウはそれを見て変なのと言いながら食卓の椅子へ座った。
流しの中に洗い物が溜まっているが、フウは気にすら止めずにゴルダの用意した遅い朝食を食べ始める。

「昼後、アルガティアのところ行くからな」

「なんで?」

「行ってからのお楽しみだ」

その朝食の最中、ゴルダから昼後にアルガティアところへ行くと言われ、フウはなんでと聞く。
しかしゴルダは行ってからのお楽しみだと、はぐらかして答えてはくれなかった。

「変なのー」

フウはそう呟きつつ朝食を食べ終えたのであった。

そして昼後。
フウは先に行っていろと、座標指定テレポートでアルガティアのところへと送られた。
どうにも今日のゴルダはおかしいと薄々気付き始めていたフウ。
とりあえずアルガティアに会わねばと探していると、途中でイファルシアにこっちこっちと手招きされた。

「何かな?」

なんの警戒も抱かずにイファルシアに近寄るフウ。
だが、近寄った途端にフウはイファルシアに目隠しされてしまう。

「わっ…!何、何なの!?」

「落ち着いて、変なことはしないわ」

いきなり目隠しをされて慌てるフウに、イファルシアは変なことはしないと言って落ち着かせる。
それを聞いてフウは、一息ついてどうにか落ち着いた。
なお、その後はイファルシアに手を引かれてどこに連れて行かれるのかも分からないままに連れて行かれるしかなかった。

「目隠し取るわよ?」

「うん」

ある程度歩いたところで急にイファルシアが止まって目隠しを取ると言ったので、フウは了承する。
目隠しを取られたフウの目の前にあったのは、ケーキや料理をが用意されたテーブルと、その側にはアルガティアやゴルダにコロンとイファルシア。

「誕生日おめでとう」

「今日だったのね、おめでとうフウ」

「うふふ、おめでとう」

「驚いた?おめでとう」

そしてアルガティア達に言われたのは、誕生日おめでとうの一言。
フウはあまりの出来事に理解が追いつかず、しばらく上の空になった後に

「な、なんで僕の誕生日知ってるのさ!?」

と全員に突っ込みを入れた。
それに対してはゴルダが

「答えは単純、シアから聞いた。それだけだ」

シアから聞いたと答える。
その答えを聞いたフウは、あはははと笑って

「そうだよね、神様は何でもお見通しだよね」

と気の抜けた声で言った。

「さあさあ、主役も来たし、ろうそくの火でも吹き消してもらおうか」

「それもそうね」

何故か長いろうそくが2つのケーキに1本ずつ立てられており、ゴルダがそれにいつも使っているライターで火をつける。
火が灯ったろうそくは、それっぽい雰囲気を醸し出しながらゆらゆらと燃えている。

「さあ、フウ。一思いにふっと消すんだ」

「交互に消しちゃダメ?」

「好きなようにしていいと思うわ」

ゴルダに一気に吹き消せと言われ、フウが交互に消しちゃダメなのかと聞く。
それにはコロンが好きなようにしてもいいと、ゴルダの方を見ながら答える。
フウはコロンがいいならと言って、ろうそくの火を交互に吹き消した。

「歳をとること、それはまた一つ成長したって証なのよ」

「へえー」

ろうそくの火を消し終えた直後、アルガティアにそんなことを言われてフウはへえと返す。
そこへコロンがフウを後ろから抱きしめて

「誕生日って素敵だと思わない?」

と耳元で囁くように聞く。
それにフウは恥ずかしがりながらもうんと答える。

「さあ、食べようか」

「わーい」

その後は単なる食事の時間となった。
その途中、フウはゴルダに

「どうしてここまでしてくれるの?」

と素朴な疑問を投げかける。
元の世界へ帰れるまでの間、居候させてもらっている側なのにここまでされるとは思っていなかったからだ。

「それはお前…いや、居候でも屋根の下で共に住んでいるからこそだ」

とゴルダは、フウに納得のいかない返事を返した。
そのへんじにフウは案の定納得のいかない顔で

「はぐらかさないでよー」

と言った。
誰かを祝うというのは、とても素晴らしい事なのである。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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