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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

姿同じど雰囲気は違う

雪積もるセイグリッドの城の敷地内をのそのそと歩く雨月と輝星。
雨月はアルカトラスに用があり、輝星は単に遊びに行きたいから付いてきたと言った感じ。

「単独で来れば良いものを…我の仕事のついでに付いてきたのだ?」

「うーん、何となくかな?」

自分は仕事で来ているのに、なぜ付いてきたのかと雨月に聞かれ、輝星は何となくかなという輝星らしい返事を返す。
これには雨月も頭上に黒いもやもやしたものを浮かべながら

「ともかく、アルカトラス殿と我が仕事の話をしている時は邪魔するでないぞ?輝星殿も仮にも次期竜王であろう?分別はつけてもらわねば」

「はーい」

いつものように輝星に仕事の邪魔をしないようにと釘を刺す。
それに対して輝星は、本当に理解しているのかどうかも判断し難い口調ではいと返事を返した。

その頃、アルカトラスの自室では

「うーむ、なぜか知らんが俺が国王の仕事を肩代わりする日はいつも仕事量が多い」

「しかも今日はシアも忙しいからね」

かなり久々にアルカトラスと同じ姿に変身したゴルダがアルカトラスの代わりに仕事をしていた。
ちなみに、アルカトラス本人は異界へ会談に出ていて明日までは帰ってこない。
本来ならシアが肩代わりするのだが、そのシアすらも今日は忙しいとのことでゴルダに白羽の矢が立ったのだ。

「よし、これはいい。次」

「はい兄さん」

ようやく1つの書類の山を片付け、サマカンドラに言って次の書類の山へ移るゴルダ。
ドランザニアを除くすべての国は、未だにアナログで国の仕事に関する書類を処理していて、溜まると毎日このようなことになるのである。
ゴルダもアルカトラスの肩代わり以外でこれ位の量の書類の処理を依頼で請け負ったことがあった。
だが、その時は人の姿かつ、分身を使って並列処理ができたのでよかったのだが、今回は訳が違う。
アルカトラスと同じ姿で仕事をしていないと面倒なことになるばかりか、この姿で分身を使うことは魔力などの関係上無理。
なので、正確かつ素早く処理するしかないのだ。

「ああ、そうだったわね…あんたは知らないわね」

「なんだサフィ?」

と、ここでサフィが部屋に入って来てゴルダを見上げてそんなことを言う。
それに、なんだとゴルダが聞くとサフィは

「つい最近アルカトラスが国交締結した世界から2人。来てるのよね、国王級のが」

「通せばいいだろ、誰なのかは爺さんの記憶借りて調べとくから」

雨月と輝星が来ていることを伝えた。
それに対してゴルダは、アルカトラスの記憶から誰か調べておくから通せばいいだろと返す。

「そう、じゃあ通すけど変なことしないようにね」

「しないに決まっているだろうが」

通すけど変なことをするなと言われ、ゴルダはするかとサフィに返して2人を通させた。


「こんにちはなのだ」

「こんにちはー」

いつもの調子で、サフィにアルカトラスの部屋へ通してもらった雨月と輝星。
だが、アルカトラスは仕事に集中しているのか何も返事も返さないどころか、こちらに気付いてない。
そして、アルカトラスの方がこちらに気付くまで待っていると

「おっとこれは失礼、こんにちは。今日はまたどうしたのかな?」

この時点で、輝星はこのアルカトラスがまたシアと同じような雰囲気を出していることに気付く。
だが、雨月から仕事を邪魔するでないと釘を刺されていたことを思い出し、何も言わないことに。

「実はな…」

「ふむぅ…」

アルカトラスの姿をした雰囲気が違う別の誰かと仕事の話を進める雨月を見て、輝星はいつ気付くのかなとそわそわする。
だが何事もなく話は進んでいき、茶を持ってきたサフィも何も言わない。

「むぅー、絶対アルカトラス様じゃないんだけどなあ」

そんなことを心の中で呟いた輝星は、アルカトラスの部屋を出てサフィを探す。
サフィなら何か知っているはずだと、確信したからだ。

「あら、また城内散策?」

「あっ、丁度良かった」

アルカトラスの部屋から出て1分もしないうちにサフィを見つけた輝星は、アルカトラスに感じていた違和感のことを話す。
すると、サフィからは意外な返事が帰って来た。

「確かにシアでもないのよね。ああ見えてアルカトラスの孫よ、同じ姿取っているだけで」

「えっ?えっ?」

さすがの輝星も、あの雰囲気がシアとも違うアルカトラスが、アルカトラス本人の孫であると聞いて面食らう。
全くそれが理解出来ていない輝星を見かねたサフィは、その孫であるゴルダのことを色々と教えた。

「ああうん、よく分かったよ。でも雨月には黙っておこ」

「混乱するから、やめた方がいいわね」

と言って、2人でアルカトラスの部屋へ戻ると、そこにはいつもの姿に戻ったゴルダと雨月が何やら話をしていた。
そのゴルダの姿を改めて見た輝星は、一瞬だけだが純粋にかっこいいと思った。

「えーっと、輝星だったか?」

「そうです、輝星です」

ゴルダに名前を確認され、輝星はそうだと返す。
するとゴルダの方が顔の前で両手を合わせてお辞儀をしながら

「ゴルダ=アルカトラスだ、以降見知り置きを。輝星」

「初めまして、光竜宮時期竜王の輝星です」

名を名乗ったので、輝星も礼儀として名乗り返す。
その後は他愛のない話をしていたのだが、ふと輝星が

「そういえばゴルダさんって全く表情変わらないね」

ゴルダのあまりの無表情さを指摘。
雨月はこれに、それを聞くのは失礼ではないのかという顔をしたが、ゴルダはどうということはないという目線を投げかけて

「昔色々あってな、それ以来表情が変わったことは全くない」

昔色々あってそれ以来こうであることを話す。
それに対して輝星は

「作り笑いでもいいから、笑ったほうがいいと思うよ?人からの信用はそれなりにありそうだけど、笑えばもっと信用が得られると思うんだ」

より信用を得るためには作り笑いでもいいから笑ったほうがいいと言う。
ゴルダは輝星のこのアドバイスに対しては、鼻で笑いつつ

「そうか、だが俺には無理に近いな。あらゆるものがねじ曲がりすぎた」

自分には無理に近いと返す。
と、ここで雨月が

「自らの可能性を否定するのは本人の自由だが、可能性を否定し続けて踏みにじるのもどうかと思うぞ…?。これは花吹という別の王子の言葉であるが。『芽を出さない種はないし、育たない芽はない。そして葉や花、身を実らせない木もない』というのがある。これはすなわち全ての物事には僅かながらにも可能性はあるということだ」

花吹が昔言っていたことを持ち出して、全ての物事に可能性はあると話す。
それに対してゴルダはそれもそうだがと言って

「それは結局本人の気の持ちよう、ではなかろうか?アドバイスはアドバイスとして受け止めるにこしたことはないが」

本人の気の持ちようだと言った上で、アドバイスはアドバイスとして受け止めると言った。
雨月はそのゴルダの一言に

「なかなか、難しい考えを持っているようじゃな。しかし人の話を受け止められるという点は大きい…では今日はこの辺で失礼しよう」

難しい考えの持ち主だと言った上で、今日はもう帰ると輝星と共に一礼して部屋を出て行った。

「難しい考えの持ち主、か。面白いことを言う奴だ」

雨月と輝星が帰った後、ゴルダはそんなことを呟きながらタバコのようなものを吸い出す。

「悪い人ではなかったんだけどなあ」

「ああいう難しい考えの持ち主は珍しくはないのだ、輝星」

帰り道、雨月と輝星はゴルダのことを話していた。
両者共々、そこまで悪い印象は受けなかったようだが、雨月は難しい考えの持ち主だというイメージをもってしまったようだ。

「また今度、ゆっくり話をしたいなあ」

輝星のその一言に、雨月はそうだなと返した。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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