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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

空から降って来た竜

しんしんと雪が降るドランザニアのゴルダの家。
例年より少し遅めの降雪かつ、初雪から大雪という有様の中でゴルダは畑の雪対策を行っていた。
雪対策とは言っても、防雪用のテントを張るくらいなのだが。

「本当に勘弁してほしい雪だ」

ひとまず防雪テントを張り終え、タバコのようなものを吸いながら一息つくゴルダ。
空は雪雲でどんよりしていて、お世辞にも天気がいいとは言えない。
畑は防雪テントを張ってあるところ以外は一面白に染まっていて、何がどこにあるのか分からないくらいだ。

「何か空から雪以外のものが降ってきそうな天気になってきたな」

とゴルダは空を見上げて呟くが、口は災いの元。
呟いたことは、すぐに現実となった。

「ん?なんだあれは?」

そろそろ家の中へ戻ろうと、タバコのようなものの火を消してからまた空を見上げるゴルダ。
すると、空高くから何か雪以外のものが降ってくるのが見えた。
しかもかなりの大きさと質量を持った物体だ。

「っと、ありゃ竜だ。こうしちゃいられん」

目を凝らしてよく見ると、空から降ってきたのはあからさまに竜だったのだ。
大きさは3メートルくらいの体毛持ちで、2対の羽耳と翼というのがこの位置から確認できた。
竜の姿を確認すると、ゴルダは突如その場でしゃがみこんだかと思うととんでもない高さまで跳躍。
これは、ゴルダが持つ竜の力を僅かに覚醒させて常人の10倍以上の跳躍力を発揮したから出来る芸当である。

「お嬢さん、危なかったな」

「わふ?」

竜の高さまで跳躍し、何百キロもあるようなその体を両手でがっちりと掴んだゴルダ。
なお、竜の方は何が起こったのか分からず、首に巻いているマフラーを揺らしながらきょとんとしている。
ちなみに、なぜゴルダがこの竜が雌だと分かったのかについては、単なる直感であると補足しておく。
そしてゴルダは竜をお姫様抱っこしたまま地面へ着地。
その際、ものすごい音とともに土混じりの雪が飛び散ったがゴルダは全く気にしていない。

「ねーねー、ここどこなのかな?」

「ふむ、言語は通じるか…お嬢さん、名前は?俺はゴルダだ」

シアにも似た白毛の竜に、ゴルダは自分から名乗った上で名前を聞く。
白毛の竜は、ゴルダの目をじーっと見たまま

「私ハーキュリー。はーたんって呼んでいいよ?」

自らの名を、ハーキュリーと名乗った上ではーたんと呼んで欲しいと言う。
ゴルダはそうかと頷くと

「次の質問…と言いたいところだが部屋に入ろう。ここは寒いだろう?」

寒いだろうから部屋へ入ろうと言ったが、ハーキュリーは

「へーきへーき、もふもふあるし。次の質問てなーに?」

もふもふがあるのでここで大丈夫と返す。
ゴルダは本人が大丈夫と言うのなら問題はないなと思いながら

「これが分からんと少々厄介なことになるから聞くが、どこの世界から来たんだ?この世界のものではない魔力が感じられるんでな」

ハーキュリーに、どこの世界から来たのかを聞く。
だが、ハーキュリーはその問いにはあまり答えたくなさそうな顔をして答えようとしない。
その表情を見たゴルダは

「すまんな…答えづらい質問をしてしまったようだな。答えたくないなら黙秘しても構わん」

ハーキュリーに一応謝って、答えたくないなら答えなくていいと言った。
それにハーキュリーは

「気にしなくていいんだよー?」

とゴルダの頭を撫でる。
その際、ゴルダは本能的にその手を振り払って一本背負いを掛けようとしたが、理性がなんとか制した。

「しかし…参ったな元いた世界が分からないと帰しようがないんだが」

ハーキュリーに撫でられながら、ゴルダはそう心の中で呟きつつどうすればいいかを考える。
基本的に、異界から来たものは一旦全てシアの監視下に置かれる。
それはなぜかと言うと、下手に異界から来たものを野放しにしておくと厄介なことになることが多いからだ。
しかし、大抵のものはすぐに常時監視枠から外され、御痛が過ぎない限りは野放しにされる。
ハーキュリーもすぐに常時監視枠から外されるだろうが、元いた世界が分からないのではそうはいかないはずである。

「とにかく、部屋に入ろう。互いに雪をかぶっている」

「はーい」

ここで、互いに大量の雪をかぶっていることに気付いたゴルダはハーキュリーの雪を落としてから家の中へと招き入れる。
なお、アルガントとウラヘムトはゴルダの部屋にこもってゲームをしているので邪魔は入らない。

「なんというか、普通?」

「1人暮らし同然だからな、地味に決まっている」

ハーキュリーを居間に居させ、ゴルダは台所で紅茶を淹れる。
いつもは緑茶を問答無用で淹れるのだが、ハーキュリーにそんなものを出す訳にはいかないと思ったので紅茶にしたのだ。

「紅茶でいいか?」

「わふふー!いいよー!」

紅茶と聞いて、ハーキュリーは羽耳をパタパタさせて喜ぶ仕草を見せた。
それを見たゴルダは、程よい温度で紅茶を淹れてハーキュリーの元へと運ぶ。
なお、淹れ方はあの茶の淹れ方にうるさいサフィのやり方に準じている。

「お砂糖入れないの?」

「ストレートが好みでな」

なんの躊躇もなく角砂糖をカップに入れながら、ハーキュリーはゴルダに砂糖を入れないのかと聞く。
それにゴルダは、一口だけ紅茶に手を付けてからストレートが好みだと返す。
ハーキュリーはそっかーという顔をすると、今度はミルクもなんの躊躇もなく注いだ。

「そんなに入れたら紅茶の風味が消えないか?」

「この方が美味しいよ?」

ある程度飲んでからまたカップを置き、砂糖とミルクがどっさり入って紅茶本来の色がどっかに行ってしまったハーキュリーのカップを見ながらゴルダは言う。
だがハーキュリーは、この方が美味しいんだよ?と言うとそのまま淑女的な飲み方を披露した。

「ううむ。帰れるまでの間、お前をどこに住まわせるかだな」

「わふ?」

ゴルダのどこに住まわせるかという言葉に、ハーキュリーはぴくりと反応。
それに気付いたゴルダは、ハーキュリーに今後どうするつもりかを話して聞かせた。
まずはシアのところへ行って事情を説明しなければならないということ。
次に、帰れるまでの間ハーキュリーをここに住まわせてもいいということだ。
なお、ここにすむかどうかはハーキュリー本人が決めることだとゴルダは言った。

「わふー、ゴルダと一緒に暮らすぞー。助けてもらったお礼はしないとね」

それハーキュリーは、助けてもらったお礼はしないとと言って、帰れるまではゴルダの所で暮らすと言う。
ゴルダはそれに分かったとだけ返し、後でシアのところへ行こうと言って紅茶を注いだ。
こうして、元の世界へ帰れるまでの間ハーキュリーはゴルダのところで暮らすことになったのだ。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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