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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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もふサンド

それは、ある一通の飛竜郵便が始まりだった。
その手紙は住所が全く読めず、唯一読めるのはフィーナと言う名前だけ。

「フィーナ……ああ、懐かしい名前だな」

フィーナと言う名前の誰かを思い出し、ゴルダは家のバルコニーで椅子に寝転がりながらその手紙を読みつつ記憶を掘り起こす。
かつて、異界によく赴いて遊んだりしていた頃に関わりを持ち、友人でもあった女性の竜人であった。
今は仕事でもなければ異界へ赴くこともなくなり、異界で関わりのあった者とも付き合いはすっかり無くなっていた。

「それはさておき、俺の出身世界は知っていたにしろ。住所までは分からんかっただろうに。どうやって割り出したんだ?」

ここでゴルダに一つの疑問が浮かんだ。
フィーナには自分の出身世界の事を話したことはあるにせよ、どこの国のどの地方に住んでいるかは一切話したことが無い。
ましてや、異界からの手紙は名前だけでは住所不定で届かない可能性が非常に高い。
なのにこの手紙は届いた、となると考えられるのはこの手紙が一度シアの所へ送られ、住所を調べて改めて送られてきたのだと考えるのが普通だ。

「やれやれ、お人好しめ」

ゴルダは椅子から起き上がり、自分の部屋で返事を書いた。
ちなみに、フィーナからの手紙にはそっちの世界へ遊びに来てもいいかという旨の事が書かれており、ゴルダはその返事に来ても構わんが大したことはできないと書いた。

「さて、こいつを送り返すにはシアのところへ行かねば」

あまり行きたくないなと思いつつ、ゴルダはシアの所へ向かう。
セイグリッドへ行くと、相変わらずシアはアルカトラスが異界会談へ行っている間に溜まっている国務を片付けていた。

「あら、もう返事書いたの?」

「中身はさすがに読んでないよな?」

「読むわけないでしょ神が通信の秘密を侵してどうするのよ」

「それもそうか」

もう返事を書いたのかとシアに聞かれ、ゴルダは頷く。
まさか中身を読んでないよなと、冗談混じりに言ったゴルダに神が通信の秘密を侵すはずがないとシアはむすっとした様子で返し、異界用の郵便飛竜を呼んで何かを伝えるとそのまま飛び立たせた。

「私の所へ来るようにさせなさいな、下手にあちこち行かせるとアレよ」

「そういう風に書いた、問題ない」

空の遠くへ消えた飛竜を見て、シアはフィーナを自分の所へ来させるようにしろと言うが、ゴルダはそういう風なことを書いたと答える。
そして帰ろうとするゴルダの頭を、シアは軽く撫でてじゃあねと言うとまた国務代行へ戻る。
今日は無理矢理引き留めようとするようなことはしないんだなと、ゴルダはそそくさと帰った。

それから1週間も経たないある日、ゴルダがいつものようにバルコニーでだらけているとまた飛竜郵便が1通の手紙を届けに来た。
今度はフィーナからではなく、シアからだった。
手紙には

「受け取ったら早く私の所来なさい、客人を待たせるような真似はしないように」

とだけ書かれている。
要約すると、フィーナが自分の所に来ているのでこの手紙を見たら早く来いという事だ。
一応知ってはいたが、フィーナとシアは顔見知り程度ながら面識はあるという。
しかも、今のシアはやたらと物理的な意味でくっ付きたがるのでフィーナが困っていないか若干心配である。

「まあ、行くしかねえか」

軽く準備をし、ゴルダはシアの所へ向かう。
案の定、ゴルダがシアのところへ行くと丁度サフィが3人分の茶を置いて行ったところで、シアはやたらとフィーナといちゃついていた。

「よく異界からこっちへ手紙出せたな、と言うのは置いといて。久しぶりだな」

「うん、久しぶりね。元気そうで何より」

フィーナの姿が以前会った時のような姿ではなく、1.8メートルほどの新緑色の毛の竜の姿になっていたがゴルダはさほど気にしていない。
それもそのはず、手紙にはその事もちゃんと書かれていたからだ。
もっとも、フィーナがその姿になれることはまだ程よく関わりがあった頃から知っていたのだが。

「つもる話は茶でも飲みながらしようか」

「そうね」

シアはフィーナを解放し、ゴルダと2人だけで話をさせるためか他に邪魔が入らぬように見張るような体勢になった。
ゴルダは茶を片手に、フィーナに

「どうだこっちの世界は?」

ドランザニアはどうかと聞いてみた。
フィーナは少し茶を飲んで

「ええ、とてもいい所ね」

と静かに答えた。
シアはこちらをチラチラと見ては、尻尾をパタパタさせている。
何だかなとゴルダがシアを見ていると、今度はフィーナの方から

「そう言えばゴルダさん、この数年の間に何か変わったことってある?」

と質問を投げかけてきたので、ゴルダは軽くうなずいてこの数年にあった出来事を話す。
首輪の封印石現状で最強クラスの物に換えた事や、人付き合いの事などを話し、最後に

「それと、最近どうもこうにも厄介な持病が発覚してな」

最近発覚した竜滅病の話を持ち出すと、フィーナの表情がまさかと言う顔になる。

「じ、持病って…」

「うむ、発症すると足の神経から徐々に蝕まれて最後は脳や心臓をやられてポックリ逝く。今のところ特効薬は存在しないが、発症してない段階、潜伏期間の段階なら発症しないように抑えておく薬があるんでそれを飲んで今は抑えている」

「特効薬って、無いの?」

一通り話した後で、フィーナが特効薬はないのかと改めて聞いてきたのでゴルダはまた頷くと

「今のところはな、無論特効薬に関する研究はされている。今日までの進展では特効薬と思わしき薬が見つかった段階だ」

竜滅病は研究が進んでおり、今日までに特効薬になり得る薬が見つかった段階である事を説明するとフィーナは安堵の表情を浮かべた。
ここでチラッとシアの方を見ると、暇だと言わんばかりに尻尾をブンブン上下させている。
流石に構ってやろうかとゴルダは思ったが、あと一つだけフィーナに話していないことがあったのでそれをやってからにしようと決めた。

「そう言えばフィーナ、俺が竜医だというのは教えてなかったな?」

すっかり温くなった茶を飲み干し、ゴルダはフィーナに問う。
フィーナは首を縦に振ると

「初耳、かな?」

少し興味深そうにそう答えた。
ゴルダはフィーナに竜医とは何かを軽く説明し、背を向けてから煙草のようなものに火を付ける。

「素敵だね、そういう仕事って。私はそういう取り得ないからなあ」

話を聞き終えて、フィーナはそんな一言漏らす。
それに対し、ゴルダは煙草のようなものを手で握りつぶして消すと

「フィーナ、それは違う。取り柄がない奴は居ない、そんなことを言っているという事は自分の取り柄に気付いていない、あるいはまだ見つけていないに過ぎない」

取り柄がないやつなど居ないと静かに言い放つ。

「うん…そうかな?」

「俺はまだフィーナが自分自身の取り柄に気付いていないだけだと思っている。俺が思うフィーナの取り柄として、治癒系魔法と弓術がある。違うか?」

「そうは思わないけど、何と言うか…」

「自信が無いと見ていいのか?」

ゴルダは自分が思うフィーナの取り柄を言うが、芳しくない返事をされる。
その芳しくない返事に、ゴルダは自身が無いと見ていいのかと聞くがフィーナは答えない。

「無理に答える必要はないからな」

塔の天井もとい、床を壊しそうなほどに尻尾をバンバン打ち付けているシアに来いよと目線で伝えながらゴルダは言う。
シアはやったと言う感じでゴルダの所へ来るや、ぎゅっと抱き着いてもふもふしだす。

「シアさんも変ったわね、昔と違って性格的に柔らかくなったというか」

「あらそう?」

フィーナにも来なさいなと目線だけで訴えつつ、尻尾を満足げにパタパタさせながらシアは言った。
シアのその目線に、フィーナは少し戸惑うようなしぐさを見せる。

「やましいことなんて何もないわ、ゴルダを見なさい?」

「えーっと、何と言うか。本当に甘えても?さっきみたいに」

「ええ」

「じ、じゃあお構いなく」

無表情ながら、一切警戒していないゴルダを見てフィーナはこれは大丈夫だろうと思ってシアへ近づく。
シアはこれでは大きいかもと思ったのか、体の大きさを5メートルほどにまで縮めた。
それでも、ゴルダとフィーナを抱くには十分な大きさだ。

「もふぅ」

ゴルダの左に抱き寄せられ、シアの毛と自分の毛が触れ合う感覚を感じてフィーナは若干うっとりした状態になる。
それを見たシアは、手加減しつつもさらに強くむぎゅっと2人を抱きしめた。

「ぶはふっ」

その際、ゴルダはシアの腹とフィーナの背に挟まれるような感じで抱きしめられて、ろくに息もできない状態にされてしまう。
無論、シアはそれに気付いていないらしくなおもむぎゅっと抱きしめている。

「あの、ゴルダさんが私の背とシアさんのお腹で挟まれてるみたいなんだけど」

「あら大変」

シアは悪びれる様子もなく、抱きしめていた力を弱める。
抱きしめていた力を弱めると、フィーナの背とシアの腹の間からズルッと伸びたゴルダがずり落ちてきた。
その時に何を見たのかは不明だが、ずり落ちてきてからわずか3秒後に復活して2人に背を向ける。

「どうしたの?」

フィーナが心配になって聞くも、ゴルダは沈黙を破らない。
様子からして、見てはいけないものを見てしまったようだ。

「何でもないがその、悪かったな」

「えっ?」

「気にしないでくれ」

「そう、分かったわ」

一体ゴルダが何を見てしまったのかが気になるフィーナだったが、それ以上は追及しなかった。
シアは、ずっとこちらに背を向けたままのゴルダを尻尾で引き戻し、再びもふっとフィーナと共に抱きしめる。
またもやフィーナとシアの間に挟まれるゴルダだが、今度はまともに息ができるので問題はなかった。

「なんだか、幸せな時間」

「うふふ、そうでしょ?」

「もふもふ、か…もふもふ…」

フィーナとシアがのほほんとしているのに対して、ゴルダは何かにとりつかれたかのように同じような言葉を繰り返している。
それは、もふもふともふもふに挟まれて正気を保てなくなった者の末路のようだ。

「フィーナもここで暮らさない?」

「えっ、でも兄さんとかが居るから…」

「そうだったわね」

何を考えたのかは分からないが、シアはフィーナにここで暮らさないかと持ち出す。
だが、フィーナは兄が居ると言って戸惑う様子を見せ、シアはそれにそうねと頷く。

「もふぅ…」

一方のゴルダは、その一言を最後に以降ずっと黙り込んだままになった。
もふもふに引き込まれ過ぎた者は、皆こうなるかのような暗示を思わせる。

「時々こっちに来ちゃおうかな?」

「歓迎するわ、ここなら変なのも来ないからね」


もふもふっ。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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