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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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もふ日和

「芳しくないというかなんというか、抑え込みはできているようだな」

「そうか、ならいい」

聖リフィル王国、賢者の竜の里のルライエッタの部屋。
今日は竜滅病の定期診察の為に、ゴルダはルラエイッタを訪れていた。
定期診察は月に1度のペースで、その際に血液検査を行って竜滅病の進行度が上昇していないかを確かめるのだ。
検査結果は薬の服用による保存療法のおかげで、竜滅病は潜伏期間状態のままで以前と変わらず抑え込みはできているという結果だった。

「ただ、ちょっと薬を別のに変える必要はあるかもしれないな。抗体持たれたらどうしようもないし。今お前はたまに副作用が出ているからな」

「増やすのは勘弁な、種類を変えるのはいいが」

「増えはせん、薬の量は今の量で十分だ。発症しない限りはな」

時々笑い飛ばしたりしながらそんな会話をし、ゴルダはルライエッタから処方された薬を受け取って里を後にする。
その帰る途中、ゴルダが煙草のようなものに火を付けようとして躍起になっていると

「久しぶりねゴルダ、元気してた?」

「イレーヌか、どうしてまた今日はエゼラルドを引き連れている?」

「散歩よ」

アルガティアの妹のイレーヌがエゼラルドに乗って通りすがった。
エゼラルドはゴルダに目線で久しぶりだねと挨拶をするや、どこからともなく出した蜜柑を投げつける。

「おっと、ありがとよ」

投げつけられた蜜柑を受け取り、それを食べながらゴルダはイレーヌとエゼラルドと並んで歩く。
エゼラルドが歩くたびに、どこからともなくハーブの香りが漂う。

「大変ね、闘病生活も」

「いや、まだ発症してないだけマシだ。たまに吐血して動悸が起きる発作はあるが」

ゴルダが持っていた薬に気付いたのか、イレーヌは急に竜滅病の話題を切り出してきた。
大変ねとイレーヌ言われたゴルダは淡々とそうでもないと切り返す。
竜滅病は、ゴルダのように潜伏期間中でも発作を起こす場合がある。
その発作が元で検査をして、竜滅病に感染していると分かる事も多いが、発作などの自覚症状が無いまま発症して気が付けば時すでに遅しというパターンも珍しくない。
そのため、大陸幻想獣医師会では竜滅病に関して心当たりがあれば早めに検査をして欲しいと呼び掛けているが、現実はそうもいかないのがオチだ。

「でも、私ゴルダはすごいと思うな。竜滅病に感染してるって分かってても竜医を続けてるってところが」

「昔からの夢だったからな、病気程度で挫折してたら親父に説教喰らう」

「それもそうね」

イレーヌと会話をしている内に、急にエゼラルドが立ち止まったかと思えば、蔦でぐいぐいとゴルダを引っ張る。
どうやら背に乗れという事らしい。
そのエゼラルドの行動に、ゴルダははいはいと背へ飛び乗る。
ゴルダが背に乗ると、エゼラルドは城の庭園へと向かって飛び始めた。
庭園では、アルガティアと従者がお茶をしていてエゼラルドは邪魔にならない所へ降り立つ。

「定期診察?」

「ああ、薬も切らしてたからな」

アルガティアにふわふわした口調で聞かれ、ゴルダはそうだと答える。
従者はゴルダとイレーヌに挨拶し、茶を出してきたがゴルダはいいと言って受け取らなかった。

「もう帰るの?」

「今日はゆっくりしたい気分だ」

ゴルダはアルガティア達にじゃあなと言って転移魔法で家へ帰宅。
セレノアは6の月あたりから家を空けており、今住んでいるのはゴルダだけだ。
薬をいつも置いている場所へ片付け、冷房を全開にして自室へ入り、去年の誕生日にアルガティアから送られてきたもふもふなエゼラルドのぬいぐるみが置かれているベッドへ寝転がる。
エゼラルドのぬいぐるみの横には、今年の誕生日にまたアルガティアから送られてきたシアとアルカトラスのもふもふなぬいぐるみも置かれている。
ちなみにこのぬいぐるみ、アルガティアの一からの手作りと言うから驚きである。

「ぬいぐるみにも、魂は宿るんだったか?」

エゼラルドのぬいぐるみの頭をもふっと撫でながらゴルダは呟く。
人形に魂が宿るとはよく言われていることだが、ぬいぐるみは聞いたことが無い。

「おっと、シアからなんかわからんが呼び出されてるんだっけな」

しばらくベッドでぬいぐるみを触ったりしていると、急にゴルダの携帯のアラームが鳴った。
携帯を調べるとスケジュールに「シアから呼び出し」と記されている。

「ったく、またもふられるんだろうな」

ほんの1週間くらい前にサフィとシアが家へやって来て、サフィと一緒にシアにもふられて以来、シアは忙しいサフィではなくほとんど暇をしているゴルダをしょっちゅうもふろうとしているのだ。
もっとも、ゴルダ自身はめんどくさがって拒否はしているが。

「やれやれ」

多少の着替えを済ませ、ゴルダはため息混じりにセイグリッドへ向かう。
別にもふられるのが嫌いではないが、もふるという単純な理由で呼ばれるのが好かないのだ。
もっとも、相手が相手なだけに大した拒否の意を示すことができないが。

「あら、今日はさすがに来たのね」

「しつこいからな」

転送魔法で城の中へ入った瞬間、目の前にサフィが居た。
サフィと二言会話を交わすとゴルダは、シアが居る塔へ向かう。
だが、塔にはシアはおらずがらんとしていた。

「爺さんところか?」

ゴルダは塔から城の方へ逆戻りし、今度はアルカトラスの部屋へ向かう。
部屋にはアルカトラスはいなかったが、代わりにシアが国務の書類の処理をしていた。

「こうもしつこくされたんじゃ行かざるを得ないだろうよ」

「少し塔の方で待ってなさい、すぐ行くから」

「あいよ」

シアに塔で待ってろと言われ、ゴルダはまた塔の方へ逆戻りする。
寝室であろう塔の一角のスペースには、いつものようにところせましと並べられた魔法書や魔道具が整理されて置かれていた。

「ここまできっちり整理したら、何があるか分からんだろ」

とゴルダは思いつつもシアが戻ってくるのを待つ。
30分後、戻ってきたシアは不意打ちを掛けるかのように

「もふっ」

「後ろからはやめろ」

後ろから抱きついたが、ゴルダにやめろと言われてすぐに放す。
そしてシアは、サフィに言って準備させたと思わしき茶とケーキをどこからともなく出した。

「ふうむ」

茶を手に取って、物思いにふけながら飲んでいるとシアに尻尾で頭を撫でられたのでゴルダは軽く咳払いをして今はやめろと遠まわしに言う。
シアは頭を撫でるのはやめたが、今度は背中をスッと触ったりしてきたのでこれにはゴルダも驚き、思わず茶が気管支の方へ入ってしまい、むせ返る。

「あらごめんなさい?」

「少し考えたら分かるだろうが、まだ喉が痛むな全く」

少し落ち着いたところで、また物思いにふけながら茶を飲むゴルダ。
シアはそんなゴルダを後ろからもふっと優しく抱きついて、魔法でケーキの皿を取ると

「あーん、して?」

「俺はガキじゃない、自分で食える」

ゴルダに食べさせようとしたが、当の本人は子供じゃないので自分で食えると拒否。
シアはゴルダの態度にしょんぼりするかと思いきや、食い下がって

「たまには甘えたっていいじゃない、ね?」

「やめんか」

たまには甘えなさいよと言うものの、なおもゴルダは拒否。
その間も、シアはさりげなくもふもふを続けていた。
それから5分ほど甘えろと断るの押し問答を続け、埒が明かないと思ったゴルダが

「今日だけだぞ、恥ずかしいことこの上ない」

今日だけという条件を付けて折れた。
それを聞いたシアは、心の中でやったと思いつつ再び

「あーんして?」

と言って口を開けさせる。
折れたゴルダは無表情かつ、不機嫌な様子で口を開けた。
シアはその口の中へ、フォークて取り分けたケーキを入れる。

「なんだか昔を思い出すわ」

「そうかい」

ケーキを食べさせながら呟いたシアの一言に、ゴルダはぶっきらぼうに返す。
その体はシアの前足の所、胸から腹にかけての所に寄りかかっており、一番毛がふわふわしていて心地いい場所に当たっている。

「子供の時から、ほとんどの事を自分1人で解決しようとする一面。あったわよねえ」

「だからどうした」

シアに前足で頭を撫でられているゴルダは、心なしかシアに撫でられることに対して心を許している気がしないでもなかった。
やがて1時間ほど時間が経ち、ケーキを食べさせ終え、温くなった茶も横にどけてシアは胸の辺りの一番毛深いところにゴルダを座らせ、無表情で何も語らないのをいいことに、時折尻尾で毛の中へ押し込んだり、前足で頭をわしゃわしゃすると同時に背や足を触ったりするなどをしている。
それにゴルダは若干反応を示すが、シアに何を言っても無駄だと開き直ったのか何なのかは不明だが依然として何も言わない。

「ずいぶん大人しくなったわね」

「言ったところで無駄、と思うからさ。得にお前には」

「ふふっ、そういうところがまたかわいいわ」

「よせ、俺にはそぐわない」

かわいいと言われることに抵抗を感じるのか、シアにそう言われたゴルダはよせと否定の意を示す。
ゴルダに拒否の意を示され、それにまた何らかのかわいさを感じ取ったのか

「そういうところがよ」

と言ってむぎゅっと強くゴルダを抱きしめた。

「むぶっ」

今まで以上に強く抱きしめられ、体が完全に毛の中に埋もれた上に毛の中に埋もれたことで息をするもへったくれもなくなってしまう。
だがすぐにシアがやりすぎに気付いたのか、開放してくれたので事なきを得た。

「窒息するかと思った」

「うふふ」

やや息を切らしながらそう言ったゴルダに、シアは笑ってごまかす。
先ほどのようなことがあったにもかかわらず、シアは尚もゴルダをぎゅっと抱きしめている。
無論、加減はしてはいるのだが。

「ふう、抱かれ心地はセレノアと同等かそれ以上だな」

「あら、そんなこと言っていいの?嫉妬されない?」

「構わんよ」

セレノアと同じかそれ以上の抱かれ心地と言ったゴルダに、シアは嫉妬されないかと聞いたがそれにゴルダは構わんと言い返す。
すると、シアはゴルダの首のあたりを尻尾で触れる。

「間違えても俺の首輪外すなよ?」

「外しちゃおうかな?」

「やめろ」

首輪についた封印席に尻尾で触れ、外そうとしたシアにゴルダは外すなと釘を刺す。
それもそのはず、この首輪は変身能力を自己制御できないゴルダが制御するためにつけている物なので外せば間違いなく変身する。
そのうえ、ゴルダは変身することを好ましくは思っていないので外せば機嫌を悪くするのは間違いない。

「えー?」

「ダメだ、お前が何をするかが分からん」

なんで外したらダメなのと言いたげに言うシアに対し、ゴルダは頑なに断る。
最終的にシアは、少しがっかりしたように首輪をさわさわと尻尾でいじっていた。

「んー」

「おい、俺の頭に顎乗っけて体重かけるな。重い」

シアはゴルダの頭に軽く顎を乗せたつもりだが、体重がかかっていたらしく重いと言われてゴルダの頭に乗っけていた顎を下す。
それからさらに1時間、シアは一向にゴルダを解放する気はないらしい。
前足を交差させ、胸から腹の間に抑え込むようにして抱き込んで絶対に逃がさない体勢になってだ。
ゴルダの方は、それさえ気にすることもなくゆったりとした様子でシアにもふもふされっぱなしである。

「もう抵抗しないのね、抵抗したところで離さないけど」

「なんか落ち着くようになってきてな、セレノアの場合より」

セレノアに抱きつかれた場合よりも落ち着く理由が良く分からなかったが、おそらくシアが遠いながらも血が繋がっている存在であると共に、生の創造神であるからだろう。

「もっふもふ」

「もふもふなのは分かってる」

「ぎゅっぎゅー」

今日もゴルダは、シアにもふもふされている。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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