FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

真夏の氷牙

ドランザニアの氷竜の多くは、氷牙という特異的体質を抱えている。
これは、個人差はあれど噛んだもの、あるいは牙に触れたものすべてを氷り付けにしてしまうという体質で、場合によっては対象が凍って砕け散る程度にまで凍らせるものもいるという。
そして、かつて最もその特異体質の力が強い者がいた。
それは、氷竜国リヴァルスを建国した氷牙竜リヴルーテだ。
現国王リヴァイドの祖父に当たるような存在で、それこそ噛んだもののほぼ全てを砕け散る程度にまで凍らせることができたという。
その血を引いているはずのリヴァイドも、一応氷牙持ちなのだがリヴルーテほどではないとされている。
だが、血を引いていることだけの事はあり、何かの拍子にリヴルーテと同じ力になることも多い。
例えば、普段0度から上に気温が上がることのないリヴァルスが20度近くまで上がるというとんでもない日になった時などだ。

「うーん、暑い」

外から入ってくる暑い風を受けながら、リヴァイドは書斎で仕事をしていた。
今日はドランザニア側から異常に大きく、かつ強力な高気圧が入ってきてリヴァルスを数十年に一度とも言える猛暑日にしている。
現在の時刻は10時ちょっとを回ったところだが、リヴァルスの気象観測所はこの時点で気温が20度を超えたと発表しているそうである。

「ぬっ、汗で書類がダメになるところだったな」

腕から汗が垂れているのに気付き、リヴァイドは慌てて側近が汗を拭くようにと置いていったタオルで汗を拭く。
城の中はそこまで暑くないにも関わらず、なぜリヴァイドは汗をかいているのか?
それは単純解明な理由で、外から入ってくる暑い風が城内の空気を押しのけ、一気に気温を上げているからだ。
さすがにこれだと暑くなるのは無理もないだろう。

「あっちい」

氷結晶で作られた、常時冷たいグラスに入っている茶をリヴァイドが飲もうとした時である。
どういうわけだが中に入っていた茶があっという間に凍って飲めなくなってしまったのだ。
これにはリヴァイドも、どういうことだとグラスを覗くがやはり茶はグラスの中でカチンコチンに凍り付いている。

「まーた氷牙の力が戻ったのか、面倒だな」

リヴァイドはそう呟きながら、無理やり凍った茶をグラスから出して氷でも食べるかのように噛み砕いて飲み込んだ。

その後も、何事もなかったかのように仕事を続けるリヴァイド。
だが氷牙の力が強くなったせいか、欠伸をするだけでもそこそこに冷えた空気が口の中へ入ってきた。
なお、これはこれで眠気も覚めるだろうと、リヴァイドはそこまで気にはしていなかったが。

「暑いでしょうからアイスお持ちしました陛下」

ここで、アイスを持って従者が入ってきたのでリヴァイドはやったぜと言わんばかりの顔をして

「ありがとうな、気が利く奴は好きだ」

などと従者を褒めてやる。
従者が出て行った後、リヴァイドはさて食べようとスプーンを手にアイスを食べようとしたのだが

「氷牙のせいでアイスが岩みたいに固くなったか、どこまでもめんどくさい特異体質だ」

牙に微妙にアイスが触れ、岩のようにさらに固く凍ってしまった。
だがそれでもお構いなしにリヴァイドはアイスを無心で食す。
食べ終わる頃には、さらに凍って固くなったアイスのせいでやけに牙が痛くなっていたとか。

「どういうタイミングでこの氷牙の力が強まるか分からないんじゃな」

牙をいじりつつ、リヴァイドは外から入ってくる暑い風に悩まされながら今日の仕事を終えた。
そして夕食の時間。
暑さのせいでそこまで食欲がなかったリヴァイドは、野菜だけを食べていたのだが、夕食の時間になっても氷牙の力は弱まらず、牙に野菜が触れるだけでこれまた昼間のアイスのような固さになった。

「かってえ、食べれないことはないが」

なんだかんだ文句を言いつつも、夕食に出された野菜だけはしっかり食べきったリヴァイドであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |