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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

水面の葉の上での食事

猛暑が猛威を振るうのは、スリュムヴォルドとて同じである。
潮風が湿った風を運んで来て、湿度を上げるので猛暑日ともなれば湿度が80パーセント台に達する事もよくある。
そのため、スリュムヴォルドの猛暑日はいかにして湿気を追い出して涼しくするかが重要なのだ。

そんな猛暑日という名の熱中症警報が、スリュムヴォルドにもある気象観測所から出されたある昼のスリュムヴォルド城。
現在の城内の気温と湿度は高いところで35度と79パーセント。
もはやどうにかしないと中に居ても熱中症になってもおかしくない状態の中。
巨大な池を構える城の庭園では、皆が皆水場で涼しもうとしている。
そんな池の真ん中の普通では考えられないほどに成長した巨大な蓮の葉の上。
その上で、薄緑色のショートヘアに、儀礼正装をしている女性が従者と思わし者たちとその他もろもろと冷やしそうめんを食べていた。
ちなみにこの女性、エルフィサリドが人に変身したときの姿で途轍もないレアな姿らしい。

「あんたねえ、よくその姿でそんなこと出来るわねえ。あっでも冷やしそうめんはおいしい」

そんなエルフィサリドの右横で、ネルシェはなんだかんだ文句を言いながらも冷やしそうめんをすする。
今エルフィサリド達が座っているこの蓮の葉、イファルシアが気まぐれに出した蓮の種を池に投げ入れたらここまで成長し、毎年このサイズの蓮の葉ができるという。
だが、これだけの大人数が乗って大丈夫なのかと思われがちではあるが、この蓮。意外と重いものを乗せても葉が破けたり沈んだりしないという。

「もう少し静かに食え」

ほとんど音を立てずにそうめんをすすりながら、ゴルダは目の前で豪快な音を立ててそうめんをすするネルシェに言う。
一方、その横のウラヘムトとアルガントはまともにそうめんを口にしてない。
どうやら、そうめんそのものが2人の口には合わないようだ。
エルフィサリドの左横に座っているシスイは、やたらと薬味をめんつゆの中に入れて、ネルシェほどではないにしろ、音を立ててすすっている。
ゴルダから見て、左斜めに居るニフェルムはなぜかめんつゆだけをちびちび飲んでおり、これまたそうめんそのものには手をつけてない。

「あらあら、食べないの?」

一向にそうめんに手をつけないウラヘムトとアルガントを見かねたエルフィサリドが、2人に声をかける。
時折ゆらゆらと蓮の葉が揺れる度に、同じように揺られながら2人は

「口に合わない」

と同時に言った。
エルフィサリドはそれに困ったような顔をしてゴルダにどうするの?と聞く。
それにゴルダは知らんと即答し、ぬるくなっている緑茶をぐいと飲む。

「カツオと昆布のだし使ってるこのめんつゆおいしい」

ちびちびめんつゆだけを飲んでいたニフェルムの一言に、シスイは

「なぜそうめんではなくめんつゆなんだ?理解し難いわ」

ニフェルムに理解し難いと一蹴。
だがニフェルムはそれでもめんつゆだけを飲んでいた。

やがて、そうめんも全て食べ尽くし、空になった皿などが下げられ、今度は水ようかんが出された。
この水ようかん、エルフィサリドとシスイの手作りというから驚きである。
シスイはここへ移住して来て以来、他者との関わりの技術以外にも料理などの技術も数多く身につけている。
それもこれも、エルフィサリドがその都度従者などに言ってシスイに学ばせたからだという。

「まずいなんて言わせないから」

そう自信満々に言うシスイをよそに、ゴルダは水ようかんを口へ運ぶ。
普通の水ようかんよりねっとりしてはいたが、何も食べれないわけではない。

「悪くはないな」

とゴルダが言った横で、ウラヘムトは甘すぎと言いたげにそぐわない渋い顔をしていた。
一方アルガントは、何か変なものでも入ってるんじゃないかと訝しんでいる。
そのアルガントの態度を見たシスイはこう言う。

「変なもんなんか入ってないわよ、エルフィサリドと一緒に作ったんだし」

それを聞いたアルガントは、1つ取って食べてみた。
ウラヘムトが言ってたように、かなり甘ったるいが、それを除けば申し分ない出来だ。

「おいしー」

「でしょ?」

アルガントの一言に、シスイは調子に乗ったような感じでそう言う。
一方ニフェルムは何も言わずに緑茶と共に食している。
こうして、なんとも言えない蓮の葉の上での食事は終わったのだった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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