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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

その能力、走りのために

ウラヘムトが偶然首輪を外し、また能力を行使できるようになったものの、エシュフィルトの手でより強力な制御機能を持った首輪を付け直されてから早1週間。
さすがに観念したのか、ウラヘムトはあれ以来外すことは無くなったものの、アルガントとの険悪関係は相変わらずである。
ゴルダはこれには特に言及はせずに、様子を見ていたのだが、だんだんと放っては置けない状況になってきてた。
そんなある日、エシュフィルトからメールが入る。
メールには、シアがウラヘムトに用事があるので連れて来いと言っているという内容のもの。

「なんとなく察しが付くな」

そのメールを見て、ゴルダはそう呟くとウラヘムトにアルガントを引っ張ってシアの所へ。

「あらあら、来るのが早くて助かるわ」

エシュフィルトがメールを送ってからわずか30分足らずでやって来たゴルダに、シアは関心するように言う。
ゴルダはそれに何を返すわけでもなく、いつもと変わらぬ無表情な顔でシアを見ている。
その一方、アルガントはエシュフィルトに抱っこされていたがウラヘムトはゴルダの背後に隠れてシアを威嚇している。
シアはそんなウラヘムトにやれやれねと言いたげな顔をして

「私の手伝いしてくれるなら、その制限を一時的にでも解除できるようにしようと思ったけどその態度じゃ無理ね」

などと、さりげなく飴と鞭を繰り出す。
それを聞いて、ウラヘムトはピクリと耳を動かして反応した。
どうやら、シアのやり方はうまくいったらしい。

「…何すればいいんだよ、ヘルヘムスのところ戻って喧嘩売って来いとかは嫌だからな?」

何をすればいいと、あからさまに人に物を聞く態度ではない態度で聞くウラヘムトに、シアはこう答える。

「あなたも知ってるとは思うけど、私にも管理できる魂には限度があるのよ。だから管理から漏れてさまよう魂が必然的に出てくる。それは分かるでしょ?」

シアの返答に、ウラヘムトはそりゃそうだろうなと答えて耳を掻く。
アルガントはそのウラヘムトの態度に納得がいかないのか、手裏剣を投げつけようとしたがエシュフィルトに制された。

「要するに、管理漏れの魂をかき集めてここに連れてこいってか?その話乗った」

「理解が早いわね、そういうこと」

ウラヘムトが管理漏れの魂を集めてくればいいんだろ?と聞いたついでに話に乗ったという。
シアは理解が早いわねと言うと、ウラヘムトの首輪の制御を一時的にかつ能力の使用を制限して解除してやった。

「特に場所は指定しないから自由にやって。それから、今日1回限りじゃないってこと、解除するにはしたけど限定的かつ今日1日限定の解除ということは頭に入れておきなさい」

シアから注意を受け、ウラヘムトは急に人が変わったように敬礼し、さっさと行こうと言い出した。
これを見たゴルダはウラヘムトのことを七変化野郎と皮肉りながらも、アルガントとエシュフィルトとウラヘムトを負う。

一行がやって来たのは、ドランザニアとアストライズの国境を隔てている山のふもとの小さめの樹海。
特に霊が出るという噂はないのだが、ここは一応危険な野生動物が多く出没する場所である。

「地縛霊化した魂からかき集めるとはどういうことだ?」

ウラヘムトが集めようとしているのが、野生動物によって殺され地縛霊と化している魂だと気づき、ゴルダはなぞぜそれから集めるのかと聞く。
それにウラヘムトはこう答える。

「地縛霊になってからの期間が長いほどその場所に魂が縛り付けられて、引きはがすのが難しいからさ」

「浮遊霊とかの魂は簡単に集まるからね、片付けるなら厄介なところからって感じかな?」

片付けるなら厄介な所から?と聞いたエシュフィルトに、ウラヘムトはそういうことと返す。

それから30分後。
どれくらい歩いたのかは分からないが、突如としてウラヘムトがゴルダの頭の上でここで止まれと言ったので、ゴルダはその場で立ち止まってウラヘムトを頭から下ろす。
下ろされたウラヘムトは、犬が匂いでも嗅ぐように鼻を鳴らしながら忍び足で前へ前へ進む。
そして、ちょっとした木の根が作り出した縦穴の中を覗き込んだウラヘムトは、ゴルダに穴の中へ下ろせとハンドサインを出す。
ゴルダはそれに頷くと、どこからかロープを出して木の太い幹にすぐに解けるが頑丈に結んでそれを掴むと、ウラヘムトに頭に乗れと言う。
ウラヘムトは迷わずジャンプして頭に飛び乗り、そのまま穴の中へ。

「5、6体で固まってるのは珍しいなあ」

穴の中は普通なら暗くてよく分からないが、ゴルダとウラヘムトは暗視でもしてるかのようによく見えるので、その光景が明かりなしによく見えた。
その様子とは、そこそこの人数の骨と狩猟用の狙撃銃の残骸らしきもの。
死後何年なのかはわからないが、骨は風化が始まりかけていた。

「はいはい、こんな場所居ても何の得にもならんぞ」

そう言いながら、ウラヘムトは草でもむしるような動作をして、その場にとどまり続けている地縛霊と化した魂を無理やり引きはがしていく。
ゴルダはそれを結局は脳筋的やり方かと思いながらも、ウラヘムトが確実に回収し終えるのを待つ。
なかなかにしぶとかったのか、ウラヘムトがすべての魂を引きはがして藁のように束ね終えたのは、開始から10分少々経過した後。
その魂を持って先にウラヘムトを穴から上がらせたゴルダ。
だが、いざ自分が昇ろうとしたときにウラヘムトがロープを解いてしまい、ロープを使わずに自力で穴から這い上がる羽目になった。

「このアカポンタンが」

「いってー」

穴から這い上がり、エシュフィルトがウラヘムトから魂を受け取ってシアの所へ送り終えたのを見計らい、ゴルダはウラヘムトに1発だけげんこつを食らわせる。
かなり手加減したつもりだったが、ウラヘムトはやけに痛そうな顔をしていた。
その後も一行は樹海の中をさんざん歩き回り、少し暗くなる時間までずっとシアの管理から漏れている魂を探して回り、塔へ帰る直前までに集めた管理漏れの魂は3桁を達成。

「多すぎかな?」

集計をひそかに取っていたアルガントの一言に、ウラヘムトは仕方なかろうと返す。
それもそのはず、この世界に存在する魂はそれこそ天文学めいた数だ。
それをシアが1人で管理するなど、神であってもなかなかに難しいところである。

「なんで冥府に魂送りたくないんだ?管理しきれない分はヘルヘムスにくれてやってもいいとは思うんだが」

帰り際、ウラヘムトはふと疑問に思ったことをシアに聞く。
シアはそれに対しては

「冥府とて高次元世界よ、アルカトラスがアルシェリアと絶縁している以上はヘルヘムスとて例外じゃないわ」

と具体的な理由は濁して答えてはくれなかった。
ウラヘムトはふうんとそれ以上は問い詰めないといわんばかりに言うと、今度はシアから

「あなたこそ、なんでヘルヘムスの所戻りたくないの?」

と聞かれる。
ウラヘムトはこの問いへの返事に大いに困った。
ぶっちゃけた話では、ヘルヘムスの自分を含むしもべの扱いが荒いという点と、冥府に居ても退屈で浄化されそうというのが大きな理由である。
だが、本当の理由は自分以外の冥府竜を含むしもべが、シアの手で冥府の住人ではなくされたことへの始末書やら報告などがめんどくさいし、どんな罰を受けさせられるかも分からないからだ。
だが、ウラヘムトは最終的には

「戻ったらヘルヘムスに何されるか分からないから戻りたくはない。それでいいか?」

戻ればヘルヘムスに何をされるか分からないから戻りたくないと返した。
それに対してシアは、だったら冥印を消すかとからかうように言ってきたが、ウラヘムトはそれを拒否したとか

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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