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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

ウラヘムトの恐るべき能力

ウラヘムトが突如として住み着くようなって2日。
特に何もやらかすことなく、ただマイペースに過ごしているのだがどうにも首輪が気になるようでしきりに外そうとしていた。
だが、その度に何らかのお仕置きが執行されるので、その度にやめてはまた外そうとするを繰り返している。
そして、今日はゴルダと氷燐が依頼で出かけていて家にはアルガントとウラヘムトしかいないという状況の中でのこと。

「ぐぬー」

「今度は何されるか分からないんだし、やめときなよ」

闇の魔法書を大人しく読んでいるアルガントの横で、ウラヘムトはどうにかしてこの首輪を外そうとしている。
アルガントはそれをやめておけと言うものの、ウラヘムトは聞く耳を持たずにカチャカチャと外そうと躍起になっていた。
そして、金具が外れかけた途端。
ウラヘムトの頭上に、小石ほどの鉄塊が落ちてきた。

「いてー」

「ほら、言わんこっちゃないじゃないか」

アルガントはその小石ほどの鉄塊を、何らかの魔法により紫色の何かへ変化させた。
よく見るとそれは、柴水晶であることが分かる。
この程度の錬金魔法ならば、アルガントでもたやすくできるらしい。
アルガントはそれをウラヘムトに投げつけ、自分はゴルダの自室へと引っ込む。
正直な話、アルガントはウラヘムトとは馬が合わないと確信していた。
なぜならば、ウラヘムトはこのようにしょっちゅう首輪を外そうとしてお仕置きされてはアルガントの集中を削いでいる。
しかもそれだけではない、度々アルガントの邪魔をすることもあるのだ。

「ちぇっ、つまんねえ奴」

ウラヘムトはそう言いながら、居間の本棚から力の制御に関する本を探し始める。
どんな手を使ってでも外すという考えは、いまだ改まっていないらしい。
こうやって本を探し始めたはいいのだが、どうにもゴルダが隠したらしく、それらしい本は見当たらない。
だが、一冊だけ本の後ろの隠されていた『アクセサリによる力の制御』という本を発見。

「あ、この本怪しいな」

そう言って、ウラヘムトはその本を開いた。
偶然なのかどうかは分からないが、ウラヘムトが開いたページは丁度首輪による制御に関するページ。
ウラヘムトはそのページの一文一文を読んでいき、一つ気になる呪文を見つけた。
その呪文の意までは汲み取れなかったが、おそらくこれが安全に外せそうな呪文だろうと思ったウラヘムトはその呪文を詠唱。
するとどうだろうか、カチッという音とともに首輪が外れたのである。
しかも、お仕置きが執行されることもなくだ。
これは完璧にシアの設定ミスに他ならないが、ウラヘムトがそんなことを気にかけるはずもなく、すぐさま自分の能力の制限が本当に外れたのかを確認する。

「見える、見えるぞ…あのシアが管理しきれていない魂どもが」

今ウラヘムトの視界には、無数の浮遊する霊魂が見えていた。
そう、これはウラヘムトの能力の1つ、浮遊する魂を視ることができる能力だ。
冥府竜たちは、この能力によりシアの管理しきれていない魂を視ることができる。

「さーて、冥府に送る能力はもうどうでもいいとして。どいつから頂こうかな」

今、ウラヘムトが言った一言の中に、ウラヘムトの残る2つの能力が記されていた。
まず1つは、冥府にその魂を送る能力。
これはそのままの能力で、冥府へ輪廻に乗り切れていない魂を送るもの。
もう1つの能力、これはとても恐ろしい能力で、シアがウラヘムトら冥府竜を危険視している最大の理由。
その能力とは、浮遊しているか生者にまだ乗っかっているかどうかにかかわらず魂そのものを食べ、我が物にしてしまうという能力だ。
実際、この能力で冥府竜に魂を食べられてもぬけの殻になってしまい、新たにシアが魂を入れる羽目になった者は少なくはない。

「お前に決めた」

ウラヘムトはその中から今にも立ち消えそうな魂を手で掴む。
その感触は、魂のなどによって異なるものの、大体は新雪を片手で掴んだ感触に似ているという。
そして、アイスを口に頬張るような形でウラヘムトはその魂を口に入れ、そのまま食べてしまった。

「苦っ、やっぱ魂化してから時間が経ち過ぎて崩壊しかかったのはおいしくねえ」

ウラヘムトが今しかた言ったように、一応魂にも味はある。
ちなみに、崩壊しかかった魂はとても苦いらしい。

一方ウラヘムトが何をしているかなど知る由もないアルガントは、ゴルダの部屋で今度は漫画を読んでいた。
読んでいる漫画はゴルゴ13という漫画。
時折ゴルダが面白いからと単行本を買ってくるので、アルガントはゴルダが読み終わった後にこうして読み漁ることが多い。

「?、なんだろこの嫌な予感は」

次のを読もうと漫画の本棚の方へ歩いて行った時、アルガントは妙に嫌な予感がした。
それも、ただの嫌な予感ではない、闇の者だけが感じる特有の嫌な予感だ。
アルガントは、今居間にはウラヘムトしかいないというのを思い出して扉の陰から居間を覗く。
やはり居間にはウラヘムトしかいなかったが、どうにも様子がおかしい。
その様子がおかしいというのは、首輪が外れ、目がどこか獲物を狙う獣の目になっているということだ。

「…うわ、どうやって首輪外したんだろう?」

アルガントは部屋の中へ引っ込み、どうするかを考える。
ゴルダは日付が変わるまでは帰ってこないと言っていたので、連絡できても今すぐには帰ってこれない。
となると、シアしかいない。
だが、首輪が外れているならシアは関知しているはず。ならなぜ来ないのか?
こうなれば自分がどうにかしなければと、アルガントは部屋を出てウラヘムトの前に立つ。

「な、なんで首輪外れてんの?」

少しおどおどしながら、アルガントはウラヘムトに聞く。
一方のウラヘムトは、ソファに社長座りしながらゴルダが買ってきたそんなに高くないワインを片手に何かを食べている。
アルガントには、それが魂であることは分かっていたのだがあえて何も言わない。

「何でって、そういう制御の本読んでて見つけた呪文使ったら外れたまでだよ。それよりお前闇竜だよな?魂食うか?」

ウラヘムトはそういう本にあった呪文を使ったらこうなったと言い、お前も食うかとアルガントに今しかた掴んだ魂を差し出す。
だがアルガントは首を横に振って

「血がいいのこっちは、それより早く首輪戻しなよ。シアが分からないわけないと思うからさ?」

自分は血がいいと言い放ち、シアが外したのが分からないとは思えないので早く首輪を戻すように言う。
だがウラヘムトは断る、と言ったら?とアルガントに聞き、また魂を頬張る。
このウラヘムトの態度に、アルガントはカチンときたのか手裏剣をウラヘムトへ投げつけた。
だがウラヘムトはそれを難なく白羽取りして

「ふうん?まあいいか」

と言って何かを引き寄せる仕草をとる。
すると、アルガントがウラヘムトの方へ徐々に引き寄せられていった。

「えっ…?」

「安心しな、闇竜の魂は俺にとっちゃ猛毒だ。食いはしない。だけど…ちょっとお前口うるさいんだよなあ」

ぽかんとするアルガントに、ウラヘムトはそう言って手裏剣を返す。
そして、ウラヘムトがアルガントの口を手で塞ぐような動作をした瞬間

「あーっ、やっぱり」

「うげぇっ!」

どこからともなくエシュフィルトがやってきて後ろからウラヘムトを抱き上げた。
どうやらシアに言われて来たようだ。
また首輪をされると直感的に思ったウラヘムトは、エシュフィルトの腕の中でじたばたしている。
だが、エシュフィルトはその体型からは想像もつかない力でウラヘムトを抱いて離さない。

「アルガントちゃん、その首輪取って?」

エシュフィルトに言われるがまま、アルガントはその首輪を取る。
すると、エシュフィルトはウラヘムトを一旦降ろしてからその首輪を杖で叩くと

「これで簡単には外れないわ」

と言って観念した様子のウラヘムトに首輪を再度付けて、アルガントにバイバイしてそのまま帰ってしまった。
アルガントはふうと胸を撫で下ろし、ゴルダの自室に戻って漫画をまた読み始めた。
一方のウラヘムトは、以前に増して強化された首輪を見て表情を曇らせていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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