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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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真夏の暇つぶし

「なんでまた呼び出したの?」

久しぶりの休暇をアルカトラスから言い渡され、実家の墓掃除と墓参りに行こうとしていた時にシアに呼び出されたサフィはやや不機嫌そうにシアに聞く。
サフィがシアに呼び出されることはそうそうなく、赴くのは朝の健康チェックの時ぐらいだ。

「これと言ってはないけど、暇つぶしに付き合ってくれない?」

呼び出された理由が暇つぶしであると知り、サフィは後にしてくれないかと言ってそそくさと去ろうとする。
だが、シアは座標指定テレポートで去ろうとしたサフィを魔法で引き留めた。

「ああもう、じゃあ墓参りから付き合って」

そこまでして暇つぶしに付き合わせたいのかとサフィは若干呆れるが、墓参りから付き合うことを条件にシアの暇つぶしに付き合ってやる事にした。

「ずいぶんとこれまた寂れた場所ね」

「アルヴォールド家の私有地だからよ、この山のほとんどが」

何だかんだで最初にやって来たのは、ドランザニア北西部のとある山中。
その中に、サフィの実家はぽつりと佇んでいた。
父親が吸血竜だったこともあってか、親子3人で住むには少し大き過ぎる家である。
家自体はしっかりと戸締りがされ、玄関も良く分からない結界で封印されており入ることはできない。

「雑草伸び放題で何だか荒れてるわ」

「草抜きしててくれると助かるんだけど?」

「あら、じゃああなたが墓掃除と墓参りを終わらせて来るまでには綺麗にしておくわ」

家の裏手の方へ回っていったサフィをよそに、シアは家の正面の伸び放題の雑草を見渡す。
この伸び具合だと、数年はほったらかされていたに違いない。
とりあえず、魔法で抜くにしてもまずは範囲を指定しなければとシアは端から端までを改めて見渡して、大方の範囲を割り出した。

「ほいっ」

範囲を指定して草抜きの魔法を使うと、その範囲だけの草がいともたやすく抜かれ、一まとめの塊になったかと思えばシュッと煙が上がって一瞬で燃え尽きて灰と化し、辺りにまき散らされた。
雑草が抜かれた家の正面で、シアはパタパタと尻尾を動かしてサフィを待つことにした。

「最近全然暇が取れなくてね、今日はようやく暇が取れたのよ」

墓を掃除し終え、墓前で手を合わせながらサフィは呟く。
最後に墓参りをしたのは、数年前の初夏。
その時はたまたまアルカトラスが墓参りの事を切り出してくれたので、難なく行く事が出来たが。

「よし、そろそろ行くわ。次はいつ来れるか分からないけど」

サフィはスッと立ち上がり、その場を離れる。
家の正面では、シアが尻尾をパタパタさせてサフィが戻ってくるのを待っていた。

「うふふっ」

「ちょっと、何するのよ」

戻って来るや、シアにもふっと抱きつかれて多少動揺するサフィ。
あまりにもいきなりの事だったので、引き離そうとするが吸血鬼と吸血竜のハーフによる力をもってしてもシアを引き離すことはできなかった。
それどころか、どことなくシアから香る匂いで引き離そうとする気もだんだんと消えていき、最後は顔はむすっとしているもののシアにさせたいようにさせていた。
そのまま30分ほどもふもふと抱かれていたサフィだが

「ここじゃ何だかアレよ」

とシアに場所を移らないかと遠まわしに言う。
それを聞いて、シアはそう?という顔をしてサフィを背に乗せて飛び立つ。
背に乗せられたサフィは、その背でちょこんと座って時々髪をいじる以外は何もしない。

「そうだ」

シアは今度は何を思いついたのか、今いる北西部から中部へ向けて飛び始めた。
サフィにはどこへ行くかが大方の検討がついていたが。

「居るかしら?」

「居るでしょ、こんな暑い日に堂々と出かけるような奴じゃないわ」

「それもそうね」

シアが向かっているのは、何を隠そうゴルダの家だ。
最近、セイグリッドの方へ全くと言っていいほど来ないのでシアは心配になっていた。

「あそこよ」

「そう、あまり行った事ないから分からなかったわ」

中部へ入って10分ほど飛んでいると、眼下に広がる田舎のある場所をサフィが指す。
シアはサフィが指差した場所へと降下し、何も植えられていない畑の一角へと降り立った。
畑の少し向こうにはそこそこの一軒家が建っていて、そのバルコニーで誰かが雑誌か何かを顔にかぶせて昼寝をしているのが見えた。
シアとサフィはそのまま家まで歩いて行き、そのバルコニーで寝ている誰かをシアは尻尾でつついて起こす。

「ん、ああシアとサフィか。何か用か?」

顔から竜医関係の雑誌を取り去り、眼を覚ましたのはゴルダ。
この暑い時期にはそんなに依頼が入ってこないのか、暇を持て余してバルコニーでゴロゴロしていたようだ。
だが、シアとサフィが来てパッチリと目を覚まし、いつもの無表情な顔で二人を見る。

「セレノアは?」

「しばらくセイグリッドとリフィルでやる事があると言って6の月の終わりから居ない」

「そう」

サフィにセレノアはいないのかと聞かれ、ゴルダは煙草のようなものを吸いながら6の月の終わりから居ないと答えた。
シアは直射日光にさらされて暑いのか、体を縮小させてバルコニーの屋根の下へとやって来ている。

「何か臭わない?」

「気のせいだろ」

家の中から漂う妙な臭いに気付いたサフィは、ゴルダに鎌をかけてみたが当の本人はすっとぼけるだけでまともな返事を返さない。
その横で、シアはやたらとゴルダを撫でようとしている。

「この臭い、台所からね」

「おいやめろ」

ゴルダの制止を振り切り、サフィはズカズカと家の中へ上がる。
居間はたいして汚れておらず、しいて汚れていると言えば一人用ソファの上に積み上げられた汚れ物くらいだ。
台所もさほど散らかってはおらず、ラジオがつけっぱなしでうるさい以外はスッキリしていた。
サフィは流しのそばにあったゴミ箱を開けるや、悪臭に渋い顔をしてゴルダに

「生ごみ、捨ててなかったの?しかもこんな暑い時期に。腐ってるじゃない」

生ごみを捨てていなかったのかと聞くと、ゴルダはまあなと答える。

「堆肥製造機に入れるのすら暑くてめんどくさくてな、ほったらかしてたらこの有様だ」

「呆れた」

暑いから捨てるのがめんどくさかったと言い訳するゴルダに、サフィはため息をつく。
流石にこれ以上腐っている生ごみを置いとく訳にはいかないと、サフィはゴルダにさっさと中身を堆肥製造機に突っ込んできなさいと言って生ごみを処理しに行かせた。
サフィはその間に、ソファの上に積み上げられていた汚れ物を洗濯機に入れて洗濯を済ませる。
そんなサフィの姿を見たシアは思わず

「あなたって、一人暮らしの息子のアパートを訪ねたらだらしない生活してて、息子に喝入れるついでに家事を済ませちゃう母親みたいね」

「一応これでもドランザニア共和大学の同期で友人だからね、どうしても気になるものよ」

母親みたいと言ったが、サフィはそれに友人だから気になるのよと答えた。
その一方、腐っていた生ごみを堆肥製造機に捨ててきたゴルダが戻ってきたがサフィはゴルダに今度は風呂に入れと言う。

「そう言えばここ数日着替えぐらいしかしてないな」

「不潔ね」

鼻で笑いながらここ数日風呂に入ってないと言ったゴルダに、サフィは不潔ねと厳しい一言を放つ。
無論、ゴルダはそれにも動じずまた鼻で笑いつつ風呂場へ消えた。

「もふっ」

「また?全くもう」

サフィがようやく一息ついて、居間の床に座っているとさらに縮小して数メートル程度の大きさのシアが後ろから抱きついて来た。
正直な話、サフィは抱きつかれるなどの行為が苦手で、以前副メイド長に抱きつかれた時は重いげんこつからの本気の巴投げを繰り出したほどである。
だが、今日は相手がシアだ。
ちょっとどころではない力の差があるので、抵抗したところでまず無意味な上に始末されないにしろその気になれば確実にボコボコにされてしまうだろう。

「なんでまた今日はこんなに抱きつくのよ?いつもはしないのに」

「アルカトラスはしてくれないからね、兄妹だから気を使っているのかもしれないんだけど」

シアのふわふわした毛が、首や耳に触れて時折ビクッとすることもあるが、基本シアに身をゆだねるような感じでサフィは座っていた。

「そういえば、なんで他者と直に触れ合うのが好きじゃないの?」

もふもふされながらシアに聞かれて、サフィは少しの沈黙の後に

「私の場合はそう言う行為がトラウマと直結しているだけ、それが誰にされようとね」

抱きつくなどの行為がトラウマに直結していると話す。
シアはそうと言って、サフィの頭に自分の顎を軽く乗せる。
髪を通して、シアのふんわりとした毛の感触が伝わってくると同時になぜか甘い香りも漂ってきた。

「悪くないかも、抱きつかれるのも。だけどシア、あんた限定よ」

「変な方向に目覚めたりしてね?」

「それはないわ、断じて」

互いにもふもふしながらそんな会話を続けていると、ゴルダが風呂から上がって来て2人に茶を注いで持ってきた。
出されたのは麦茶で、グラスに大量の氷を入れて程よく冷えて飲みごたえがありそうだった。

「ずいぶんと孤独で居る時間が長いようだけど、大丈夫なのかしら?」

麦茶を飲みつつ、シアは竜医関係の雑誌を読んでいるゴルダにふとそんな話を切り出した。
ゴルダは少し雑誌から目を離し、縦に頷くとまた雑誌に目を戻す。

「大丈夫じゃないかしら?完全に引き籠って孤独という訳ではないし」

「時々しか姿を見ないから心配なのよ、ゴルダをいつも監視しているわけにはいかないし」

「監視とは人聞きの悪い」

四六時中監視しているわけにもいかないと言ったシアに、ゴルダはまた雑誌から目を離して人聞きの悪いと返す。
シアとサフィがもふもふしていちゃついているのには、ゴルダは全く気にしていない様子である。

「うらやましくないの?」

「これと言ってはだな、セレノアなら一方的に抱きついて来るし」

全く気にしていないことを不思議に思ったサフィがうらやましくないかと聞くと、ゴルダはこれと言ってはと淡々と返してきた。
これにはサフィもシアも、いつものゴルダだなと確信する。

それから1時間後。
空になったグラスに入っていた氷が溶けてずれ落ち、カランと音を立てた。
サフィとシアはもふもふしながら会話をしている一方、ゴルダはいまだに黙々と雑誌を読んでいる。
2人が出たのは昼をちょっと過ぎたぐらいの時間だったが、今の時間は日も傾いて来る時間になっていた。
と、ここで何を思い出したのか、ゴルダは雑誌を横に投げ捨てて立ち上がるや台所の方へ。

「昼の分飲んでなかったな、そういえば」

何のことだろうかと、シアは台所にいるゴルダの方を向く。
薬を飲むようだが、シアにはゴルダが持病を持っているとは聞いたことが無かった。
そこでシアはサフィにゴルダが持病を持っているのかと聞くと

「そうね、竜滅病。だったかしら?去年何気なしにルライエッタの所で検査したら発覚したそうよ、まだ発症はしてないらしいけど」

「そうか、竜滅病なのか」

一応ひ孫に当たる存在がそんな持病をと、シアは今一つピンと来なかったが竜滅病がどんな病気で逢ったかを思い出し、察した。
竜滅病は、血液感染が主な感染経路の病だ。
発症すれば足の神経から蝕まれていき、最終的には脳や心臓の神経を蝕まれて死に至る病気で、今の所は完全な特効薬は開発されておらず、抑え込む薬などで手一杯だという。

「ふう」

薬を飲んで戻ってきたゴルダを、シアはさりげなく尻尾で引き寄せて自分の横腹辺りに座らせてそのまま尻尾で撫でたりし始める。
ゴルダにはなぜシアがこんなことをするのかが理解できなかった。
だがすぐに自分が未発症ながら竜滅病であるからだと分かり、生の創造神かつ曾祖母でありながら何もできないシアが唯一できる事なのだろう。

「シア、心配することはない。俺は絶対にこの病に打ち勝つ」

「そうであって欲しいわ、もし竜滅病に負けたら許さないわよ?」

「俺とて男だ、約束は守る。親父と母さんの分も生き抜いてみせるさ」

竜滅病に打ち勝つと約束しろとシアに言われ、ゴルダは煙草のようなものに火を付けてシアの毛に灰を落とさないように注意しながら約束は守ると答えた。
それを聞いたシアは、ふふっと笑って尻尾で撫でると見せかけてむぎゅっと横腹の毛の中へ押し込む。

「ぶっ」

いきなり押し込まれたゴルダは、慌てて煙草のようなものの火を手で握りつぶして消した。
その際に、火の粉と灰が若干シアの毛にかかったが何とも無いようだ。

「お前はなんでこんな匂いがするんだろうな」

「どうしてかしらね」

抱きつかれたまますやすや寝ているサフィに対し、横腹の毛の中へ押し込まれた状態で酒を片手にゴルダはふと呟く。
毛を持つ竜は、その9割が独特の獣臭さを持つと言われているが、中にはシアのように特定の匂いを持つ竜が少数ながら存在する。
その多くは草食性で何かと香りを発する植物を主食としているか、果物や甘い木の実などを主食としている事が多い。
一応、シアやアルカトラスのような存在の竜がなぜいい匂いがするのかという論文もないことはないが、全てそう言う存在だから、高位な力がそういう匂いを出すようにしているなどの結論が出ているに過ぎないのだ。

「もふもふ?」

「ああ、だがあまり押し込むのはやめてほしいな」

夕刻の時間がゆったりと過ぎていき、やがて夜が訪れる。
夜になってからも、ずっとそのままの体勢を続けている内にシアもゴルダもぐっすりと眠りに就いていた。
逆に起きたサフィは、その2人の寝顔をちらりと見るとこっそりと夕食の支度をし出す。
昼寝をしたまま起きない息子を見守りつつ、食事を作る母親のように。
真夏の終わりは、もう近い。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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