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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

冥府竜ウラヘムト

蚊の飛ぶ音がやかましいある日の夏の夜のこと。
その日ゴルダは、自室で原稿を描いていた。
原稿とはいっても、趣味で参加している合同誌のものだが。

「寝るう」

アルガントが寝ると部屋に入って来たが、ゴルダは原稿に集中していて聞く耳を貸さない。
そんなゴルダにアルガントはちぇっというような顔をして、例のエメラルドグリーンの卵のようなものを手に取る。
無論、これでもゴルダは原稿に集中しているので気づいていない。

「ちょっと熱い?それに重い」

その卵のようなものを取った途端、アルガントは違和感を覚えた。
それは、卵が熱を持っていて、さらにいつもより重くなっているのだ。
これはおかしいなと思い、アルガントがそれを叩くと

「わわっ!」

いきなりそれが宙に浮いたかと思えば、球体の形からアルガントに似た体型の何かへと変化する。
それをアルガントが黙って見ていると、最終的には地獄の業火めいて燃えるような色の目に、短毛が生えたエメラルドグリーンの体。
角の先には常に緑と紫の炎が交互に燃え、右手の甲に何かの印が刻まれている。

「ほうほう、泣竜か。懐かしいな」

エメラルドグリーンの毛の竜は、アルガントをまじまじと見てそう呟く。
アルガントは、どこからか手裏剣を取り出し、その竜に投げ付けようとした。
だがここでゴルダが気付いたのか、2人の方へ向き直り

「ああ、やっぱりか」

と言う。
やっぱりかってどういうこと?とアルガントが聞く前に、エメラルドグリーンの毛の竜は突然2人に両手を眼前で合わせてお辞儀すると

「どうも、ウラヘムト=ヘルヘムスです。種族は冥府竜、見知り置きを」

自らの名を名乗った。
それにゴルダも遅れてお辞儀を返し、名を名乗り返す。

「冥府竜?おいおい冗談だろ、シアが黙ってないぞ」

ゴルダはウラヘムトが名乗った種族の冥府竜に心当たりがあるのか、シアが黙ってないと話す。
ウラヘムトはそれにけらけらと笑いながら

「ああうん、懐かしいよ。他の冥府竜は皆シアに能力消されてただの闇竜にされちゃったんだよね。俺はその最後の1人」

同族は皆シアに能力を消されて普通の闇竜にされたと言い、自分がその最後の1人だと話した。
それを聞いたゴルダは、若干困った顔をして

「話聞いてるだけだとお前面白そうな奴だから家に置いと来たいが、シアが確実に黙ってない」

何とウラヘムトを面白そうな奴だから家に置いて置きたいと言うのだ。
無論、そんなことをすればシアが嗅ぎつけるのは必然的。
明け渡せと言ってくるのも間違いないだろう。

「んあー、まあそりゃそうだよな。でもなんとかしてくれないかい?俺も能力消されるの嫌だし」

能力を消されるのが嫌なので、どうにかして欲しいとゴルダに訴えるウラヘムト。
どのみち強制的に呼び出されるなら、先手を打ってしまおうかと考えたゴルダは

「よし、明日どうにかしてシアに取り合いに行く。それでいいか?」

明日シアに取り合いに行くと言う。
ウラヘムトは、それにうんと頷いてさっさとアルガントと寝てしまった。

翌朝、朝食までセイグリッドで食べてしまおうと、ゴルダはウラヘムトとアルガントを氷燐に乗せてセイグリッドへ。
塔ではエシュフィルトが空気を読んで席を外していたのか不在。
その代わり、シアが今までに見たことのない表情でゴルダ達を待っていた。

「ああ…久しいわね、今の今までどこに隠れてたの?」

シアは目線であなたとアルガントにこんな顔してるんじゃないのとゴルダに言い、ウラヘムトへ即座に向き直る。
ウラヘムトはシアの険しい表情に一切動じず、耳を掻きながら

「どこだっていいんじゃないかな?自分から出て来ただけマシと思うよ?」

上から目線とも受け取れる台詞を吐く。
それにシアは少し灸を据えようと魔法を使おうとしたが、ゴルダがそれを制す。

「なあシア。こいつ面白そうだから俺の所に置いて置きたいんだが、ダメか?」

ゴルダの予想外の一言に、シアはまばたきしながら3人を見る。
はっきり言って、野放しにしておくとアルガントよりも危険なこの竜をゴルダが自分の所に置いて置きたいというのもかなりの大問題だ。
シアは少し考えた後に次のような条件を化す。

「一つは何かあった時は責任取れる範囲で取ること、もう一つは首輪で悪いけど制限かけて監視させてもらうわね、そのままで野放しは危険だわ。腐っても冥府の力だから」

首輪で能力を制限された挙句監視するという条件に、ウラヘムトはうげぇっという顔をしたが、ゴルダは致し方なしと返事を返す。

「そこまで縛りつけなくても何もしないっての。もう冥府にゃ帰りたくもないし」

「じゃあ能力消してもいいんじゃないの?」

「いや、それは勘弁」

そこまでしなくても何もしないし、冥府には戻りたくないと言ったウラヘムト。
それにシアはじゃあその能力は消しても構わないでしょ?と言うと、それは勘弁とウラヘムトは返す。

「コントしてる場合か」

その様子を見て、ゴルダはそう一蹴した。
結局どうなったのかと言うと、ウラヘムトの方が折れてシアの提示した条件に同意。
首輪をされてからは終始無言だったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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