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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

刀と氷悠と

数分外にいるだけで熱中症になりそうな暑さの夏空の下、陰陽師のような服装に面を被った水色の狐耳の青年がゴルダの家の前に立っていた。

「ああ、ここかあ。ずいぶん無駄な広さの家に住んでるようだね」

この青年の名は、宮城氷悠。
紫月家の遠縁の親戚に当たる、半狐獣人半妖狐だ。
幼少時代よりこの感情などで変化する面を被り、完全な妖狐に変身した時以外は素顔を見せたことが無い。
そんな氷悠が何故ゴルダの家に来ているのか?
それはムサヅキから御使いを頼まれてのことである。
ここで時は昨日へ遡る。

「これはこれはムサヅキ様、またつまらないことに付き合わさせるつもりで?」

「ぬぅ、その小馬鹿にするような余計な一言は慎めと言っているだろうに。それに挨拶はせぬか」

その日、気まぐれで紫月神社へ遊びに来た氷悠。
藍などへの挨拶もそこそこに、裏山の川を上流へと登っている途中で、氷悠はムサヅキと出くわした。
面の表情をげっというような表情に変化させ、つまらないことに付き合わさせるのかと言う氷悠に、ムサヅキは余計な一言を慎めと言う。

「あー、はいはい。でも今日は嫌だよ?ただ遊びに来てるだけなんだから」

「…お前はゴルダという者を知っているか?」

今日は遊びに来ただけなので、付き合いたく無いと言う氷悠にムサヅキはゴルダを知っているかと聞く。
氷悠はその名を聞いて、あああの人ねと言いたげに頷くと

「藍達の親戚だっけ?ドランザニアに1人で住んでる」

藍達の親戚かとムサヅキに確認する。
ムサヅキはそうだと返事を返すと、どこからともなく氷悠に刀を差し出す。
その刀の鞘には、紫月神社の神紋が入っていて、ただの刀ではなさそうである。
氷悠はそれを受け取った瞬間、若干妖力を感じたがそれほど強いものではないと確信。

「なんですこれ?」

なんじゃこりゃという表情を面に表しながら、氷悠はムサヅキに聞く。
するとムサヅキは

「儀礼用の刀だ、だがされど刀。儂が名のある刀鍛冶に作らせた代物だ、切れ味や強度は保証できる。…ああ、話がそれたな。この刀をゴルダのところへ届けて欲しい」

儀礼用の刀であることを説明し、この刀をゴルダの所へ届けて欲しいと氷悠に頼む。
氷悠はそれになんでだよという面の表情を表し

「いやいや、場所分からないって」

などと遠回しに迷子になるから行きたくないと言う。
だが、ムサヅキは顔色一つ変えずにこう返す。

「場所なら教える、それでも断るか?」

それに対して、氷悠はそれならいいかなと納得した表情を出し、また頷いて了承した。
その後、氷悠はムサヅキにゴルダの家の場所を教えてもらい、その日は帰ったという。
これが昨日の話だ。

そして今現在。
近くの木の日影に入り、どうしたものかと氷悠は考えていた。
ムサヅキから絶対に余計な一言を言うなと釘を刺されていたため、どう挨拶しようか迷っているのだ。

「うーん、どうしたもんかなあ。どう会ってどう挨拶しようかねえ」

木の物陰からゴルダの家の方を覗きながら、氷悠は首を傾げる。
妖力で少し探りを入れたところ、ゴルダは家に居ることは間違いないことは分かっていた。
だが、これまた親戚とはいえ、今まで一度も会ったこともなく名しか聞いたことがない。
耳をぴこぴこと動かしながら考えた末、氷悠は玄関の扉をノック。

「えーっと、お前は確か…」

「お初お目にかかりまする、宮城氷悠です」

「ああ、思い出した。藍から前に聞いたことがあったのを思い出したよ、入りな」

すぐにゴルダが出て来たので、氷悠はひとまず名を名乗って挨拶。
するとゴルダの方も氷悠の名を聞いて思い出したらしく、すぐに家へ上げてくれた。

「1人暮らしにしてはずいぶん小綺麗な家、綺麗好きなんだろうか?」

「散らかってる時もある」

氷悠が心の中で小奇麗だなと呟いていると、ゴルダがその心の呟きを読んだかのようなことを言う。
それに氷悠は読心術でも使えるのか?と若干身構える。
居間へ通された氷悠は、床に座禅するような姿勢で座り、ムサヅキから預かっていた刀を出す。
するとゴルダも同じような姿勢で座り、氷悠と向き合う。

「またムサヅキの奴、余計なものを押しつけて来やがって」

ムサヅキが押しつけたのかと言ったゴルダに、氷悠はビクッとしながらもその通りだけどと返しておいた。
何故ムサヅキから渡せと預かっていたという前に分かったのか?
氷悠はおそらくムサヅキの残留思念かなんかを感じ取ったのだろうと決めつけた。
ゴルダはその刀を鞘から抜き、刀身を調べる。

「これはずいぶんまともな物だな、だが何かを斬った形跡なし。儀式などに使う物か?」

ゴルダの一言に、氷悠は一体どう言うことなんだと開いた口が塞がらない表情になる。
なお、今の今までゴルダは氷悠の表情が変わる面についてはなにも言及していない。
おそらく、気付いているがあえて気付かないふりをしているだけなのだろう。

「麒麟っぽい気配するけど、もしかして居る?」

「氷燐のことか?裏に居るぞ」

少し話題を切り替えようと、さっきからチクチクと感じていた麒麟の気配のことをゴルダに聞く氷悠。
すると、ゴルダの口から氷燐という名が出て来た。
どうやらムサヅキが前に間違って召喚した麒麟がここに住んでいるらしい。

「氷悠か、久しいね」

「その姿だとよっぽどのことが無い限りは麒麟って分からないな」

氷悠と氷燐の顔見知りとしか思えない会話から、ゴルダはなるほどと呟く。
その後、結局夕方まで遊びほうけて氷悠は帰って行った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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