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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

マフェポ族を救え

スリュムヴォルド南部のマングローブ地帯。
ここに生えているマングローブは、地球に存在するものよりも大きく育ち、中には10メートルを超えるものもある。
さらに、ここは万年桜と並ぶ大陸百景の1つにもなっている場所。
そのマングローブがあることで築かれる独自の生態系も存在する。
このマングローブ地帯の具体的な広さは調査されていないために、どれくらいあるのかは分からないが相当広いとされている。
またここは潮の干満が大陸の中でも激しい部類に入り、干潮と満潮の時では見られる景色が全く違う。
干潮時には、何処か不気味さの中に神秘的な雰囲気をも漂わせるほどにマングローブの根が伸び。満潮時には水没林に居るかのような感覚に陥る。

そんなマングローブ地帯を、満潮時に手漕ぎボートで移動するゴルダとシスイの姿が見られた。
ボートには銛が積まれていて、明らかに何かを狩る目的で来ているとしか思えない。

「ねえ、マフェポ族どこに居るのかしら?」

ゆっくりボートを漕ぎながら辺りを注意して見ているゴルダにシスイが話しかける。
それに対してゴルダは一旦漕ぐのを止めて双眼鏡でマングローブの木の上を見ながら

「俺に聞くな、マングローブ木の上を探してるがそれらしい姿が見当たらん」

と答えた。
シスイはそうよねえと言い返すと、自分もまた2人以外の気が感知できないかと集中する。
なぜゴルダとシスイがこんなことをしているのか?
それは数時間前に遡る。

「南部のマングローブ地帯に?なんでまた?」

「急を要する仕事よ、私は今別の仕事で忙しいから呼んだの」

数時間前、ゴルダはニフェルムから呼び出されてエルフィサリドのところへ来ていた。
呼び出された理由は、急を要する仕事ができたからだという。

「そこに住むマフェポ族という精霊あるいは妖精に近い種の民族が最近大量発生している水蛇のせいで絶滅しそうなの。それを防ぐために水蛇退治をして来て欲しいの」

水蛇とは、主に川や湖などの水中を主な住処とする蛇で全長は2、3メートルほど。
主な主食は魚だが、どういうわけだがこの南部のマングローブ地帯に大量発生した水蛇はマフェポ族を食べているというのだ。

なお、マフェポ族とはエルフィサリドが言ったようにこのマングローブ地帯に住む精霊あるいは妖精に近い種の民族である。
固定した住処を持っていない遊牧民のような生活をしており、マングローブの上に居たり干潮時に根元を歩いて居たりと自由気まま。
身長は最大でも50センチ程度と、それなりに小さい。
独自の文化として、マングローブの加工技術を持っており、染め物から薬まで、ある程度の物はなんでも作れるという。

「なるほどな、水蛇か…分かった。俺がやろう」

「ああ、だけどシスイも連れて行って」

これは拒否できないと思い、エルフィサリドに引き受けると返事を返したゴルダ。
すると、エルフィサリドはシスイも連れて行くように指示を出した。
ゴルダはこれになんでまたとは思ったが、深くは考えずに頷いて返事を返す。
そしてエルフィサリドに行ってくると言って城を出た後、ゴルダはまっすぐシスイの家へ。

「おい、出かけるぞ。おそらくエルフィーから話は聞いてるだろ?」

「はいはい、ちょっと待って」

バルコニーの柵に外側からぶら下がって懸垂をしていたシスイは、ゴルダが来たことに気付いてスッとバルコニーに飛び戻って準備をして出てきた。
ゴルダはシスイの一連の行動には何も言わず、そのまま一緒に南部を目指して移動を開始した。
これが数時間前の話だ。

そして現在。
もう1時間はマフェポ族を探しているが、一向に見つからない。
どこからか水を出して飲みつつ、双眼鏡で探すゴルダだが、手がかりすら無い状態だ。
まさかなと嫌な予想をしながらもなお双眼鏡で探し続けていると

「ゴルダ、ここから7時方向に進んで」

「あ?オーケー」

突然シスイに7時方向に進めと言われ、ゴルダは言われるがままにその方向へボートを進める。
するとそこには、一際目立つ大きさのマングローブが生えていた。
大きさは10メートルは軽く超えているだろう。

「ここからそれっぽい反応が」

「簡単には登れそうに無いぞこれ」

錨の魔法でボートをその場に留め、ゴルダはそのマングローブの上の方を双眼鏡で見る。
すると、若干茶色がかった肌の何かが居るのが見えた。
どうやらビンゴのようだ。

「私が行ってくるわ」

「気をつけろよ」

シスイが行くと言い出したので、ゴルダは気をつけるように言って何故か水面に銛を向けて待機。
シスイはその間にいともたやすくマングローブを登って上の方へ到達。
やはりマングローブの木の上にはゴルダが見つけた茶色がかった肌で、黄色い目に独特の模様の服装の40から50センチほどの者たちが下の方を不安げに見ていた。
どうやらこれがマフェポ族らしい。

「あの」

「---?---!!」

シスイが試しに1人に声をかけたところ、驚きながらも何かを言われたが、シスイにはそれが何語なのか分からない。
だが、すぐにこれだというのを頭の引き出しから出して

「大丈夫、とって食べたりしないわ」

と同じ言語で返した。
するとその1人は

「ああ、失礼。人間なんてこの100年あまり見たことなかったもので。私はマフェポ族の族長です」

と非礼を詫びる。
どうやらマフェポ族の族長らしい。
続けてシスイは族長に、エルフィサリドから聞いていた話をして合っているかを確認。

「大丈夫大丈夫、間違いないよ。とにかく水蛇を極力減らしてもらえないか?ついさっきも2人がやられてしまってね」

族長はとにかく数を減らして欲しいとシスイに頭を下げた。
シスイはそれに分かったと言い、木の上から飛び降りる。
飛び降りた先はボートから数十センチ離れた場所。
ドボンとはいかず、シスイは水の魔法で水面に着地するとゴルダに水蛇を見つけ次第捕まえて〆るように言って自身は水中へ潜る。

「水蛇の〆方は確か頭を刺すか砕くかすればよかったな」

などと言いながら、ゴルダは再び水面に銛を向ける。
すると、水中を泳ぐ蛇の姿が見て取れた。
ゴルダは一点に意識を集中させ、その時を待つ。
そして銛の先と蛇が重なった瞬間、銛を突く。
するとどうだろうか、銛には水蛇が刺さっていたのだ。
ゴルダは手際よく水蛇を銛から外し、人間離れした握力でその頭を握りつぶして〆た。

「逃がさん、見つけ次第始末だ」

若干そういう目になりながら、ゴルダは見つけ次第水蛇を銛で突いて行った。

そして、日が暮れる頃にはボートの上は〆た水蛇で満載状態。
そのほとんどは、シスイが徒ったものであったが。
なお、この〆た水蛇は全部シスイがもらうとの事。

「いやはや、ありがとうございます。これでまた平穏に暮らせます」

「いいのよ」

ゴルダがは話ができないので、シスイが族長と話をしている。
初めてマフェポ族の姿を見て、ゴルダはなんでこんなに恥ずかしがり屋なんだ?という第一印象を持った。
それもそのはず、族長以外は皆物陰からそっとこちらを見ていたからだ。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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